レポート&コラム

10年間で10万本の植樹を目指す大型プロジェクト始動
「オランウータンの森再生プロジェクト」

2024年4月30日
グローバル 自然・環境
10年間で10万本の植樹を目指す大型プロジェクト始動<br>「オランウータンの森再生プロジェクト」

日本財団ボランティアセンターでは、マレーシア・ボルネオ島(カリマンタン島)で熱帯雨林の保護と再生を目的に、10年間で10万本の植樹を目指すプロジェクト「オランウータンの森再生プロジェクト」を立ち上げました。
2024年2月に13名の学生ボランティアを第1陣として初めて派遣し、3月には第2陣として同じく13名を派遣、マレーシアとインドネシアの国境付近に位置するグヌン・アペン国立公園内で各隊2,500本ずつ、合計5,000本の植樹を行いました。

現地の様子や、プロジェクトの活動について紹介します。

急速な環境破壊が進むボルネオ島

インドネシア、マレーシア、ブルネイと3つの国が領し、世界で3番目に大きな島であるボルネオ島(カリマンタン島)は、島の大半が熱帯雨林で覆われ、多種多様な生物が生息しています。絶滅危惧種であるオランウータンも、ボルネオ島に生息しており、この島を象徴する動物のひとつです。

日本財団ボラセンが活動したグヌン・アペン国立公園に広がる熱帯雨林
ボルネオ島を象徴するオランウータン

しかし近年、島の熱帯雨林が急速に減少し、2015年には島の熱帯雨林の面積はかつての約3分の1まで減少したといわれています。
その要因の一つが、「パーム油」の原料となるアブラヤシ農園の拡大です。パーム油は、インスタント麺やスナック菓子などの加工食品をはじめ、幅広い用途で世界中で消費されています。

一面に広がるアブラヤシの木。アブラヤシ農園で撮影
アブラヤシ農園

日差しが強く、雨量の多いマレーシアは、アブラヤシの生産に適しており、パーム油の生産のために熱帯雨林は切り開かれ、大規模なアブラヤシ農園がつくられてきました。そのために生態系が変わり、そして現在、オランウータンなど、様々な野生動物の住処が奪われています。

収穫されたアブラヤシの実

約30年間現地で植林活動を続ける日本マレーシア協会がプロジェクトに協力

日本財団ボラセンが派遣した学生ボランティアは、マレーシア・サラワク州セリアンを拠点に、車で1時間程移動したインドネシアとの国境沿いにある「グヌン・アペン国立公園」で活動を行いました。
「グヌン・アペン国立公園」は、1995年よりマレーシアで植林活動を続け、今回のプロジェクトの協力団体である公益社団法人日本マレーシア協会が長年に渡り植林活動を続けている場所の一つです。

日本マレーシア協会は、現地住民の協力を得ながら植林活動を続けています。現地住民をローカルスタッフとして雇用し、植林に関わる作業や管理を行ったり、植樹に使用する苗木の育成を現地住民に依頼し、成長した苗木を買い取ることで現地住民への経済循環にも繋がっています。グヌン・アペン国立公園でも、この地域の先住民族であるビダユ族のローカルスタッフが、日常の作業や管理を行っています。

ビダユ族のローカルスタッフ
ローカルスタッフは、学生たちの食事の準備なども行った

学生ボランティアと先住民族ローカルスタッフがバディを組み活動

「オランウータンの森再生プロジェクト」の特色の一つが、学生ボランティアが先住民族のローカルスタッフと2人1組でバディを組みながら、活動を進めることです。

ローカルスタッフは、20代〜50代の男性で、学生と同年代のペアもあれば、年代や性別が異なるペアもおり、活動初日はお互いに緊張した表情が印象的でした。特に、学生が不安に感じていたことが言語でのコミュニケーションでした。

第1陣に参加した坂元愛佳さんは、バディとの初対面の印象が忘れられなかったそうです。

「初めてバディと顔を合わせた時、言葉はもちろん、食べるものや普段の暮らし方、常識まで全てがかけ離れているように思ってしまい、バディとの壁は決して低くはなかったと思います。特に、バディに英語が通じないと知った時は、焦りと不安、マレー語を勉強してこなかったことへの後悔の気持ちでいっぱいでした」

坂元さん(左)とバディのWensesさん(右)

不安に感じていたのは、学生だけではなくローカルスタッフも同様です。

学生とローカルスタッフが初めて顔を合わせた活動初日の自己紹介の様子

「プロジェクトが始まる前、最も心配していたことは、お互いの文化を理解できるかということでした」

ローカルスタッフのリーダーを務めるVincent Anak Bakirさんも、普段から、日本の様々な企業や団体の受け入れる機会はあるものの、その多くが1日や数日程度の短期プログラムで、今回のように1週間を超える長期のプロジェクトは初めての経験で、不安を感じていました。

学生たちに植樹の方法を説明するVincentさん

言語を超えたコミュニケーション

活動初日は、バディ同士での会話は、ほとんどなく進められていましたが、徐々に身ぶり手ぶりや表情といった言語以外の方法でコミュニケーションを取りながら、少しずつ会話や笑い声が聞こえてきました。活動3日目頃には、お互いの言語を教え合う光景も見られました。

また、活動の中盤以降は、休憩時間にスポーツやダンスをしたり、マレーシアの子どもたちの遊びを教えてもらうなど、植林活動以外の時間でも一緒に過ごす時間が増えていきました。

セパタクローで交流する学生ボランティアとローカルスタッフ

それと同時に、チームワークも高まり、予定よりも早いペースで植樹は進んでいきました。当初は難易度が高いと思われていた各隊2,500本という植樹の目標を、第1陣、第2陣ともに、予定日よりも早く達成することができました。

これには、Vincentさんも驚いたと言います。

「学生たちの前で作業をしていた時、まだ追いつかないだろうと思って後ろを振り向くと、いつの間にか学生たちがすぐ後ろで作業をしていることが何度もありました。

ローカルスタッフが疲れた表情をしている時でも、学生たちはいつも笑顔で、本当に素晴らしい子たちだと思いました」

活動最終日に撮影したVincentさん(左)とバディの学生ボランティア(右)

第1陣に参加した滝本智丹さんは、今回のバディとのコミュニケーションや活動を通じて、自分から踏み出す大切さを学んだそうです。

滝本智丹さん

「初めは言語が通じず、身振り手振りでコミュニケーションを交わすのが精一杯でしたが、徐々に信頼関係を築き、最終日には言語の壁を超えた最高のパートナーとして共に助け合いながら、植樹をすることができたと思っています。ボランティアは相手を想い、寄り添うというイメージが大きかったのですが、今回の活動を通じて、歩み寄る大切さを知りました。自分から踏み出す一歩が、相手と心を通わせるきっかけになり、協働できることを学びました」

ローカルスタッフにも現れた変化

この活動は、学生だけではなくローカルスタッフにとっても大きかったとVincentさんは言います。

「最初はいくぶん壁があり、打ち解けるまで少し時間がかかりましたが、最後にはとても打ち解けることができ良かったです。

一緒に活動する中で、ローカルスタッフにとっても様々な言語や文化を学ぶ機会になり、今回のプロジェクトに参加できて良かったという声を聞きました」

現地に訪れなければ気づけなかった

バディとの活動の他にも学生たちは様々なことを学びました。

第2陣に参加した植松幸さんは、アブラヤシに対する考え方が変わったそうです。

「マレーシアに来る前はアブラヤシ自体が環境にとって有害だと思っていましたが、実際はアブラヤシ自体が悪いのではなく、在来種を故意に切ってアブラヤシを植えることが問題であることを知りました。

アブラヤシを植えることで短期的に収入をもたらす一方で、長期的にはアブラヤシのプランテーションは森林伐採や生物多様性の喪失を引き起こす原因となっています。環境保護と地域経済の両方のニーズのバランスを考えることが課題であり、難しい問題であると改めて実感しました」

アブラヤシは、大規模な農園でだけではなく、貴重な収入源として各家庭でも育てられています。

学生たちが訪れた先住民族の村でもアブラヤシは育てられ、アブラヤシの実の収穫体験もさせてもらうなど、アブラヤシがマレーシアの人々の生活の身近にあることを知り、印象が変ったという学生は多くいました。

アブラヤシの実の収穫体験

また、学生の多くは今回のプロジェクトで初めての植林活動でした。このプロジェクトを通じて1つの苗木を植えるまでに、多くの人々が関わり、様々な行程があることに驚く学生も少なくありませんでした。

滝本智丹さんもその一人です。

「最初は、目標の2,500本の植樹を達成することだけを考えていましたが、このプロジェクトを通して、植林活動には様々な工程があり、一つの苗木にも多くの人々が関わりながら、いろいろな思いが込められていることがわかりました。それを知ってからは、ただ植えるのではなく、関わった人々の思いや苗木の成長を願いながら丁寧に植樹することを意識するようになりました」

苗木に肥料を与える滝本さん
植えるためのの穴を掘る作業

植樹は、苗木を植えるだけでは終わりません。今回植樹した5,000本の苗木も、今後はローカルスタッフが草刈りなどのメンテナンスを定期的に行い、何十年もかけて、森へと成長していきます。

日本財団ボラセンでも、今後10年間、学生ボランティアを派遣し、10万本の植樹を目指しながら、森への成長を見守っていきます。

2月に派遣された第1陣の学生ボランティアとローカルスタッフ
3月に派遣された第2陣学生ボランティアとローカルスタッフ

2025年春派遣 第5、6陣の参加者募集中

日本財団ボラセンでは、2025年春に派遣する第5陣と第6陣の参加者を12月3日まで募集しています。

植林活動以外にも、熱帯雨林のジャングルでのナイトウォークや、先住民族の村へ訪問し作物の収穫体験など、様々な異文化交流プログラムを予定しています。

日本財団ボラセン公式Youtubeチャンネルでは、3月に派遣された第2陣の活動の様子を紹介しています。ぜひ、こちらもご覧ください。

ぜひ、多くの学生のみなさんのお申込みをお待ちしています。

【詳細・申込】
・第5陣 2025/2/10(月)~2/21(金) 関西国際空港 集合・解散
https://vokatsu.jp/event/1731305220868×135722961315299330
・第6陣 2025/3/10(月)~3/21(金) 成田空港 集合・解散
https://vokatsu.jp/event/1731310689873×357310724156948500

【派遣概要】
■ 期 間
第5陣:2025/2/10(月)~2/21(金)
第6陣:2025/3/10(月)~3/21(金)

■ 場 所
マレーシア ボルネオ島 セリアンを拠点に活動

■ 集合・解散場所
第5陣:関西国際空港
第6陣:成田空港

■ 費 用
3万円(税込)

■ 定 員
各13人、合計 26人

■ 募集対象
・申し込み時点で大学等に所属する18歳以上の学生
・全日程参加できる方
・熱帯雨林でのキャンプが可能な方(渡航中1日のみ、森の中にある施設での寝泊りがあります)

■ 募集締切
12/3(火)17時まで

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