日本語を学びたいと考える外国人が年々増えている今、日本語教室を支える存在として、ボランティアの力が必要とされています。この記事では、初心者の方でも活動できる、日本語教室ボランティアの活動内容や参加するメリット、日本語を教えるときのポイントなどを紹介します。
「日本語教室」とは?

増えている日本語学習の需要
まず、日本語学習を取り巻く状況を見てみましょう。
日本語学習の需要は、近年、増加傾向にあります。文部科学省が2025年10月に発表した「2024年度日本語教育実態調査」によると、日本語学習者数は29万4,198人となり、前年度と比べて3万1,028人増加しました。
また、国内における日本語教育実施機関・施設等の数は2,669か所。さらに、1990年度(平成2年度)と比べると、日本語学習者数は約4.9倍、日本語教育実施機関・施設等数の増加は約3.3倍増加しました。
次に、教える側の実態です。
日本語を教える人たちは全国で5万309人いますが、そのうち53.1%がボランティア、13.6%が常勤の日本語教師であり、半分以上をボランティアが占めています。
これらの数からも分かるように、増え続ける日本語学習の需要に応えるには、ボランティアの存在が大きく、ボランティアによるサポートが必要不可欠なのです。
日本語教室は何するところ?
日本語教室とは、地域に住む外国人や留学生、外国にルーツを持つ子どもなどを対象に、日本語を学ぶ機会を提供する場です。自治体(市区町村)や地域の国際交流協会、NPOなどの非営利団体が運営しています。
営利を目的とした語学学校とは異なり、多くの日本語教室は多文化共生や生活支援を目的としています。そのため、外国人に日本語の読み書きや会話を教えるだけでなく、日本社会のルールや習慣、日常生活に必要な知識を伝えることも、日本語教室の活動に含まれます。場合によっては、直接生活上の悩みを聞いたり、相談に乗ったりして日本での生活をサポートします。中には、季節ごとの交流イベントや地域行事を行う教室もあり、外国人と地域住民がつながるきっかけづくりの場ともいえるでしょう。
このように、日本語教室は、日本語を学ぶ場であると同時に、地域における多文化共生を支える大切な拠点でもあるのです。
その運営や学習支援の中心となっているのが、多くのボランティアです。
日本語教室ボランティアの活動内容は?

日本語教室ボランティアの主な活動内容について見ていきましょう。
日本語学習のサポート
日本語教室でのメインとなるボランティア活動が、日本語学習をサポートする活動です。実際に会話をしながら、あいさつや買い物、職場でのやりとりなど、日常生活で必要な日本語を一緒に練習します。また、教科書を使って、ひらがな・カタカナ・漢字の読み書きを教える活動もあります。中には、日本語能力試験(JLPT)などの受験を希望する学習者に対して、試験対策を支援する教室もあります。
学習者のレベルや目的に合わせて、柔軟な日本語支援が行われているのが日本語教室の特徴です。
活動形態も一様ではありません。1対1の個人レッスン形式の場合もあれば、クラス形式で教えることもあり、団体の規模や方針によって活動スタイルはさまざまです。また、日本語講師が指導を行い、ボランティアはそのサポート役として入ることもあります。
日本語を教えるボランティアにとって大切なのは、「先生になる」というよりも、学習者の生活やペースに寄り添って伴走する存在であること。分からないところを一緒に考え、日本語への理解をそっと後押しする。そんな関わり方がボランティアに求められています。
日本での生活や多文化交流のサポート
言語学習と並んで、日本での生活を支えるサポートも、日本語教室ボランティアの重要な役割です。たとえば、ゴミの出し方や電車の乗り方、役所での手続きなど、日本で暮らす上で欠かせない情報を伝えます。
また、地域の行事やイベントを紹介して、参加を勧めることもあります。こうした情報提供を通じて、日本に住む外国人が地域社会に溶け込むきっかけをつくるのです。
イベント・交流活動の運営サポート
多くの日本語教室では、日本語の学習だけでなく、交流を目的としたイベントも開催されています。七夕や節分、クリスマスといった季節の行事や、国際交流イベントの運営補助を行うのも、ボランティアの活動の一つです。
これらのイベントは、日本語を使う実践の場であると同時に、外国人が地域の人々とコミュニケーションを取る大切な機会でもあります。
人と人とのつながりを育てることも、日本語教室の重要な役割なのです。
教室運営の補助(裏方作業)
日本語教室ボランティアの活動は、表に立つものだけでなく、教室運営を支える裏方の仕事も欠かせません。
実際、ボランティアが中心的な存在として動くことが多い日本語教室の現場では、出欠の管理や教室の準備、机や教材のセッティング、配布資料の印刷など、日々発生する細かな雑務もボランティアが担当します。また、SNSや掲示物を使った参加者募集や案内作成を担うこともあります。
日本語教室ボランティアに参加する魅力とは?
このような日本語教室ボランティアの活動に参加することで、参加者はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
異文化に触れながら視野が広がる
さまざまな国や文化の人と日常的に関われることは、日本語教室ボランティアの大きな魅力のひとつです。いろいろな価値観や生活背景を持つ人と接することで、これまで当たり前だと思っていた考え方が、少しずつ広がっていきます。
また、日本語を教える立場で関わることで、自分自身も日本語や日本文化をあらためて見つめ直す機会になるでしょう。
なぜこの表現を使うのか、なぜこの習慣があるのか。説明しようとする中で、自分が無意識に受け入れてきた「常識」に気づき、日本文化への理解がより深まっていくはずです。
学習者の成長を一緒に喜べる
日本語教室では、「話せた」「読めた」「意味が分かった」などの小さな成功の瞬間を、学習者と一緒に喜べる場面が何度も訪れます。その積み重ねは、ボランティア自身のやりがいにもつながります。
さらに、学習者から「ありがとう」「助かりました」と直接感謝の言葉をもらうことで、自分の関わりが誰かの役に立っていると実感でき、自信や充実感を持ちながら活動を続けることができます。
地域のつながり・コミュニティ作りができる
日本語教室は、地域に根付いて活動しているところが多いのも特徴です。
そのため、日本語を教えることを通じて、外国人と地域をつなぐ役割を担うことができます。
また、ボランティア自身にとっても、活動を続ける中で、他のボランティアメンバーや地域住民との交流が生まれます。同じ目的を持つ仲間と出会い、顔の見える関係が広がっていくことで、地域コミュニティに参加するきっかけになるでしょう。日本語教室ボランティアの活動は、個人の学びややりがいだけでなく、地域全体に関わる経験ができるのです。
日本語教室ボランティアに参加するためのポイント

日本語教室ボランティアは未経験者でも参加できる活動です。ここでは、参加するまでの流れやポイントを見ていきましょう。
活動期間や必要なスキルについて知ろう
まず、活動期間や参加スタイルについてです。
定期教室で、週、または月に数回参加する活動があります。他にも、単発で開講される教室に入り、サポート役や補助として関わる形や、1年など一定期間、継続的に日本語を教える活動を募集している団体もあります。
また、先ほどもお伝えした通り、実施形態も多様で、グループで学ぶ対面形式の教室に加え、マンツーマンでの個別指導、さらにはオンライン形式で実施される教室もあります。
自分の仕事や家庭の状況などを踏まえ、ライフスタイルに合った活動スタイルを選ぶようにしましょう。
次に、必要なスキルについてです。
多くの日本語教室ボランティアでは、特別な資格は求められません。「日本語を教えたい」「日本で暮らす外国人を支えたい」という気持ちがあれば、初心者でも参加できる教室はたくさんあります。中には高校生から参加可能なボランティア募集も見られます。
基本的には、学習者に寄り添いながら支援するスタイルが中心ですが、「講師」として定期教室の日本語指導を担当する場合は、「日本語教師養成課程修了」「日本語教育能力検定試験合格」「団体主催のボランティア養成講座修了」などを条件とし、ややハードルが上がることもあるので、募集要項をしっかり見て応募するようにしましょう。
日本語を教える活動では英語ができなくても問題ない
外国人と関わる活動と聞くと、「英語ができないと難しいのでは」と不安に思う人もいるかもしれません。しかし、日本語教室に通う学習者自身が、日本語でのコミュニケーションを目的として参加しているので、簡単な日本語や身振り、イラストなどを使いながら伝える場面が多く、英語力がなくても活動に支障はありません。
大切なのは、語学力よりも、相手のペースに合わせて寄り添い、伝えようとする姿勢です。
募集団体を探し、活動に応募しよう
活動に参加するために、まずは日本語教室ボランティアを募集している団体を確認しましょう。主な募集先としては、市区町村の国際交流協会や自治体(市役所・区役所の多文化共生担当課)、日本語支援や多文化共生をテーマに活動するNPO法人、そして地域住民が運営する日本語教室などがあります。
気になる団体が見つかったら、募集要項を確認し、応募してみましょう。応募方法は、Webフォームやメール、事務局での申込書記入などが一般的です。中には、活動内容や希望を確認するため、簡単な面談を行う場合もあります。
日本語ボランティア養成講座を受けよう
初めて日本語教室ボランティアに参加する場合、不安を感じる人も少なくありません。そのため、多くの自治体やボランティア団体では、初心者向けに「事前研修」や「日本語ボランティア養成講座」を用意しています。
これらの講座では、日本語教室ボランティアの役割や心構えをはじめ、日本語の基礎知識、外国人とのコミュニケーション方法などを学ぶことができます。
日本語を教える上での基本を一通り知ることができるため、安心して活動を始めやすくなります。
なお、先ほど触れたように、この「日本語ボランティア養成講座」の修了を応募条件としている活動もあるので、事前に募集要項をよく確認しておくことが重要です。
日本語を教えるときに大切なことは?

「やさしい日本語」を使用する
日本語教室ボランティアに参加する上で、まず意識したいのが「やさしい日本語」を使うことです。
「やさしい日本語」とは、難しい言葉や専門用語を避け、簡単な語彙や分かりやすい言い回しを用いた日本語を指します。文化庁が示しているガイドラインでは、「難しい日本語を平易に言い換える」「長い文章ではなく短く区切る」「敬語や難しい漢語、専門用語を避ける」「最初はゆっくり話す」といった点が基本的なルールとして挙げられています。
「やさしい日本語」は特別な技術ではありません。日本語を正しく話すことよりも、相手に伝わるかどうかを意識し、表現を工夫する姿勢が大切なのです。
異文化理解をもって接する
日本語教室での支援は、単なる言語指導にとどまらず、多文化共生や生活支援、地域とのつながりづくりを含む活動であることが多くあります。
そのため、学習者の母国や文化、これまでの生活環境などに配慮する姿勢が欠かせません。
日本では当たり前とされていることが、必ずしも他の国でも同じとは限らないからです。
実際、「やさしい日本語」の考え方においても、単なる言葉の言い換えだけでなく、「伝える側が相手の立場を理解しようとすること」の重要性が強調されています。
ボランティアとして接する際には、相手の背景や価値観を尊重して相手のペースを大切にすることや、必要に応じて丁寧に説明することなどの言語以外の配慮が、日本語学習を支える大きな力になります。
自分の生活スタイルに合った活動形態で無理なく参加する
日本語教室にはさまざまな運営形態があります。
そのため、仕事や学業、家庭の状況に合わせて、無理なく参加できる活動を選ぶことが大切です。 忙しい時期は頻度を抑えたり、余裕があるときに参加したりと、柔軟に関わることが長く続けるコツでもあります。
日本語教室ボランティアは、継続することで学習者との信頼関係が深まっていく活動です。
だからこそ、背伸びをせず、自分の生活スタイルに合った形で関わることが、結果的により良い支援につながります。
日本語を教えるボランティアに挑戦してみよう
日本語学習のニーズが広がる中、日本語教室ボランティアは、学習者と地域をつなぐ重要な存在です。また、言語を教えることを通して、外国人の日本での暮らしを支えるだけでなく、日常的に使っている日本語と改めて向き合う貴重な機会にもなります。特別な資格がなくても始められる活動なので、「やってみたい」という気持ちがある人は、ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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参考資料
・KYODO NEWS”FOCUS: Volunteers taking outsized role in Japanese language support”
https://english.kyodonews.net/articles/-/38299 (参照2025-12-14)
・リシード”日本語教師の過半数はボランティア、常勤は1割強…日本語教育実態調査”
https://reseed.resemom.jp/article/2025/11/04/12023.html(参照2025-12-14)
・東京都”東京が目指す地域日本語教育の方向性”
https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/seikatubunka/houkokusyo_chiikinihongo(参照2025-12-14)
・文化庁”「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」の公表について”
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/92488301.html (参照2025-12-7)
・一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR)”コラム「やさしい日本語」”
https://www.clair.or.jp/tabunka/portal/column/contents/116389.php (参照2025-12-7)