レポート&コラム

【withコロナ vol.13】「コロナ時代のボランティア③」~プロスポーツ現場での感染症対策とボランティアとのコミュニケーションについて~

2020年11月4日
その他 スポーツ
【withコロナ vol.13】「コロナ時代のボランティア③」~プロスポーツ現場での感染症対策とボランティアとのコミュニケーションについて~

プロ野球やJリーグなど当初は無観客で再開していたプロスポーツの興行は、次第に観客数の制限を緩和しての開催が進んできました。そんな中、日々試行錯誤を繰り返しながら感染症対策を実施し、中にはボランティア活動も再開するまで至ったプロスポーツチームもあります。

その現場では、スタッフやボランティアに対して、どのような感染症対策を実施しているのでしょうか。試合運営やスタッフ、ボランティアのマネジメントを担当している北海道日本ハムファイターズの鈴木祥平さん、川崎フロンターレの三浦拓真さんを研究会にお呼びし、イベント現場での感染症対策についてお話を聞きました。

(※記載されている内容は研究会を開催した2020年8月11日時点での情報をもとにしています)

検証重ねた独自マニュアル 一丸で対策徹底(北海道日本ハムファイターズの場合)

試合の運営には「スタッフの安全・お客様に楽しんでもらえる環境づくりを意識して、方法を模索している」という鈴木さん。

お話を聞いて一番印象に残ったのは「スタッフや球団関係者の安全・安心を最優先に」という言葉でした。ボランティア活動については、現在中止されているそうですが、コロナ禍において、スタジアム運営を行うためにスタッフ等に対して、どのような感染症対策を実施しているのかを聞きました。

スタジアム運営では、一般社団法人日本野球機構(NPB)のガイドラインをベースに国や自治体、保健所の指針を運営レベルに落とし込んだ独自の対応マニュアルを作成し、検証を繰り返しながら対策を徹底しているとのことでした。

マニュアルには入場時の検温やマスクの着用などの基本的な対策のほか、運営スタッフや観客、メディアなど関係者ごとに導線が細かく決められているなど、具体的な対策が記載されています。他にも安心感を持ってもらうために、球団からスタッフへ積極的に声を掛けるようにして、「しっかりと見守っていますよ」というメッセージを届ける体制づくりをしているそうです。

また、感染症を予防するためには、そこにいるみんなで感染症対策を実施する必要があります。鈴木さんは「球団が感染症対策を徹底している姿勢を示すと、スタッフも一つになって対策を徹底しようという機運が高まる」と実感されていて、まずは運営側が感染症対策を徹底する姿勢を示すことが重要とわかりました。

札幌ドーム内の感染症対策の様子(提供:北海道日本ハムファイターズ)

コロナ禍でボランティア活動をするためには、ボランティアを募集する主催者がガイドラインだけではなく、活動場面に落とし込んで実行できる対策を練ることが求められます。それが十分にできていると、ボランティアは安心して活動ができますね。

また、ボランティア自身も参加する活動でどこにリスクが高いかをイメージしておくと良いかもしれません。マスクを着用した方が良い場面や外しても良い場面など、メリハリをつけた対策をシミュレーションしておくと、無理なく活動することができます。

コロナ禍で活動する上では、感染症に対して不安になることもあると思います。主催者だけではなく、ボランティア同士でも声を掛け合うことで、不安を和らげることができるはずです。お互いを見守り、声を掛け合うという姿勢はこれからのボランティア活動で一層重要になってくると、今回のお話しを聞いて思いました。

そして、感染症対策を実践するためには、率先して行動する人の存在が大切になります。リーダーや経験豊富な人が率先することで、全員が一丸となって感染症対策を実施できるようになるのではないでしょうか。

こまめなコミュニケーションで迅速なボランティア再開へ(川崎フロンターレの場合)

フロンターレでは観客を入れての試合開催に合わせて、7月11日のホームゲームからボランティア活動を再開したそうです。コロナ禍で活動を再開するために、ボランティアとどのようにコミュニケーションをとってきたのかについて聞きました。

フロンターレでは新型コロナウイルスが流行し、試合の開催が中断してからすぐにメールを通じてボランティアとコミュニケーションをとってきたそうです。

「中断期間中もボランティア専用のオンライン用壁紙を配布したり、懇親会を開催したりしたほか、オンラインイベントを企画し、インターネット上でボランティア活動の機会を提供して、コミュニケーションをとり続けてきました」(三浦さん)

そして、Jリーグの再開が決まってからは、チューター(※ボランティアから選ばれた数名の代表者で、クラブとボランティアを繋ぐ役割を担う)と現場での活動について検討を重ねたそうです。オンライン説明会を実施したほか、参加できない人には個別の電話対応をして、今シーズンのボランティア活動に対する説明を全員に行い、感染症対策や活動条件について丁寧に伝えながら参加希望者を募りました。その結果、観客を入れての試合開催と同時に、ボランティア活動を再開することができたそうです。

オンラインイベントの様子(提供:川崎フロンターレ)

三浦さんのお話を聞いて、主催者から感染症対策について十分な情報発信をすることが、ボランティアの安心感につながることがわかりました。また、コロナ禍ではボランティア同士もなかなか会えないため、寂しい思いをしたり、不安に感じていたのではないでしょうか。オンラインを使えばいつでも顔を合わせることができますので、不安の解消だけではなくモチベーションを高めることもできます。コロナ禍でもできる準備を工夫し、取り組んでおくことが、ボランティア活動が再開したときに、これまで以上に楽しめる秘訣だと思いました。

ボラサポ 二宮 雅也 参与 (文教大学准教授)のコメント

コロナ禍においても、先行的にスポーツボランティア活動を再開した川崎フロンターレの取り組みからは、私たちが安心・安全に、そして楽しくボランティア活動を行うヒントがたくさんありました。特に、活動が再開されるまでの間、どのようにボランティアの気運醸成を行うのか。ボランティアオンライン交流会の実施や、そのためにデザインされた壁紙の配布は、まさに時代のトレンドでもあり、素晴らしいアイデアでした。

また、日本ハムファイターズの報告からは、スタッフとのコミュニケーションの重要性が指摘されました。感染症対策を有効にし安心して活動するためには、情報の共有がとても大切になります。具体的な活動場面を想定しながら対策を講じ、それをスタッフに丁寧に伝えていくことで、実効性のある感染症対策となることがわかりました。

自分たちが参加するボランティア活動の主催者と、どのようにコミュニケーションをとりながらボランティア活動に参加するのか。コロナ禍においては、この点がとても重要なポイントになります。

  • TOP
  • レポート&コラム
  • 【withコロナ vol.13】「コロナ時代のボランティア③」~プロスポーツ現場での感染症対策とボランティアとのコミュニケーションについて~