日本財団ボランティアセンターでは、一般社団法人Earth Companyと協力し、3月11日〜18日の5泊6日で、インドネシアのバリ島ウブドを拠点に、持続可能な地球の未来を考えるプログラムを実施しました。
前編では、活動4日目までの様子を紹介しました。後編では、活動5日目から最終日までの活動の様子をお届けします。
チェンジメーカーのお話から「自分」に向き合う
活動5日目は、裁縫、料理、ヨガプログラム等を提供することを通じて、女性や子どもへの支援を行うPKPコミュニティセンターを訪れ、創設者のサリさんのお話に耳を傾けました。
自身の人生を「土壌」に例えたサリさん。自身のあらゆる経験は、堆肥として食物を育てる糧となったと話します。
自身の離婚や、12年間もの間の愛娘に会えない苦しみや、悲しみを経験した自分だからこそ、苦しい経験をしている人々への拠り所を提供し、人々が乗り越える手助けをしたいという想いから、PKPコミュニティセンターを設立しました。
竹内 太郎さん
「原体験が無いことがとてもコンプレックスだった」と話すのは、脱炭素技術開発エンジニアの竹内さん。以前、メガソーラー発電所を訪れた際に、地域住民が様々な課題に問題意識を持ち、活動している姿を目の当たりにしました。自分には、彼らのようにこの状況を変えたいと思う問題意識や、社会課題に出会っていないと感じたそうです。
実際に現地を訪れ、自分の目で見て、知ることで自分にとっての原体験を見つけたいという思いから、本プログラムに参加しました。
お話の後、サリさんに一つの問いを投げかけたという竹内さん。
「何かを変える場面や、選択をする時、どのようなことを大切にしていますか」という質問に、「どのようになりたいか、どのようにしたいのかは、全て自分が持っているのよ」という言葉を贈ってくれました。サリさんの言葉や姿勢から、原体験が無いありのままの自分を受け入れることができました。
「自分は頭でっかちな人間。こんなにも自分の心と向き合った経験は、生まれてはじめて」
原体験が無いということを受け入れることと、自分が前に進まないことは別物。これからも実際に現地を訪れ、社会問題に自分がどのように貢献できるのか考え続けたいと話しました。
バリ島、最大のゴミ山「Suwung(スウン)」
鼻を突き刺すような刺激臭、辺り一面を覆うゴミ袋の数々——。
活動6日目、バリ島最大のゴミ山「Suwung(スウン)」を訪れ、バリ島のゴミ問題、環境問題を学びました。
バリ島に訪れる観光客が一日に排出する一人当たりのゴミの量は、1.7㎏と言われています。これは、バリ人の排出量0.5㎏に比べ、約3.4倍の排出量です。観光客の生み出すゴミや、バリ島以外から流れ着いたゴミがスウンに集められ、近くに形成されているコミュニティの住民により分別されます。彼らは分別したゴミを販売し、生計を立てている一方で、このような環境下から健康被害を受けていることも事実です。
今、私たちができること
バリ島最大のゴミ山「Suwung(スウン)」を訪れ、バリ島のゴミ問題の現実に直面した参加者たち。宿泊先の「マナ・アースリー・パラダイス」に戻り、バリ島に滞在させてもらった感謝の気持ちを込めながら、ホテル周辺のゴミ拾いを行いました。
45分間、黙々と拾い続けたゴミの総重量は約51.5㎏。参加者からは、「ビニール袋やペットボトルは土に埋まっていて取り出すことが難しかった。改めてプラスチックは分解されないのだと思い知らされた」「一人では大変なことも、みんなで拾えばあっという間」と感想が挙がりました。ゴミ拾い後、ゴミ拾いを行った道を歩いてみると、清々しい気持ちになりました。
川口 十南さん
沖縄県出身の川口十南(とな)さん。現在は早稲田大学教育学部に通い、環境教育について学んでいます。幼少期に親しんだ沖縄の海の埋め立てを目の当たりにした経験や、海にゴミが流れ着いていることから、沖縄の環境保全に問題意識を持っているといいます。自然環境や気候が似ているバリ島での環境問題や、ゴミ問題を実際に学び、将来の環境保全活動へ還元したいという思いから、本プログラムに参加しました。
川口さんは現在、環境保全サークルに所属し、環境教育の出前授業や、ゴミを再利用した商品開発、放置林を活かした地域おこし、川や海の清掃など、多角的に自然環境保全活動に取り組んでいます。
「肥料の袋をゴミ拾い用の袋として、再利用していることが印象的だった。サークルで行う川や海の清掃で使用するビニール袋を、環境に優しい素材や再利用品に変えることから始めたい」
そして、俳句が趣味だという川口さん。この旅で、参加者同士で手をつないだ時、お世話になった方々と握手した時、気持ちを一つに喜怒哀楽を共有することができたと話します。指先から伝わる温かさ、脈拍を感じたことから一句詠んでくれました。
「指先の 震えでつながる 心かな」
繋がり、向き合うこと、それは持続可能な世界への第一歩
様々な体験や、社会をより良くしようと活動するチェンジメーカーのお話を通じて、持続可能な世界とは何か、自分がどのように貢献できるのか、考えてきた参加者たち。
プログラム中、バリの豊かな自然や自分自身、仲間と向き合うことを意図として、「メディテーション(瞑想)」を何度も行いました。普段、気が付くことができない自然の奏でる音に気づいたり、お互いに手を取り合うことで、仲間の鼓動を感じました。
持続可能な世界を目指す国際目標「SDGs」の達成目標期限の2030年まで、あと7年—。
そして、未だ世界には数々の社会問題が存在します。しかし、世界中の一人一人がお互いに手を取り合い、地球全体が一つになることで、私たちは他人や他国の痛みに気づき、自分事として向き合うことができるということを学びました。
それは、決して一人では解決できない問題が解決に近づくことでもあり、持続可能な世界への第一歩なのではないでしょうか。
TEXT by 樋口佳純