レポート&コラム

災害ボランティア研修 エキスパート編受講生、豪雨災害被災地で実践の場へ

2022年9月27日
災害
災害ボランティア研修 エキスパート編受講生、豪雨災害被災地で実践の場へ

新潟県関川村で復旧活動に従事

2022年8月3日から降り始めた大雨は日本各地で大きな被害をもたらしました。
特に東北、日本海側での被害は大きく、新潟県関川村も被災しました。
関川村は総面積の87.5パーセントが森林に囲まれた山の深い土地。
村の中央に流れる荒川をはじめ、支流が各地に流れています。降り続けた大雨に本流の水位はあがり、支流は流れる先を失い、農業用水路や側溝も水が溢れました。

農業用水や小川からも水があふれ家屋に流れ込んだ
農業用水や小川からも水があふれ家屋に流れ込んだ

床上、床下浸水あわせて約230戸、村の1割以上のお宅に水が入りました。

関川村だけではなく近隣の市町村、また隣接する山形県や秋田県も同時に被災し、おりしものコロナ禍もあって災害ボランティアもニーズに対し十分な人手は確保しにくい状態です。

そんな中、技術系ボランティアと呼ばれる、災害支援活動を専門とする複数のNPOがお互いに調整して各地に入り、専門性のあるニーズに対応しています。壁や床、その中に含まれる水にぬれた断熱材の撤去などの復旧作業、また重機を用いた土砂や流木の撤去などがそれにあたります。

「ぼ活!」では近年の災害の広域多発化にともない、そのような専門性をもつボランティアの育成を目的にした災害ボランティア研修を行っています。

その研修の中でも「エキスパート編」では、特に実践的な水害時の対応方法、使用する工具の使い方などを学びました。

災害ボラセンと連携し、災害ボランティアとして活動へ

8月21日と28日、エキスパート編を受講したボランティアのみなさんとスタッフで関川村へと向い、村の社会福祉協議会が運営する災害ボランティアセンターと連携して実際に現場で被害にあわれたお宅での活動に当たりました。

全員で関川村の災害ボランティアセンターにお邪魔し、使用する道具をお借りし、まずは借りたものの数量把握や確認を分担を決めて行いました。

ここのセンターには、エキスパート編で講師をつとめているNPO「災害救援レスキューアシスト」の川島浩義さんが常駐されており、活動するお宅の状況や対応などのブリーフィングを行っています。。今回、ぼ活!ボランティアが活動した現場には、電気工事士を本業とするメンバーを帯同してくださいました。

関川村災害ボランティアセンターで準備を終え出発

28日の活動では、床上浸水したお宅の壁はがしが、主な活動内容でした。

バスを降り、お宅まで歩く道中にも泥の跡が残り、休憩場所としてお貸しいただいた公民館も床をはいだ状態。隣の広場は仮置き場として災害廃棄物がうずたかくつまれていました。

住民さんたちが自ら片付けを率先して行われており、道行く方々から「ご苦労様」「ありがとうございます」とお声がけをいただきました。

大切なお宅を被災時より傷つけないために、シートによる養生を行う

住人の方にご挨拶をして、活動開始です。玄関と8畳ほどあるフローリング部屋、さらにL字型に伸びる廊下の壁面を撤去していきます。

まずは講習で習った手順を思い出しながらみんなで作業行程を共有します。

床は、住人の方自身もはがすか残すかを悩んでおられる状態なので、残したままとする前提で作業を開始。はがした壁で床を傷つけないように、養生を最初に行いました。

習ったことを思い出し、いちばん大事なことを大切に

養生テープをふちに張り、その上にビニールシートを張ってテープでおさえていきます。

壁はがしや床はがしの場合、その作業に集中するあまり、残しておくほかの部材を傷つけてしまうことがあります。また、作業の効率を求めるあまり、交換しなくてもよい家の部材を取り払ってしまった事例も多々あります。

ボランティアとして大事なことは作業効率よりも住人さんが何を大事とされているか、そのお気持ちを汲み取り、精神的な負荷をかけないこと。そしてなにより安全を第一として作業を進めていくことと、講習でも学びました。

作業を分担して壁はがしを開始
作業を分担して壁はがしを開始

習ったことを思い出しながら養生を丁寧に行い、実際に壁はがしに着手します。

10人が同じスペースで活動するのは危険なため、こちらも担当と手順を決めていきます。

壁をはがす人、運び出す人、外で運び出された壁材を土嚢袋につめて行く人。年代も経験もさまざまに違うみなさんですが、ボランティアとして研修を受け、現地に来られた目的は同じです。
チームとなって動きながら、わからないことや作業内での提案があればみんなで共有し、災害救援レスキューアシスタントのメンバーにも助言を求めながら作業を進め予定通り完了することができました。

仕上げのくぎ抜きまで丁寧に

住人の方もこの先どうしたらよいか思案されている様子でしたが、少しずつ傷んだ部分が除去され、実際に濡れた断熱材や壁の中の様子をご覧になって復旧のイメージが具体的になっておられました。

ボランティアの活動によって、住人の方の復旧復興へ向けた選択肢が増えることが目標の一つです。

習った様々な技術や知識を現場で活かし、住人の方とふれあい、活動することの意味と意義を参加したみなさんが体感した1日でした。

受講生が現地で参加して感じたこと

土井一志さん(57)

災害ボランティアをはじめたきっかけは2011年の東日本大震災からでした。その後も2014年から5年間東北支援に参加していました。

その中でボランティアとして活動するにしても、被災地支援における技術をそれぞれが持っていれば、より効果的な現地支援になるのではないかな、と5年間を振り返って感じました。それがエキスパート編を受講したきっかけです。

エキスパート編と聞いて、正直自分にはハードルの高い講習かなとも思ったりしていました。講習を受けた時には水害にあった家屋の対処法や電気工具の使い方など、こんないっぺんには覚えられないよ、と思ったのも事実です。

それが今回実際に現場に出て活動してみると、1回聞いて実演して身体を動かしていると頭の中に残っていて身体も覚えているんですね。

これはあのとき講師の先生がいってたことだ、とか思い出して自分なりに活かせることができたと思います。これからも続けて受講したいと思います。

何か立派な志というのがあるようなタイプの人間ではないのですが、自分のしたことが何かしら現地の人に役立って喜んでくださるというのが、私も嬉しいです。それが私の人生の活性剤になっていると思います。今回参加して本当によかったです。

塩田勇人さん(23)

私は災害ボランティアに参加したのは、今回がはじめてです。普段は理系の学生で、勉強している技術が社会にどうやったら活かせるのか、ということを考えていました。

災害とは関連のない物理学系の研究なのですが、そうしたことを知るにはやはりまず現場に出てみることだと思って、エキスパート編まで受講しました。

「研修では実践的なことを学んだのだ」と、現場に来て思いました。壁の構造や、中に入っているグラスウールの断熱材のこと、釘の探し方など、仕組みを理解していることではじめての作業でも戸惑いませんでした。

また、被災されたお宅を実際に見て、自分が思っていたよりも広範囲に被害があって衝撃でした。自分にできることならなんでも協力したいという思いが強くなりました。

研修では壁のはがし方も教えてもらいましたが、それを通して被害を受けたお宅に住み続けるという、新しい選択肢を提供するということがそもそものコンセプトだということもメッセージとしてしっかり伝わってきました。

現場でもそこがいちばんの意義だと思えたのは、研修を受けていたからです。自分の目で見て、体験して良い経験となったので、これからも日本全国で活動を続けてみたいと思いました。

28日に参加したぼ活!メンバーのみなさん

日本全国で50年、100年に一度と言われた災害が毎年広範囲に起こるようになっています。
中には連続して被災する地域もあり、災害ボランティアに参加するそれぞれのスキルアップも重要になっています。

ぼ活!では今後もセミナーを開催し、災害が起きた時には、学んだことを実際に現場で活かしてもらえるよう、取り組みを続けていきます。