日本財団ボランティアセンター(以下、日本財団ボラセン)では、前身団体の日本財団学生ボランティアセンター(Gakuvo)のころから、これまでに東日本大震災の被災地に延べ約12,000人の学生ボランティアを派遣してきました。
その当時、学生ボランティアの拠点となった宮城県気仙沼市唐桑半島の民宿「唐桑御殿つなかん」(以下、つなかん)の、震災後から現在までの10年以上に及ぶ物語が、ドキュメンタリー映画「ただいま、つなかん」となって2/24(金)から全国で順次公開されます。
劇場公開を記念して、日本財団ボラセンでは、公開前の2/16(木)に試写会と映画関係者をゲストに招いてのトークショーを都内で開催しました。
ここでは、そのトークショーの内容の一部を紹介します。
また、3月下旬には、映画の舞台となっている民宿「唐桑御殿つなかん」に宿泊し、地元の方々や、震災後に移住した元学生ボランティアの方々と交流しながら、被災地の「いま」を知るボランティアプログラムを実施します。学生限定、参加費無料の4泊5日のプログラムです。多くのお申込みをお待ちしています。詳細、お申込みは本記事の末尾をご覧ください。
映画のあらすじはこちらから
登壇者紹介(敬称略)
<ゲスト>
<ファシリテーター>
映画では語られなかったストーリー
西尾
「まず最初は、映画では語られなかったストーリーについて、風間監督からお話しください」
風間
「つなかんを象徴するものとして、1階に貼られていた『ツナカン5箇条の御誓文』が印象に残っています。
これを見た時に、3つ目の『ツナカンの想いに感謝を』と、4つ目の『ツナカンでのよりよい活動のため、想いを引き継ぐこと』に『想い』という言葉が入っているのが素晴らしいと思いました。きっとこの『想い』を受けて、一代さん( 菅野一代さん、唐桑御殿つなかんの女将)は、つなかんをみんなが帰ってくる場所にしたいと思ったのではないでしょうか」
西尾
「加藤さんは、卒業と同時に唐桑に行かれました。加藤さんを活動へと駆り立てたものや、一代さんとの出会いについて教えてください」
加藤
「大学時代は、学生ボランティアとして中国のハンセン病回復者の支援に携わっていました。大学卒業のタイミングで東日本大震災が起こり、今は東京で働くのではなく、被災地のために現地で活動したいと思い、内定していた企業にお断りをして、4月に唐桑に来ました。
その後、私がGakuvoでインターンをしていたというご縁から、当時Gakuvoのセンター長を務めていた西尾さんから、唐桑で学生ボランティアの受け入れをしてほしいと依頼を受けました。拠点となる場所を探している中で一代さんに出会い、この人だったら、きっと学生を受け入れてくれると思い、つなかんを学生の拠点として使わせてほしいとお願いをしました。
そして、半年後、一代さんが『拓馬聞いて!私には夢ができた!この家を取り壊すのをやめる!」と突然言ったのです。それを聞いた時、嬉しい半面、本当に大丈夫なのか心配になりました。それが、民宿つなかんへのはじまりでした」
西尾
「伊藤さんは、震災当時、どのように過ごされていたのでしょうか?」
伊藤
「私は、震災当時小学3年生で、小学校6年生の時に加藤さんと初めて会いました。その時のことは忘れもしません。当時、私よりもこの地域に住んでいる期間が短い加藤さんたち元学生ボランティアの移住者が、楽しそうに唐桑の魅力を語る姿に衝撃を受けました。
その後も、元学生ボランティアの移住者と関わり続ける中で、学生ボランティアっていいなと思い、今、私は大学のボランティアセンターで学生スタッフとして働いています」
西尾
「映画の中では、寄せ書きが1つのキーポイントになっていました。風間監督は、寄せ書きからどんなことを感じられていたのでしょうか?」
風間
「たくさんの学生が寄せ書きを書いていましたが、みなさんが一代さん、和享さん(菅野和享=やすたか=さん。一代さんの夫)たちへ、感謝の言葉を伝えていたのが印象に残っています。
また、次の隊や、後から参加する学生に対するメッセージも書かれていて、寄せ書きの中で横の繋がりが生まれていたのも印象的でした」
学生ボランティアの魅力とは?
西尾
「この映画でも伝えられていた『学生ボランティアの魅力』について、どのように考えていますか?」
風間
「私が初めてつなかんを訪れた2012年当時、周りは静かで、明かりもなく暗い中で、つなかんには明かりが灯り、学生たちが賑やかに生活していたことが強く印象に残っています。その学生ボランティアたちが、10年経った今でも繋がっていることは、学生ボランティアの魅力ではないでしょうか。この映画を通じて、その10年間の繋がりを映像に残せたことは嬉しいです」
加藤
「なにも無くなってしまったあの場所に、つなかんだけに明かりが灯った瞬間、一代さんは本当に喜んでくれました。
普段は多くを語らなかったやっさん(和享さん)も『つなかん』についてどう思っているのか聞いた時、「人が集まる場所には福が宿るんだ」と言ってくれ、学生ボランティアの拠点を一代さんに頼んで本当に良かったと思いました。
最近は新型コロナウイルスの流行からボランティアも減り、メディアでは迷惑ボランティアについて取り上げられています。
私自身も、短期ボランティアに何ができるのか、悩んだ時がありました。でも、やっさんの言葉が支えになっています。人が集まらなければ何も生まれません。人が集まることが大切だと思うので、学生ボランティアには、ぜひ現地に行ってもらいたいです。
また、学生ボランティアの強みは、支援者と被災者という枠を超える存在になれることです。それは、なにも技術を持っていない学生が唯一できることですが、学生にしかできない強みだと思います。
つなかんと学生ボランティアたちは『家族っぽい』距離感でつながっていました。本当の母親には、恥ずかしくて寄せ書きで感謝を伝えることはできません。でも、『家族っぽい』距離感だったからこそ、感謝も素直に伝えられるし、それを受け入れてもらったことが嬉しく、学生ボランティアたちは、また帰ってきたいと思いました」
西尾
「映画の『ただいま』というタイトルにも、加藤さんの言われた「家族っぽい」距離感が象徴されていますね。では、現役大学生の伊藤さんはどのように考えますか?」
伊藤
「私は大学入学後、コロナ禍の影響でなかなかボランティア活動ができませんでした。しかし、徐々に活動に参加できるようになり感じたことは、学生という立場でも、必要とされたり、感謝されたり、迎え入れてくれる環境があることが学生ボランティアの魅力の1つだと思っています。
そして、学生ボランティアを通してできた繋がりが、何十年も続くということは、私が憧れた姿であり、魅力だと思います」
一代さんからのビデオメッセージ
西尾
「ここで一代さんから、ビデオメッセージが届いています」
菅野一代
「こんにちは。震災から12年、悲しくつらい出来事の連続でしたが、今こうしてみなさんの前で挨拶できているのも、Gakuvo学生ボランティアのみなさんとの出逢いがあったからこそです。
たくさんの若いパワーや存在だけで、人は希望を捨てずに前を向くことができると、切実に感じました。3月にまた若いパワーに会えることを楽しみにしています。
どうぞ、これからもつなかんを、よろしくお願いします。」
復興へのヒントが詰まっている
西尾
「最後に一言ずつお願いします」
風間
「この映画は、10年間の『つなかん』を中心とした、一代さんと学生ボランティアの繋がりを描いています。
この映画を見ていただいて、改めて人との繋がりを考えるきっかけになってもらいたいです」
加藤
「映画の中で、震災前の鮪立と今の鮪立の変化を見て、この12年間の復興とはなんだったのかを考えさせられました。
みなさんもこれから、なにかしらの自然災害に遭遇し、復興について考えることがあるかもしれません。もしかすると、その時に、この映画のことや、一代さんのことを思い出すのではないかと思います。この映画や、つなかんと学生ボランティアの12年間の歩みには、復興についてのヒントが詰まっています。ずっと気仙沼で生活をしてきて、私自身も理解している気がしていましたが、改めて考えるきっかけになりました。ぜひ、気仙沼に遊びにきてください」
伊藤
「映画を見て、いろいろな人とのつながりや、地元のことを見つめ直すきっかけとなりました。3月のボランティアプログラムにも、たくさんの学生に参加してもらいたいです」
西尾
「どんなに辛いことがあっても前を向く一代さんの姿は、これからの時代を生きていく若い世代が感銘を受けると思います。ぜひ多くの方に作品を見ていただきたいです。本日は、どうもありがとうございました」
映画「ただいま、つなかん」は、2月24日(金)フォーラム仙台(宮城県仙台市)より公開が開始されます。
公開情報はこちらから
また、3月下旬には、映画の舞台となっている民宿「唐桑御殿つなかん」に宿泊し、地元の方々や、震災後に移住した元学生ボランティアの方々と交流しながら、被災地の「いま」を知るボランティアプログラムを実施します。学生限定、参加費無料の4泊5日のプログラムです。
本活動への想いや映画の感想を添えてお申込みいただくプログラムですので、劇場で映画をご覧いただき、ぜひお申込みいただければと思います。
東日本大震災の被災地 気仙沼の”いま” 〜映画「ただいま、つなかん」から学ぶ5日間〜
≪3/23(木)~27(月)開催!詳細・お申込みはこちらから。3/7(火)17:00申込〆切≫
https://vokatsu.jp/event/1673929502018×266845706439884800