レポート&コラム

ボランティアを通じて得た大学生たちのプライスレスな「何か」
~出会い、体験を参加者が語る~(後編)

2024年11月1日
その他 グローバル 災害 自然・環境 スポーツ
ボランティアを通じて得た大学生たちのプライスレスな「何か」<br>~出会い、体験を参加者が語る~(後編)

前編では、ボランティア参加前に持っていたボランティアに対するイメージや進路・キャリアとボランティアについて、話題に上がりました。後編では、ボランティアを通して出会った仲間とのエピソードなど、ボランティア体験についてさらに深掘りします。

参加者のプロフィールは、前編をごらんください。

「本当にリアルなものを見れているんだ」。お金を出しても得ることのできないもの

能登半島地震の被災地でボランティア活動に励む澤邑さん

二宮 大学生に欠かせないものの一つとしてアルバイトがあると思います。先ほど遠藤さんから「大学生は時間があるけど、お金がない」という話もあったけど、ボランティアの参加は、お金を稼ぐ時間が少なくなってしまう側面もあるかなと思うんだけど、皆さんの感覚を教えてください。

澤邑 さっきも話したボランティアに関する授業を受けるまでは、ボランティアはほとんど「無償労働」だと思っているところがありました。今から思えば本当に偏見ですが。何か自分の関心があるところに行くとか、興味を引かれる出来事が起きたところに行って得られるものがあると今は思っているので、別にお金がもらえなくても構わないなって。お金を出しても得られないものがもらえる感覚なので、今はバイトを休んでボランティアに行きたくなるほどです。

二宮 お金を出しても得られないものって何かな?

澤邑 ボランティアは旅行じゃないので、実際にそこに住んでいる人の困っていることとか、そこにあるのは本音なんですよね。僕は災害関連のボランティアの経験が多いんですけど、災害でどういう経験をしたのかっていう話は、お金を払って聞くのと、払わないボランティアとして聞くのでは自分の心持ちも違います。「本当にリアルなものを見れているんだ」みたいなそういう感覚ですね。だから全然無駄じゃないです。

二宮 なるほど。2人はどうですか?

与論島で海岸清掃をする佐藤さん

佐藤 あまり時間を取られるという感覚はないです。趣味とかに近いものじゃないかなって思っています。趣味はお金で何かを買うことが多いけど、ボランティアは自分の時間を使って経験を買うとか、場所や仲間に出会うといったことにすごく価値があると思うので、全く抵抗はないです。

人としゃべったりとか、知らない人と出会うことがすごく好きなので、それが体験できるというのは私にとって魅力です。だから、お金がどうとか、アルバイトがどうとか全く考えず、興味があったら行っちゃいます。

遠藤 私も時間をかけることには全く抵抗がないから応募しました。特に私が参加したマレーシアの植林活動は、「はじめまして」の人と12日間13人で生活したので、一気に親密になりましたし、今も連絡を取っています。出会いとか、その場でみんなから得た刺激はお金じゃ買えないです。

続く仲間との絆。再会した河口湖のキャンプで朝4時まで語り合った

二宮 ボランティアで出会った仲間とは、プログラムに参加した後も続いているのかな?

澤邑 気仙沼のプログラムに参加した時、学年は違うんですが、茨城県の大学に通う参加者二人と特に仲良くなったんです。プログラムで泊まった民宿にまた泊まりたいね、プライベートでも女将さんに会いに行きたいねって話になって、この前行ってきました。

二宮 普通にお客さんとして行ったの?

澤邑 はい、普通にお金払って、交通費も自費で。女将さんに「あの時にボランティアで来た者です」って言ったら覚えててくださっててうれしかったです。遠いところに自分が知っている街があるのがちょっと嬉しくて、また行きたいなと思うし、その二人とも連絡取り合っていますね。

佐藤 与論島に行ったメンバーとは、さっきもお話したように東京マラソンに参加する話がLINEで出たりとか、あとはちょいちょい誕生日おめでとうみたいなメッセージが今も続いていたりとか。私が最年少なんですけど、今年20歳になったので、今度飲み会を自分で企画して、みんなを誘おうかなって思っているところです。

二宮 すごい。一番年下から誘われたら、みんな来ると思うよ。

遠藤 マレーシアに行った私たちもLINEグループがあります。今年8月に2泊3日で山梨県でキャンプをしました。関西に住んでいるメンバーも来ました。計画するために5、6回オンラインでミーティングをやりました。ちゃんと議事録もとって、

「お前が宿担当」「私たちはレンタカーを確保するね」みたいな感じで。3日間、食卓を囲んでお酒を飲んだり、朝の4時まで話した日もありました。

マレーシア・ボルネオ島で記念撮影する遠藤さんら

ボランティアが和らげてくれた不安

二宮 いま大学生の皆さんは、将来に対する不安とか、大人になっていく不安とか、いろいろ不安ってありますか?あるいは、そういった不安を解消したり、新たな不安が見つかったり、ボランティアと皆さんの不安について、思い浮かぶエピソードはありますか?

遠藤 不安で言うと、私は教育学部に通っていますが、進路や将来何になればいいのかが全然決まっていません。留学に行きたい気持ちはあるけど、大人になる前に何か目標が決まらないと大学生活をダラダラ過ごしてしまって、4年間があっという間に終わっちゃうんじゃないかとか、結構不安はあります。

座談会の遠藤さん

二宮 それは結構な不安だね。

遠藤 将来に対する不安はずっとあります。でも、この前の夏休み、一緒にマレーシアで活動したボランティアのメンバーで集まって、人生に対する深い話をいっぱいしました。何かちょっと挑戦してみたいこととか、自分が向いていそうなことを仲間に言ってもらいました。

二宮 今話してもらった不安ってなかなか消えないものだと思うけど、こういったボランティアに参加することで自分に自信がついていくよね。そうすると、その不安が10から8ぐらいには減ったりするかな?

遠藤 そうです!

二宮 佐藤さんはどうですか?

佐藤 今は不安がないというか、今を生きているという感じで楽しいです。でも、高校3年の時に「旅するボランティア」で与論島に行った時は、不安を通り越して「やけくそ期」だったんです。

私は、高校1年生の冬に不登校になっちゃって、2年生で通信制の高校に転校しました。旅するボランティアに参加した時は、ようやく学校にも慣れ始めた時、プライベートでもいろいろあって、「もういいや、なんでもやる」みたいな時期だったんです。不安があったからこそ飛び込めたというか、何かその不安を見ないようにしたくて、手あたり次第に気になったものはなんでもやろうという感じでボランティアにたどり着きました。

私は、自分のことを知ってくれている人よりも、全く知らない人の方が自分の悩みや不安を話しやすいのかなと思っています。与論島で出会ったメンバーとは、夜にいろいろなことを話して、不安に思っていることを聞いてもらったりしました。それで不安や悩みが解消するとか、劇的に改善するみたいなことは短期間じゃできないけど、この悩みを共有できた人がいるというだけで、ちょっと心強かったです。

二宮 話しながら泣かなかった?

佐藤 泣きましたよ、めっちゃ(笑)

座談会の佐藤さん

二宮 話すことができたのは、きっとメンバーにも恵まれたんだね。澤邑さんはどうですか?

澤邑 僕は、ボランティアの参加理由が不安だったんです。

座談会の様子

実家が海から近くて、窓から見えるくらいの距離です。東日本大震災の時、小学2、3年生だったんですけど、ずっと同級生と津波の話をしていた記憶があります。

災害ってどうしようもないじゃないですか。そういった1人でどうにかなるようなことじゃない何かが起きた時、どうやって立ち直ればいいんだろうっていうのは、すごく漠然と怖かったです。

僕は実家暮らしで、大学にも通わせてもらっていて、今まで困難にぶつかったことはなくて、ずっと幸せなんです。一方で、本とか読んだりすると、自分じゃない誰かが災害に遭っていて、そこからどうやって立ち直るのだろうというのが、すごい気になっていました。

それが動機で東北に2回行って、被災者の方から、震災から得られるものはあったっていう話を聞いて、勇気づけられたり、不安が解消されました。それは能登半島の被災地に行った時も同じでした。

二宮 本当は被災地の人を勇気づけたりとか、役に立つのがボランティアなのかもしれないけれど、全く逆の立場を経験しているね。

澤邑 恐縮しているというわけじゃないけど、人助けに行こうなんていう気持ちは全くなくて。そんな恐れ多いことはできないなと思っています。ちょっとお話を聞かせていただいて、その中で少し活動をして、少しでも役立てればいいかなっていう感じです。

知らない世界に踏み出せない大学生の「あなたへ」。ボランティアとともに少し足を伸ばしてみませんか?

二宮 ボランティアの「ボ」の字も踏み出していない若者は、みなさんの周りにもいるよね?どうしたら踏み出せると思いますか?

遠藤 迷っているなら行ってみなよ!って。

二宮 迷ってすらいない可能性もあるよね?

澤邑 そうですよね。

二宮 昔の自分に言うとしたら?どんな声をかける?

澤邑 自分が普段生活している世界とは別の世界ができるから、それって結構貴重だよっていうのを言えば来てくれないかな。

二宮 それで過去の自分は動いてくれるかな?

澤邑 どうですかね。学生って、社会に出るのがなんとなく怖いとか、分かんないというのがあると思うんですよ。でも、僕はこれまでの体験を通して、ちょっとだけ自分の世界の中にリアリティがあって、なんかちょっと広い視点を持てています。漠然と世の中に出るのが怖いって思っている人がいたら、守られながら、ちょっと先に半歩出る機会になると思います。

二宮 面白いですね。佐藤さんは、どうかな?

佐藤 結局タイミングだと思う。何を言っても、今のタイミングで行かない人はいると思います。逆になんかちょっとモヤモヤしているとか、何かやってみたいけど、その何かが分からないという人はいっぱいいる。そういう人には、求めている「何か」が得られるかもしれないし、行くことに価値があるというのを伝えていく。参加者の声を聴くことができる場があればいいかなって思います。

二宮 みんなの生の声が誘い水になるかな。遠藤さんは?

遠藤 一生モノの仲間ができるよって言いたい。

二宮 一生モノの?

遠藤 もう本当に一生モノだと思っています。大人になっても連絡取りたいなって思うし、同じ志を持つ仲間が全国各地にいて、すごい心強い味方ができたみたいな感覚です。高校生の自分に言ってあげたいですね。

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