日本財団ボランティアセンターでは、NPO法人み・らいず2と協力し、5月28日(日)に、大阪府大阪市のナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターにて「大学生のためのボランティアEXPO in 大阪」を開催しました。
初開催となる本イベントでは、学生がボランティア活動や社会貢献活動と出会う場をコンセプトに、ボランティア活動への参加に繋げることや、来場者自身の興味や関心を広げることを目的としています。
出展団体には、国際支援、子ども支援、スポーツ、環境、福祉、災害の多様な分野から、関西地方を中心に活動を行うボランティア団体やNGO、NPO法人など16団体が出展しました。会場では、来場者の学生が興味のある分野や出展団体のブースを訪れ、出展団体による活動紹介やボランティア活動の案内を受けるブース型説明会や、ボランティア活動に取り組む現役大学生をゲストに招き、ボランティアへの想いを語るテーマトークショーを実施しました。
来場者は中学生以上の学生を対象とし、事前にぼ活!ホームページにて募集を行いました。イベント当日は123名の学生が来場し、出展団体の説明に耳を傾けました。イベントの様子や、来場者と学生スタッフへのインタビューを紹介します。
受付を終えて会場に入る来場者一人一人を、運営スタッフが温かく迎え、席まで案内をします。
イベントの開始前から、各ブースで来場者と出展団体のスタッフとの会話に花が咲き、和やかな雰囲気が会場全体に広がります。各ブースでの会話に耳を澄ませていると「今日は、兵庫から来ました」「あ!同じ大学ですね!」という声が聞こえてきました。
「ボランティアEXPO、はじまるよ!」
オープニングとして、ステージ上で1団体ずつ、1分間の活動紹介が行われました。来場者に自身の団体の活動内容や魅力を思い思いにアピールします。
発表者自身の背中に団体のSNSアカウントのQRコードを貼り活動紹介をする団体や、お揃いの服を全員で着て発表する団体など、各団体の熱い想いが1分間の発表に “ギュッ” と詰め込まれていました。
オープニングの最後では「ボランティアEXPO、はじまるよ!」の問いかけに、全員で「スタート!」と声を合わせ、記念すべき初開催の「大学生のためのボランティアEXPO in 大阪」が幕を開けました。
ブースを訪問して、各ボランティア団体を深掘り!
来場者自身が興味を持った団体のブースを訪れ、団体の活動内容やボランティア活動の説明を受けるブース型説明会を25分間を1回とし、計2回実施しました。
各ブースでの説明の仕方は多種多様。あるブースでは、出展団体のスタッフが活動内容を写真と共に紹介し、来場者はうなずき、メモをとりながら真剣に聴き入っています。他のブースでは、出展団体のスタッフと学生が1対1となり、ボランティア活動への疑問点を投げかけていました。
牧村さんと岩瀬さんは、同じ追手門学院大学1年の同級生。ひとりで参加するのは少し心細いという牧村さんが、友人の岩瀬さんを誘い、一緒に参加しました。
牧村さんは、クリスマスイブの夜にサンタクロースに変身し、子どもたちや施設にプレゼントを届けるボランティアを行う「ダブルスマイルサンタ」で聴いた活動内容が、とても印象に残ったと話します。
「自分がサンタクロースになった経験は一度もありませんが、ボランティアを行う自分自身も楽しみながら、子どもたちに笑顔を届けることが素敵だと思いました」
そして、もともとボランティアに参加してみたいという気持ちがあったという岩瀬さん。「今までは『参加する』という一歩を踏み出す勇気を持てずにいましたが、今後は、このイベントをひとつのステップとして、積極的にボランティアに参加することで困っている人の力になりたいです」と強く語ってくれました。
「前々から、ボランティアに興味がありました」と話したのは、近畿大学総合社会学部3年の町田さん。インターネットで「ボランティア」と調べていたところ、本イベントの開催を知ったそうです。
3年生に進級し、就職活動に向けての準備が始まる中、新型コロナウイルスの影響で課外活動が制限されていた大学生生活の2年間を振り返った時に、残りの大学生活では何かに挑戦したいという思いで、会場を訪れました。
町田さんが訪れたブースの団体「天神祭ごみゼロ大作戦」では早速、今年の7月24日・25日に開催される天神祭での清掃活動ボランティア募集の案内がありました。町田さんは、実際に足を運んで活動することが次の目標と意気込みを話してくれました。
「来場者の学生と話してみると、大学1年生や2年生のやる気が溢れる学生が多いことに驚きました。自分も頑張ろうと思います」
来場者に寄り添う、学生スタッフの姿
本イベントでは、NPO法人み・らいず2でボランティアとして活動する学生が、運営スタッフとして活躍しました。来場者の学生と年齢の近いスタッフが、学生生活とボランティア活動の両立など、リアルな声や想いを届けることで、来場者の学生がボランティア活動のイメージを掴んでもらうことに繋がってほしいという願いを込めています。
「自分がどの団体のブースを訪れて良いか分からない」と悩む来場者の学生には、学生運営スタッフから自分に合うボランティア活動や、探し方のアドバイスを受けることができる相談スペースが設けられていました。また、各団体の出展ブースでも、来場者と年齢が近いスタッフの姿がありました。
「私の大学での研究内容や、興味を抱いていることについて尋ねてくれる学生の方に、同じ学生という立場でお話することができました」
出展団体の一つ「公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」でインターン活動を行う和氣(わけ)さんは、来場者の学生へ、団体の活動を紹介しました。自身も、関西学院大学大学院総合政策研究科の2年生ということから、来場者の学生と近い距離で会話をすることができたと話します。
「想像していたより多くの方がブースを訪れてくれて嬉しいです。今後は、このようなイベントの機会を活かしながら、実際のボランティア活動へも力を入れてきたいと思います」
私たちがボランティアをする理由
会場の一角にはトークショーブースが設けられ、ボランティア活動に取り組んでいる学生や、大阪府・大阪市万博推進局と大阪マラソン組織委員会などの団体担当者をゲストに招き、約40分間のテーマトークショーを2回実施しました。
前半のテーマトークショーでは、日本財団学生ボランティアセンターのセンター長を以前に務めた近畿大学の西尾雄志教授をファシリテーターとして迎え、様々な分野でボランティア活動を行っている現役大学生3名が登壇。「私たちがボランティアをする理由」をテーマに、来場者の学生へボランティアをはじめたきっかけや、ボランティアへの想いを語りかけました。
「就職活動中によく聞かれる質問『ガクチカ』(学生時代に力を入れたこと)には悩まずに『ボランティア活動』と答えます」
現在、立命館大学経営学部4年の鈴木さん。「ボランティア活動を通して、自分について振り返る習慣が身について、自己分析や業界研究の際にボランティアでの経験が活きました」と就職活動を控える学生に話しました。
大学受験の時から「大学生になったら、大学生らしい活動をしよう」と思っていた鈴木さんは、大学1年の時に受けていた授業で、現在所属するNPO法人み・らいず2の活動を知ったことがきっかけでボランティア活動を始めました。現在は、発達障害がある子供たちの学習支援のボランティア活動や、障害者の余暇をサポートする「ガイドヘルパー」などのボランティア活動に携わっています。
今回のイベントの運営にもボランティアとして携わった鈴木さんは来場した学生に、「ボランティアの良さは、人との出会い」と語りかけました。「今日のイベントでも、普段生活していたら出会えることができない大学外の学生や社会人の人と出会うことができました。出会いは、ボランティアの魅力のひとつだと思います」
挑戦してみよう。サイコロの目は"1"かもしれない。けれど、必ず前に進むことができる。
前半のトークショーの最後に、近畿大学の西尾教授は、イベントに来場した学生に激励の言葉を贈りました。「皆さんは、勇気を出して、このイベントに来ています。それは、既に一歩踏み出し、サイコロを持っている状態です。サイコロには1から6の目があり、数に大小はあるけれど、0やマイナスは存在しません。どの目が出たとしても、必ず進むことができます。ぜひ、ボランティアに挑戦してみてください」
知ることが、ボランティア活動へ踏み出す"追い風"に
「ボランティアを通して、これからも自分の興味関心を広げていきたい」「ボランティア活動で、大学外に新しい友人を作りたい」
会場に来た多くの学生が伝えてくれたのは、今後のボランティア活動への期待や希望でした。
長い期間、日本中が新型コロナウイルスの影響で対面活動が制限され、課外活動に取り組む学生も、大きな影響を受けました。行動制限やマスクの着用が緩和された今、逆に「どのように動き出せば良いのか分からない」と迷うことや、不安に思うことがあるかと思います。
このイベントが、そのような悩みや不安を軽くし、自分自身の知見を広げ、これからの社会をより良くするためのボランティア活動へ、一歩踏み出す大学生の背中を押してくれる"追い風"になったのだと強く感じます。
初開催の「大学生のためのボランティアEXPO in大阪」は、出展団体と来場者の学生が、お互いへの感謝の気持ちと、今後の開催に期待を込めた拍手で幕を閉じました。
▼YouTubeでは、当日のダイジェストムービーを公開しています。▼
TEXT by 樋口佳純
PHOTO by 久米凜太郎