レポート&コラム

100周年の歴史をつなぐ!東京2025デフリンピックボランティア募集中

2024年12月17日
スポーツ グローバル ダイバーシティ
100周年の歴史をつなぐ!東京2025デフリンピックボランティア募集中

2025年11月15日~26日の12日間にわたり開催される東京2025デフリンピック。

デフリンピックは、英語で「耳が聞こえない」ことを意味する単語の「デフ(deaf)」と、「オリンピック」を組み合わせた名称で、きこえない・きこえにくいアスリート(デフアスリート)が参加する国際的なスポーツ大会です。「きこない・きこえにくい人のためのオリンピック」とも言われています。

世界70~80の国と地域から、約6,000人の選手・関係者が参加する大会で、運営を支えるボランティア3,000人を2025年1月31日まで募集しています。

約3,000人のデフアスリートが参加する「きこえない・きこえにくい人のためのオリンピック」

デフリンピックの歴史は古く、第1回大会は「国際ろう者競技大会」として、1924年にフランス・パリで開催されました。現在の名称である「デフリンピック」は2001年から使用され、オリンピックと同様に夏季大会と冬季大会が2年ごとに交互に開催され、これまでに26ヵ国で夏季大会24回、冬季大会20回が開催されています。
2025年11月に開催される「第25回夏季デフリンピック競技⼤会東京2025(以下、東京大会)」は、第1回大会が開催されてから100周年の節目となる大会で、日本での開催は初めてです。

トルコで開催された2017年サムスン大会に出場した日本選手団

デフリンピックには、補聴器などをつけないで、55デシベル以上の音が聞こえない人が参加しています。多くの競技は、オリンピックのルールと同じですが、きこえない選手のために視覚的保障がされた競技環境が整っていることがデフリンピックの特徴の一つです。
例えば、陸上競技のスタートでは音の他にランプを点灯し合図を知らせたり、バレーボールでは、審判がホイッスルと合わせてネットを揺らして合図を送るなどしています。

陸上競技のスタートランプ
スタートの合図として、ランプの色が赤色から青色に変わる

2022年にブラジルのカシアス・ド・スルで開催された前回大会では、日本選手団は過去最多の30個のメダルを獲得し、東京大会でも活躍が期待されています。

前回のカシアス・ド・スル大会競泳200m自由形で金メダルを獲得した茨隆太郎選手と、銀メダルの藤原慧選手(日本財団ボラセン撮影)
(日本財団ボラセン撮影)

TOKYO FOWARD 2025 WEBサイトでは、茨選手のインタビュー記事が公開されています。その他の競技の選手も数多く紹介されていますので、ぜひご覧ください。
https://www.tokyoforward2025.metro.tokyo.lg.jp/player/ibara-ryutaro/

また、日本財団ボランティアセンターでは、カシアス・ド・スル大会にスタッフを派遣し、ボランティアの活動の様子などを視察し、大会後には大会を振り返るオンラインセミナーを開催しました。その様子は、ぼ活!レポート&コラムで公開しています。
https://vokatsu.jp/journal/deaflympic-report/

開催まで1年を切ったデフリンピックの大会やボランティアに関する情報について、ボランティアの募集業務を担う東京都の遠坂恵美さん(生活文化スポーツ局 国際スポーツ事業部 事業調整第二課 課長代理)にお話しを伺いました。

-東京大会の開催概要を教えてください。

遠坂さん(以下、遠坂):東京大会は、2025年11月15日~26日の12日間の大会期間で、世界70~80の国と地域から選手約3,000人、大会役員や審判など関係者約3,000人の計6,000人程が参加する予定です。

全21競技が、東京都内17会場と、福島県(サッカー競技)、静岡県(自転車競技)の19会場で開催されます。伊豆大島で実施するオリエンテーリングや、ボウリングといったデフリンピック特有の競技もあります

東京大会では、3つのビジョンを掲げています。

1.デフスポーツの魅力や価値を伝え、人々や社会とつなぐ
2.世界に、そして未来につながる大会へ
3.“誰もが個性を活かし力を発揮できる”共生社会の実現

大会の開催を契機に、デフリンピックやデフスポーツへの理解のすそ野を広げ、障害のあるなしに関わらず共にスポーツを楽しみ、互いを尊重しあう共生社会の実現を目指しています。

今回募集しているボランティアでも、障害のあるなしや年齢、手話言語の技能等に関わらず多くの方々にご参加いただきたいという思いを持っています。

デフリンピック開催期間中のカシアス・ド・スルの街中の様子、街のいたるところでデフリンピックの装飾が見られた(日本財団ボラセン撮影)

障害のある・なしに関わらず 誰でも参加できるボランティア

-ボランティアの募集について、まずは募集人数や活動期間を教えてください。

遠坂:募集人数は約3000人で、活動期間は大会前後を含めた、2025年11月10日から11月28日の間で、基本的に3日以上、1日当たり5時間から8時間程度の活動を予定しています。

-応募にあたっての要件はありますか?

遠坂:応募要件は3つあります。

1.2025年4月1日時点で18歳以上の方
2.活動期間中において、日本国籍または日本に滞在する資格を有する方
3.各種研修への参加が可能なこと

これまで「きこえる人しか応募できませんか?」「手話ができる人しか応募できませんか?」というお問い合わせを多くいただいていますが、障害のあるなしや年齢、手話言語技能についての要件はありません。

また、各種研修についても、よくお問い合わせをいただいています。

活動前に3つの研修を受けていただきます。

1つ目は、大会の概要やボランティア活動の基本について学ぶ「共通研修」。2つ目は、簡単な手話表現の習得やろう者の文化等の理解を目指す「手話言語研修・ろう者の文化等理解研修」。3つ目は、活動場所や役割に応じた活動内容に関する「配置・役割別研修」です。

「共通研修」・「手話言語研修・ろう者の文化等理解研修」はオンラインのオンデマンド形式(日本手話言語通訳、日本語・英語字幕あり)の実施を予定しており、みなさんのご都合に合わせて受講していただけます。

-障害のある方が、ボランティアとして参加するときの配慮やサポートにはどんなものがありますか?

遠坂:活動にあたって配慮が必要な方は、申込時に必要となる具体的な配慮事項を記載いただければ、活動場所等を決める際に参考とさせていただきます。
また、介助者を伴っての参加も可能で、申込時に介助者の方の登録も一緒にしていただくことができます。

今大会は、多くのきこえない方もボランティアとして、参加していただくことが想定されます。

そのために、事前研修の動画には、字幕や手話による表現を取り入れたり、活動現場では音声文字化技術や多言語翻訳アプリ等のユニバーサルコミュニケーション技術を活用するなど、手話ができるできないに関わらず、多様な方々が一緒に安心して活動できる環境を整えたいと思っています。

カシアス・ド・スル大会で活動したボランティア。きこえる人、きこえない人、手話ができる人、できない人、様々なメンバーが支え合いながら笑顔で活動をしていた。(日本財団ボラセン撮影)

幅広い活動内容で、ボランティアが大会を支える

-ボランティアの活動内容や活動場所を教えてください。

遠坂:ボランティアの方には、東京都、福島県、静岡県の19の競技会場や「デフリンピックスクエア」の他、成田空港、羽田空港等で活動いただく予定です。
「デフリンピックスクエア」とは、大会期間中、運営や輸送、選手同士の交流など様々な機能を集約した拠点となる場所で、「国立オリンピック記念青少年総合センター」に設置されます。
活動場所については、申込時に活動可能エリアを選択してください。

活動内容としては、各会場等における選手・観客・関係者の案内・誘導を中心として、ドーピング検査や表彰式の運営の補助、ミックスゾーンにおける広報・メディアの誘導、手話言語の技能を生かして運営など各種業務のサポートを等をしていただく活動もあります。

主な活動内容
・会場における選手・観客・関係者の案内・誘導、選手等の輸送に係る誘導
・各会場での運営サポート(入場者管理、会場内清掃等)
・ドーピング検査補助
・表彰式等の運営補助(表彰式準備、選手誘導、物品の配付等)
・広報・メディアサポート

ぼ活!で募集した「ジャパンデフバレーボールカップ」のボランティアも、審判員やトレーナの手話によるサポートを行った

-手話ができる方は、どのように申告すれば良いですか?

遠坂:応募フォームに、使用可能な手話言語を入力する項目があるので、そちらで登録してください。

国によって言語が異なるように、手話にも各国の手話言語があります。デフリンピックでは、手話の世界共通語として作られた「国際手話」が公用語として使用されています。日本手話言語だけではなく、国際手話、その他の手話言語が使用できる方は、ぜひ応募時に登録してください。

また、手話言語だけではなく、英語や外国語のスキルについても登録をお願いします。
デフアスリートは、競技中は補聴器などをつけませんが、競技以外の生活面では補聴器を付けてコミュニケーションを取る方もいます。選手の移動中などに、英語などでの対応をしていただく機会もあると思いますので、手話以外の言語のスキルや資格についても、ぜひ入力してください。

応募時に登録していただいた内容は、大会運営組織で活動場所、内容等を決める際に参考とさせていただく場合があります。

共生社会の実現への第一歩を

-デフリンピックのボランティアを通じて得られる体験や学びはどんなものがありますか?

遠坂:日常生活できこえない方と接する機会がない方は、初めはコミュニケーションに不安を感じるかもしれません。私自身も最初は、どのように接したら良いのか、どのようにしたら伝わるのか不安でした。しかし、次第に表情、身振り手振りなどで伝わることがたくさんあることがわかりました。

「共生社会の実現」という言葉にすると難しいことのように感じますが、こういったコミュニケーションを通じて一緒に笑ったり楽しんだりすることが「共生社会の実現」への第一歩だと思います。

東京大会に参加していただくことで、多くの方にそのことを実感してもらいたいです。

私が、受講した手話の研修では「表情で伝える」ことが一番大切だと教えられました。デフアスリートの方からも、笑顔や一生懸命な姿勢に勇気づけられるというお話を聞きました。きこえる・きこえない、手話ができる・できないに関わらず、ボランティアの方には前向きな気持ちを持って積極的にコミュニケーションをとりながら活動に参加していただきたいです。

カシアス・ド・スル大会のマスコット(日本財団ボラセン撮影)

東京2025応援アンバサダー 川俣郁美さんからのメッセージ

日本財団ボランティアセンターでは、東京大会の開幕1年前を記念したオンラインイベント「開催1年前!特別企画~デフリンピックとボランティア~」を2024年11月25日(月)に開催しました。

当日は、700名の方にご参加をいただき、ゲストには、東京2025デフリンピック応援アンバサダーの川俣郁美さん、デフバレーボール女子日本代表の長谷山優美選手、デフスポーツ国際大会のボランティア経験者2名をゲストにお迎えしました。

イベントでは、二宮雅也先生(日本財団ボランティアセンター参与、文教大学人間科学部人間科学科教授)にファシリテートしていただき、大会の情報からデフリンピックやデフスポーツの魅力を深堀し、東京大会のボランティア活動を楽しむコツを紹介しました。

イベントの中で、川俣さんからボランティアへの期待についてお話いただきました。

川俣:東京2025デフリンピックにとって、ボランティアは「大会の顔」です。世界中から集まる選手や観客が最初に出会うのがボランティアの皆さんです。

手話や英語といったスキルが役立つ場面もあると思いますが、最も大切なのは「この大会を成功させたい!」「サポートしたい!」という気持ちです。その気持ちがあれば、コミュニケーションが上手く伝わらない時があっても、伝わるまで頑張ることができ、最後は必ず伝わります。

大会では、共生社会の実現を目指しています。様々な特性を持った人々が大会に参加していただくことで、目標の実現につながるだけではなく、多くの人々が新しい発見をしたり、新たな学びを得ることに繋がります。ぜひ、様々な方にボランティアとして応募いただきたいです。

2025年はデフリンピック100周年の記念すべき年です。一緒に次の100年につながる、素晴らしい大会を作り上げましょう。

東京2025アンバサダーの川俣郁美さん(中央)と、イベント登壇者

日本財団ボランティアセンターでは、初心者から経験者まで様々なレベルに合わせて楽しみながら手話を学ぶ4種類のセミナーを定期的に開催しています。
デフリンピックのボランティアに興味を持たれた方は、ぜひ、ぼ活!手話セミナーにもご参加ください。

「ダイバーシティ」をテーマにしたセミナー/イベントの検索はこちらから(過去の開催分も含めて表示されます)

デフリンピックのボランティア募集については、「スポーツTOKYOインフォメーション」で募集しています。
https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/tokyoforward2025/deaflympics2025-volunteer/

また、大会に関する情報は、東京都や全日本ろうあ連盟が運営する以下のサイトでも紹介されています。ぜひ、ご覧ください。

▼Tokyo Forward 2025▼
https://www.tokyoforward2025.metro.tokyo.lg.jp/

▼東京2025デフリンピック 大会ポータルサイト▼
https://www.deaflympics2025.com/

東京2025デフリンピック ボランティア募集概要

活動期間:
2025年11月10日(月)から11月28日(金)までの期間を予定
※1日5~8時間程度、原則3日以上活動

活動場所:
競技会場(都内区部・市部・伊豆大島、福島県及び静岡県)、デフリンピックスクエア(国立オリンピック記念青少年総合センター) 、開閉会式会場、空港(成田、空港)など

募集期間:
2024年11月15日(金)10時から2025年1月31日(金)23時59分まで

募集人数:
約3,000人

募集条件:
・2025年4月1日時点で満18歳以上の方
※応募時に17歳以下である場合は、保護者の方の承諾が必要です。
・活動期間中において、日本国籍又は日本に滞在する資格を有する方
・各種研修への参加が可能であること

応募方法:
ウェブ応募のみ
https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/tokyoforward2025/deaflympics2025-volunteer/

問合せ先:
<ボランティアの活動内容に関すること>
東京都生活文化スポーツ局国際スポーツ事業部事業調整第二課
S1120906@section.metro.tokyo.jp

<応募フォーム(LoGoフォーム)の操作方法に関すること>
東京都Logoフォームヘルプデスク
電話:0120-711-123(平日の午前9時から午後5時 ※12月29日~1月3日を除く)
問合せフォーム:
https://logoform.jp/form/r8U7/597992

<応募手続きの内容に関すること>
東京都生活文化スポーツ局スポーツ総合推進部スポーツレガシー活用促進課
S1120716@section.metro.tokyo.jp

※デフリンピックのボランティア募集は東京都生活文化スポーツ局で実施していますが、大会の準備運営は、(一財)全日本ろうあ連盟 デフリンピック運営委員会 及び(公財)東京都スポーツ文化事業団 デフリンピック準備運営本部が担っています