レポート&コラム

「地球の未来を考えよう SDGsのその先へ in バリ島」を通して向き合う、持続可能な世界とは(前編)

2023年4月18日
自然・環境 グローバル
「地球の未来を考えよう SDGsのその先へ in バリ島」を通して向き合う、持続可能な世界とは(前編)

2015年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連サミットで、2030年までに持続可能な世界を目指す国際目標「SDGs」が定められました。世界各国でSGDsの達成に向け、様々な取り組みが行われています。

世界屈指のリゾート地として知られるインドネシアのバリ島では、多くの人や団体が社会課題の解決に取り組み、世界をより良い方向へ変える動きが見られます。

ゴミ問題、環境問題、貧困問題…様々な社会問題に向き合うことを通して、持続可能な社会の実現へと進み続けている最前線です。

日本財団ボランティアセンターでは、3月11日~18日の5泊6日で、インドネシアのバリ島ウブドを拠点に、持続可能な地球の未来を考えるボランティアスタディツアーを実施しました。

「次世代につなぐ未来のために人と社会と自然が共鳴しながら発展するリジェネラティブなあり方」を追及する一般社団法人Earth Companyと協力した本プログラムには、専攻する学問や職業が多様な大学生5名、社会人4名の計9名が参加しました。

「次世代にどのような世界を残すのか、そのために自分自身、何ができるのか」を、参加者が数々の体験を通じて考え、世界と自分自身に向き合った8日間の様子を、前編と後編に分けてレポートします。

神々の島、バリ島へ

 3月11日、成田空港を出発。約8時間のフライトを経て、デンパサール国際空港へ到着しました。初日は、空港近くのホテルに一泊しました。初めて全員で夕食を囲む姿から、緊張しながらも、これから始まる活動や出会いに心を弾ませている印象を受けました。

宿泊することが社会貢献に繋がるエコホテル

翌日、バリ島ウブドに向けて出発し、プログラム期間中に宿泊するエコホテル「Mana Earthly Paradise(マナ・アースリー・パラダイス)」に到着。

施設の照明はすべて太陽光発電を使い、水は雨水を循環させ、廃水も再利用しています。建物は、新しい木を一本も切らずに家屋の廃材を活用し、建てています。様々なエコテクノロジーを導入したホテルに実際に宿泊することで、暮らしとの親和性や利便性を実感しながら、地球環境に配慮した暮らしがどういったものなのかを学びました。

世界に一つ、環境と自分に優しいスキンケアグッズ作り

活動3日目、ホテル内にある日差しが降り注ぐ自然に囲まれた広場で、バリ島を拠点に、ローフードやスキンケアのクラスを提供することを通して、地球と調和する心地よい在り方を発信するプラントアルケミストの岸野幸恵(ゆき)さんからレクチャーを受け、オーガニック素材を使った洗顔スクラブを作りました。

洗顔スクラブ作りで使用するのは、化学物質ではなく、蜂蜜、コーヒーパウダー、オーツ、米ぬか等の天然素材やオーガニック素材。洗顔時の廃水が大地に流れても、環境に悪影響を与えないことから環境を守ることに繋がります。そして、土や水、空気といった環境を享受する私たち自身の健康にも良い影響を与えてくれ、好循環が生まれます。

「あ~、カカオの甘い香りがする!」
「さっぱりしたい気分だから、殺菌効果のある米ぬかを多めに入れよう!」
自分の肌質に合う素材や好みの香りの素材を、決められた分量の中で好きなように組み合わせていきます。世界に一つ、自分自身と環境に優しいオリジナルスキンケアグッズの出来上がりです。

実際にその日の夜から、スクラブを使って洗顔をした参加者たち。「帰国するまでに使い切ってしまうのが悲しい」「顔からカカオの香りがして幸せ」という声が、次々にお風呂から聞こえてきました。

チェンジメーカーのお話に耳を傾け、学ぶ

活動4日目は、ブミセハット国際助産院を訪問し、ロビン・リムさんのお話をお聞きしました。

ロビン・リムさんは、母子に24時間365日無償で医療を提供するブミセハット国際助産院の創設者です。

30代の頃、実の妹さんとそのお腹の子を妊娠合併症で亡くした経験から、助産師を志したロビンさん。自身のライフスタイルを考える中で、新天地を求め、ハワイからバリ島に移り住みました。そこでは、貧困や栄養失調が原因で助かるはずの命が失われる現実を目の当たりにしました。

「このようなことは、絶対に起こってはいけない。世界中のお母さんとその子供に寄り添い『愛』に生きていこう」というロビンさんの思いから、ブミセハット国際助産院は、産科医療を無償提供する助産院として始まりました。その創始者であるロビンさんは、社会課題の解決に取り組み、社会をより良い方向へと導く、いわばチェンジメーカーといえます。

ブミセハット国際助産院は、今やあらゆる人の「駆け込み寺」となり、産科医療の枠を超え、一般医療サービスや、助産師の育成、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に関するワークショップ等のコミュニティ・サービスまで提供しています。

「アイカー。」

参加者たちが、助産院の部屋の中で待っていると、外から名前を呼ぶ声が聞こえました。そして、部屋に入ってきたロビンさんは、参加者の一人である松浪愛果さんに駆け寄り、抱きしめました。

2021年の夏、ブミセハット国際助産院のオンライン研修プログラムに参加したという松浪さん。「以前、オンライン上で会ったね」とロビンさんは、松浪さんとの久々の再会を喜びました。

その一瞬一瞬を優しく見守る人、感極まり、涙が溢れる人。全ての人の愛が溢れ、温かさに包まれた空間が広がりました。

松浪 愛果さん
現在、岐阜県立衛生専門学校助産学科に通う松浪さんは、高校2年生の夏、ロビンさんに憧れて助産師を志しました。きっかけは、SNSに投稿されていた一枚の写真。そこには、ロビンさんの「貧困は、命を諦める理由にはならない」という言葉が記されていました。助産師として、貧困問題に向き合う姿に感銘を受けたといいます。自身の夢や目標でもあるロビンさんに直接会い、助産師の精神や社会問題への関わり方を学びたいという思いから、本プログラムに参加しました。

3月で、4年間通い学んだ日本赤十字豊田看護学校を卒業し、この春からは助産師免許取得という新たな目標に向かって進んでいる松浪さん。自身の今後について「親離れ」と表現しました。

「彼女と同じ道を歩くことで、世界に貢献できる。彼女に頼ってしまっている自分がいた」

「物事に対する姿勢や、物事を観る視点は、全て自分次第だよ」と参加者に語りかけたロビンさん。そんなロビンさんのお話を直接聞くことで、ロビンさんが自身の経験や感じたことをもとに、問題意識を持ち、社会課題に立ち向かっていることを実感しました。これからは、自分の感性や視点を大切にすることで、私らしく社会課題の解決の力になりたいと松浪さんは語りました。

「親は、頼りたくなる存在。迷った時や苦しい時には、出会えた日のことを思い出して『ただいま』と帰りたい。そしていつか、今度は一人の助産師として、ロビンさんと世界の貧困問題や母子の問題についてディスカッションをしたい」

五感を豊かに、感情表現を存分に

ニワトリの鳴き声で目を覚まし、木々の揺れる音に耳を澄ます。自然の旨味が満載のごはんを食べて、ほっぺたをおさえる。満天の星を見ながらシャワーを浴びて、思わず息をのんでしまう。現地の人の温かさに触発されて、みんなでハグをして「ありがとう」を伝え合う——。

バリの自然、文化、人々と触れ合うことを通して、心や表情、感覚、それぞれが抱える想いに変化がみられる仲間の姿がありました。

後編では、活動5日目から最終日までの様子や参加者の経験、感じた想いについて紹介します。

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