学習支援ボランティアとは?

学習支援ボランティアとは、教育現場や地域社会で、子どもたちに勉強を教えるなどの支援を行うボランティアのことです。子どもたちにとって、学びの場として機能するだけでなく、学校以外での新たなつながりや居場所を提供する役割も果たしています。
学習支援ボランティアが行われる背景
学習支援ボランティアが必要とされる理由には、以下のような背景があります。
家庭の経済的理由から生まれる教育格差を防ぐ
経済的に厳しい家庭の子どもたちは、塾や家庭教師を利用する機会が限られるため、学習面でのサポートが不足しがちです。学習支援ボランティアは、そのような教育格差を是正するための活動として子どもたちに無償で勉強を教えています。
学校以外の居場所をつくる
学習支援を必要とする子どもたちの中には、周囲の学習レベルについていけないなど、学校という環境にうまく馴染めない子もいます。学習支援ボランティアは、一人ひとりに寄り添い、子どもたちが自分のペースで安心して学習を進められるよう支援します。
教育体制が整っていない国や地域を支援する
開発途上国では、教育体制が整わず、学びの機会が限られている地域も少なくありません。学習支援ボランティアの中には、そのような国で生きる子どもたちの未来が閉ざされることのないよう、学習や交流の機会を与える海外ボランティアの活動もあります。
学習支援ボランティアの活動ケースとそれぞれの活動目的について

学習支援ボランティアには、いくつか活動ケースがあります。ここでは、代表的な活動の概要と活動目的を紹介します。
学習支援教室でのボランティア活動
学習支援教室は、各家庭の経済的な事情やひとり親世代などを理由に子どもたちが夢や可能性を諦めることのないよう、均等に学びの機会を与えるために運営されています。運営団体は行政とNPO法人があり、団体によって支援内容は異なります。勉強を教えるだけでなく、一緒に食事をしたり、遊んだり、ものづくりやスポーツなどのプログラムも実施されています。ボランティア向けに研修を行う団体もあるため、参加を迷っている人は募集要項を確認してみると良いでしょう。また、学習支援教室は、日本に住む難民の子どもたちを対象に開かれる場合もあり、内戦などの影響で母国を離れた子どもたちに対しても平等に教育の機会を与える重要な役割を果たしています。
フリースクールでのボランティア活動
いじめや、外国籍での言語の壁など、さまざまな理由で学校に通えない子どもたちを対象に学習支援を行うケースです。NPO法人や個人、ボランティア団体が運営しており、学習指導はもちろん、子どもたちにとって安心できる居場所としても重要な役割を果たしています。中には、勉強をするだけでなく、ただ話をしに来る子どもも。子どもたちの心のサポートが求められる場面が多いことは、フリースクールの特徴と言えるでしょう。
海外で学習支援をするボランティア活動
学習支援ボランティアの中には、日本国内にとどまらず、海外の子どもたちに対して学習支援を行う活動もあります。このボランティア活動は、貧困問題や教育に課題を抱える国で、子どもたちの学びや意欲を引き出す支援を行うことが目的です。日本財団ボランティアセンターで行ったボランティアの事例も、このケースに当てはまります。後ほど、実際の活動内容やボランティア参加者の声を紹介します。
学習支援ボランティアによって得られるメリットは?

学習支援ボランティアは、子どもたちの学びをサポートするだけでなく、ボランティア参加者自身にとっても多くのメリットがあります。ここでは、ボランティア活動を通して、向上するスキルや得られる経験を見てみましょう。
社会的なスキルを伸ばすことができる
学習支援ボランティアで求められる力のひとつに、「子どもたちにわかりやすく教える力」があります。試行錯誤しながら子どもたちに勉強を教える中で、自然と「伝える力」が磨かれ、言語化能力が向上するでしょう。特に、相手の理解度に合わせて説明するスキルは、社会に出た後も役立つ重要な能力のひとつです。そのため、社会に出る前にそれを実践できる学習支援ボランティアは、とても貴重な経験だと言えます。
コミュニケーション能力が向上する
どの種類の活動にも共通することですが、参加する子どもたちは、それぞれに異なる背景や事情を抱えています。また、性格もさまざまです。学習支援ボランティアは、そのような子どもたち一人ひとりに寄り添ってコミュニケーションを取る必要があります。子どもたちと接する中で、相手の気持ちや状況を読み取り、適切に対応する柔軟性が養われていくでしょう。また、相手の話をしっかりと受け止めながら対話することで、傾聴力や共感力といったスキルも向上します。
自分自身と向き合うきっかけになる
学習支援ボランティアでは「人に勉強を教える」という経験をするだけでなく、子どもたちや海外の人たちと関わる中で、これまで身近でなかった社会的な課題に直面することがあります。そうした新しい視点や知識に触れることで、自分の考え方や価値観を見つめ直す機会になるでしょう。特に、教育関連の仕事を志望している学生にとっては、実際の教育現場を体験することで、「自分は教育を通して何を成し遂げたいのか?」という将来のビジョンを深く考えるきっかけにもなります。
子どもたちのパワーを受け取り、日々の活力になる
学習支援ボランティアを通して得られるメリットは、技術的なスキルだけではありません。子どもたちの笑顔や純粋な言葉に触れ、ボランティア自身が日々の活力をもらうこともあるのです。働きながら学習支援ボランティア活動を行う人の中には、「子どもたちの笑顔からは元気をもらえて、仕事の疲れも忘れられる」といった声もあがります。日々の活動の中で、子どもたちの成長を感じたり、喜びを共有できることは、学習支援ボランティアならではの魅力のひとつです。
【体験談】東ティモールでの学習支援ボランティア

日本財団ボラセンでは、2024年10月と11月に、東ティモールの子どもたち対象の「子どもと未来を創るソーシャルアクションキャンプ in 東ティモール」を開催しました。このボランティアのプログラムには、学習支援ボランティアも含まれています。ここでは、実際の活動内容と、参加した学生ボランティアの感想をご紹介します。
ボランティア活動の内容
アジアで最も新しい国のひとつである東ティモールは、十分な教育体制が整っておらず、さまざまな課題を抱えています。こうした状況の中、日本財団ボラセンは2回にわたって合計約20名の学生を現地に派遣し、ボランティア活動を実施。現地のフリースクールを訪問し、学生たちが自分の得意分野を活かした授業を行い、子どもたちに学ぶ機会を提供しました。また、活動は座学だけではありません。子どもたちとスポーツなどを通して交流を深める時間も設けられるなど、さまざまな形でコミュニケーションを図りました。時には現地の子どもたちから、東ティモールの言葉を教えてもらう場面もあり、学生ボランティアにとっても文化の違いに触れる貴重な機会となりました。



子どもと未来を創るソーシャルアクションキャンプ in 東ティモール 第1陣
子どもと未来を創るソーシャルアクションキャンプ in 東ティモール 第2陣
※現在は募集を終了しています
東ティモールのボランティアに参加した学生の声

東ティモールを訪問し、実際に学習支援ボランティアを経験した学生たちはどのように感じたのでしょうか。感想を紹介します。
「自分のものの見方や価値観はさまざまあるうちのひとつに過ぎないと実感を持って学ぶことができました。これは、今後さまざまな人と関わる中で生かすべきことだと思います」
「折り紙でコマを作る授業があったが、もっと簡単なものにすれば良かったです。折り紙をした経験がないことや、小学校低学年以下で指先が器用でないことを考慮し忘れていました。授業をする相手の特徴について調べて教える必要があると感じました」
また、自身の今後のキャリアについて考えを深める学生ボランティアもいました。
「自分は教育に興味があって、それを職にしたいとは思っていたものの、具体的なところまでは定まっていませんでした。しかし、今回のプロジェクトに参加し活動したり、友人と振り返っていく中で自分の本当にしたいことや自分が得意なことなどが少しずつ分かるようになりました」「教員を目指している方であれば、異国での教育経験は教師としての圧倒的な自信になると考えます」
他にも、東ティモールでの学習支援ボランティアを行う中で、都市部と農村部での子どもたちの理解力や感性の違いを感じたという学生もいました。開発途上国において平等な教育機会が実現されるためには、単に制度やサービスを整備するのではなく、それらを受け取る子どもたちの生活の背景や文化を考慮する必要があることが伺えます。
海外で行う学習支援ボランティアは、異なる国の教育文化に直接触れることができるので、より広い視野が養われます。募集があった際にはぜひ参加を検討してみてください。
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学習支援ボランティア活動の選び方

自分の生活スタイルに合う活動を選ぶ
学習支援ボランティアの活動日数は、週に1回の参加が必須とされる活動から、月に1回程度のもの、半年から1年間継続的に参加するプログラムなど、さまざまです。年齢制限や参加資格が設けられている場合もあるため、募集要項に書かれた参加条件を事前にしっかり確認するようにしましょう。
さらに、地域によって実施されているボランティア活動の内容は異なります。学校や仕事をしながらボランティア活動に励む場合は、無理なく通える範囲か考慮することも重要なので、まずは、自分が住んでいる地域を調べてみましょう。説明会に参加することで、ボランティア活動の詳細が分かり、学校や仕事といった日常生活との両立についてもイメージがわくはずです。
目的に共感できる活動を選ぶ
子どもたちは一人ひとりそれぞれの背景を持っています。学習サポートだけでなく、信頼できる大人とコミュニケーションを図ることで、子どもたちの心のサポートを目的としている支援場所もあります。まずは、自分がどのような子どもたちを支援したいのかを考えてみましょう。共感できるプログラムを選ぶことで、ボランティア活動に参加する意義を感じながら、より充実したボランティア経験が得られるはずです。
貢献できる活動を選ぶ
学習支援を必要とする子どもたちは、特定の科目を学びたい子どももいれば、学習そのものに苦手意識がある子どもなど、多種多様なニーズを持っています。その分、ボランティア側に求められるスキルもさまざまです。
自分の得意な科目やスキルを活かせる活動を選ぶことで、より効果的に教えることができるだけでなく、自分自身も自信を持って参加することができるでしょう。また、「子どもと一緒に何かを達成したい」という気持ちがあることも、大切な貢献の要素です。子どもたちとともに、成長し喜びを分かち合える活動を選ぶことで、ボランティアとしてのやりがいも一層高まるでしょう。
学習支援ボランティアを行う際の心がけ

子どもたちの「学習進度」に沿って教える
子どもたちの学習の進度は異なるということを意識して、一人ひとりのペースを尊重し、無理なく理解できるようにサポートすることが重要です。
その際、決して否定的な言葉をかけてはいけません。できないことばかりに目を向けるのではなく、できたことを認めながら勉強を教えるよう意識しましょう。
子どもたちの「参加しやすさ」に気を配る
学習支援を受ける子どもたちの中には、周囲のペースについていけず学校の授業で取り残されてしまう子どももいます。学習支援の場ではそのような子どもたちも置いてけぼりにしないため、ボランティア側が積極的にコミュニケーションを取り、学習に参加しやすい雰囲気を作ることがとても大切です。
例えば、「はい」や「いいえ」で答えられる質問だけでなく、子どもたちが自分の考えを言葉にできるような対話を取り入れるなど、子どもの理解度を確かめながら次に進めましょう。また、冗談を交えるなど、学習を楽しんでもらえるよう働きかけることも、子どもたちに教える上では重要な視点です。試行錯誤して教えた末に、子どもたちが楽しんでくれたり理解できた様子を見ると、ボランティア自身も大きな達成感を味わうことができるでしょう。
子どもたちの「ロールモデル」になる
学習支援ボランティアでは、ただ勉強を教えるだけでなく、子どもたちにとって身近な「ロールモデル」になることも重要です。
学習支援ボランティアの参加を検討している人の中には、解き方や答えがわからないことに不安を感じている方もいるかもしれません。そのようなときも、悩みながら一生懸命考えたり、他のボランティアに聞くような姿勢を見せることで、子どもたちはその姿から学んでいきます。もちろん答えを正確に伝えることも大切ですが、完璧にこなす必要はありません。子どもたちと一緒に取り組んでいくことで、周囲の人と協力して答えを導く大切さや諦めない心が伝わるとよいでしょう。
勉強を教えるだけではない学習支援ボランティア
学習支援と聞くと「勉強を教えること」がボランティア活動の中心と思われがちです。もちろんその活動も重要ですが、それだけではありません。子どもたちにとって、学校以外にも安心できる場所を提供したり、コミュニケーションを通じて心の支えや成長の機会を与えることも、学習支援ボランティアが必要とされる大きな理由です。
また、子どもたちのみならず、学習支援ボランティアの参加者自身にとっても多くの学びや成長につながります。生活を送る上で大切なスキルを身につけたり、新しい価値観に触れることで、自分自身を見つめ直す機会にもなるでしょう。
学習支援ボランティアに興味を持っている方は、子どもたちの役に立てそうな活動を探してみてください。まずは説明会に参加してみてはいかがでしょうか。
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参考資料
・東京ボランティアレガシーネットワーク”子どもたちの「できる」に寄り添う学習支援ボランティア【キッズドア】”https://www.tokyo-vln.jp/learn/hint/161926 (参照2025‐02‐28)
・PRTIMES”海外ボランティアプログラム 学生ボランティア募集「子どもと未来を創るソーシャルアクションキャンプ in 東ティモール」”https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000098085.html (参照2025‐02‐28)