ボランティアの基礎知識

傾聴ボランティアとは何か。活動内容や意義を紹介

2025年2月6日
災害 医療・福祉
傾聴ボランティアとは何か。活動内容や意義を紹介

傾聴ボランティアとは

被災者の話に耳を傾けるボランティア

まず傾聴とは何でしょうか。
傾聴とは「耳を傾けてきくこと、熱心にきくこと」です。つまり相手を尊重し、聴くことに徹します。
そうした傾聴をするボランティアの活動は、人の気持ちに寄り添い、その人の話を否定することなく、受け止めて「聴く」心のケアになります。

話を聴く対象者は様々ですが、傾聴ボランティアは、大きく「日常の傾聴ボランティア」と「被災地での傾聴ボランティア」の2つのシーンに分類することができます。

日常の傾聴ボランティア

日常の場での傾聴ボランティア活動とは

日常の傾聴ボランティアは、人と話す機会の少ない方の話し相手になったり、孤独感や悩みを抱える方に寄り添う活動です。
主に孤独になりがちな病院や施設利用者、独居世帯の高齢者のほか、子育て中の方、障害のある方、周りに悩みを打ち明けられない子どもなどが傾聴ボランティアの対象となります。

日常の場での傾聴ボランティアの意義

傾聴ボランティアの活動意義は、話を聴く相手の心のケアです。
ただ話を聴いてもらうだけかと思いがちですが「傾聴」されることで、気持ちがスッキリと軽くなったり、自己肯定感が上がるといった効果も得られます。

また、内閣府の「高齢者の健康に関する調査」(平成29年度)によると、家族や友人との会話が多いほど、高齢者自身が主観的に感じる健康状態が良いことがわかりました。

しかし、ほとんど毎日会話をするのは単身世帯の半分程度という実態も分かっており、傾聴ボランティアの意義はこうしたところにもありそうです。
また、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所によると、社会的な孤立は高齢者に限らず、全ての世代の健康に悪影響を及ぼすとのことです。

子どもの気持ちを聴くことで、子どもが自分で考え自立することを支援する「チャイルドライン」というサービスでも傾聴ボランティアが活躍しています。
チャイルドラインには、毎年18万件以上の電話やチャットが寄せられています。主な内容は、「いじめ」や「虐待」「希死念慮(生きたくないと考えたり、死ぬことを想像したりすること)」に関する悩みだといいます。
そういった話を、子どもの気持ちに寄り添いながら耳を傾けることも、傾聴ボランティアの活動です。

ここまで読まれたところで、傾聴ボランティア活動への参加にハードルの高さを感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、傾聴ボランティアは難しいことではなく、普段私たちが誰かの話を真摯に聞いている感覚に近いのかもしれません。
傾聴ボランティアの養成講座やセミナーは各地で実施されているので、興味のある方は一度受講いただくことがおすすめです。

被災地での傾聴ボランティア

被災地での傾聴ボランティアと意義

被災地では、過酷な経験をする人が多くいます。心身ともに疲弊し心のダメージを負う方も少なくありません。傾聴ボランティアでは、被災した方々の話を聴き心に寄り添うことで不安を軽減し、安心感をもたらすことにつながります。

被災地での傾聴ボランティアに必要な姿勢、心構え

東京都立(総合)精神保健福祉センターの「災害時『こころのケア』の手引き」によると、支援者が傾聴活動を行う被災者の心理状態は災害後に4つの段階を推移します。

発災直後の呆然とした状態(①茫然自失期(災害直後))、復旧復興のため被災者同士で連帯感が生まれる(②ハネムーン期)、疲れや忍耐が限界に達し不満が噴出する(③幻滅期)、復旧が進み生活のめどが立ち始める時期(④再建期)です。

被災者それぞれが必ずしも同じ経過をたどるわけではないですが、こうした感情の浮き沈みが見られることには留意が必要です。

被災地で傾聴を行うにあたって、被災者に無理に話を聞き出そうとすることは控えた方がいいでしょう。見ず知らずの人にいきなり心情を打ち明けることができるのは一部の人に限られます。日常的な挨拶や声掛けを重ね、被災者側から話し出すまで継続的な関わりを持ち続けることが重要です。

また、傾聴活動全般に言えることですが、聴くことがメインであるので、聞き手側が自分の意見を押し付けたり、批判したりすることは避けましょう。
被災者とのコミュニケーションでは、生活再建を願う姿勢が重要です。口で伝えるだけでなく、話しやすい雰囲気を作るための工夫も重要になります。

傾聴ボランティアから得られるメリット

傾聴ボランティアでは、自分とは違う年代の相手の話を聴くことがあります。そういったケースでも相手との関係性を築き、相手の話に耳を傾け「傾聴力」を養うことは、コミュニケーション能力の向上にもつながります。

被災地を支える傾聴ボランティアの実例

手をさすりながら足湯に浸かる被災者の話を聴くボランティア

では、被災地を対象にした傾聴ボランティアの活動事例とはどのようなものなのでしょうか。

【KOBE足湯隊】足湯での傾聴ボランティアの活動内容

被災者に足湯に浸かってもらいながら傾聴を行うKOBE足湯隊という学生災害ボランティア団体があります。2007年の能登半島地震をきっかけに発足しました。

足湯ボランティアでは、足をお湯に10~15分ほど浸けてもらい、手をさすります。その間、1対1で会話。足湯に浸かり、のんびりした空間を作ることで、肉体的な疲れやストレスを少しでも解消し、会話の中で被災者がつぶやく内容から求めているニーズをつかんでいきます。

傾聴活動で分かった被災者女性の悩み

ボランティアは全くのよそ者であるため、周りに聞かれたり、漏れてほしくない悩みを聞いてもらえることも良さだといいます。

このKOBE足湯隊を事業内容の一つとしている、被災地NGO協働センター(兵庫県神戸市)代表の頼政良太さんは、被災時のボランティアの役割は「生きる力を取り戻す」ための支援を行うことと定義します。そのうちの一つが「足湯ボランティア」です。

手順としては、足湯ボランティアを行ったボランティアは、終了後に覚えている範囲の会話の内容を「つぶやきカード」と呼ばれるシートにまとめます。

このつぶやきをまとめていくことで、それぞれの被災者の抱えている悩み、本音や被災地の現状、隠れたニーズに気づくことができるようになります。

頼政さんによると、ある被災地で傾聴した高齢女性は、避難所の弁当が揚げ物ばかりであることにつらさを感じ、生野菜や刺身が食べたくなったということでした。

そうした事情もあり、親戚が刺身を持参してきてくれました。しかし、不特定多数の人がいる避難所で1人だけ食べることははばかられると感じ、トイレの中で食べたという話があったそうです。

悲しみは時間の経過で消えない

2011年の東日本大震災の際には、足湯ボランティアを通じて得た「つぶやきカード」が1万6千枚ほど集まりました。

震災の悲しい体験談を話す方がどれくらいいるのかを、発災直後から1年半にわたってまとめました。その割合は大体25%と、横ばいで変わらないという結果だったそうです。悲しい出来事は時間の経過によって減るわけではないことが明らかになったといいます。

ボランティアが関わる中で変わることができた被災者の話

ボランティアが関わることで、被災者の心のケアにつながったケースがあります。

被災地NGO協働センターでは阪神淡路大震災以降、被災者に手芸でゾウのぬいぐるみづくりをしてもらい、販売した売上金の一部を被災者の収入にするという取り組みを行ってきました。

一例をご紹介します。

ボランティア団体は、2011年の東日本大震災後、岩手県陸前高田市の仮設住宅に住んでいたある女性に出会いました。女性は震災で夫を亡くし、出会った時はうつ病にかかっていたといいます。

そこでその女性にも2週間に1回、話をしながら手芸を始めてもらうことになりました。
活動を続けるうち、少しずつ女性の表情が変わるようになり、最初は髪もぼさぼさで服もパジャマでしたが、髪も服も整えるようになっていきました。女性は「ゾウを作るのが楽しくて、うつになっている暇がないのよ」と話してくれたそうです。

【日本財団ボランティアセンター】足湯と傾聴活動

日本財団ボランティアセンター(日本財団ボラセン)では、能登半島地震の発災直後の2024年1月4日からスタッフが現地入りし、17日からは第1陣がボランティアにあたりました。

その活動の中に、足湯と傾聴も含まれていました。

日本財団ボラセンが足湯を行った避難所では、断水が続いて、仮設風呂も整備されておらず、定期的に入浴ができていないことから、最初は足湯を遠慮される方もいましたが、ボランティアが声を掛けると徐々に利用していただける方が増えていきました。

ある男性の方は「足湯を利用した翌日は、朝までよく眠れた」と2日連続で利用していただきました。またある女性は、お湯に入れるアロマにラベンダーの香りを選ばれると、珠洲市には以前ラベンダー畑があったことをお話してくれました。

能登半島地震でのボランティアの様子の詳細はこちら

傾聴ボランティアの参加方法

参加を希望される方は、ボランティアセンターやNPO法人などに問い合わせてみてください。

資格が必要ということはありませんが、傾聴の方法に関して講習などが行われています。こちらもお住まいになられている場所の近くで行われていないかインターネットなどで調べてみてください。

まとめ

傾聴ボランティアは、幅広い年代、境遇の人から必要とされているボランティアです。話を聴くだけと思う人もいるかもしれませんが、その聴く力によって救われる人は多くいます。少しでも興味を持った方はぜひ、参加を考えてみてはいかがでしょうか。

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参考資料

・東京ボランティアレガシーネットワーク”活動のヒント:高齢者と社会の架け橋に 傾聴ボランティアの役割とは”https://www.tokyo-vln.jp/learn/hint/51659(参照参照_09_06)

・内閣府”平成30年版高齢社会白書(全体版)”https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_3_2_1.html(参照参照_09_06)

・特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター”チャイルドラインとは”https://childline.or.jp/supporter/cl_center (参照参照_09_06)

・地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所”<プレスリリース>社会的孤立は、全ての世代の健康に悪影響を及ぼす 高齢者の精神的健康維持には対面接触がベスト、非対面接触のみは次善の策” https://www.tmghig.jp/research/release/2022/0318.html (参照参照_09_06)

・東京都福祉局”災害時「こころのケア」の手引き”https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/chusou/joho/rifuretto.files/R5saigaitebiki.pdf(参照参照_09_12)・仙台市”仙台市災害時地域精神保健福祉ガイドライン (内部職員向け)第4章~第6章(PDF:5,393KB”https://www.city.sendai.jp/seshin-kanri/kurashi/kenkotofukushi/kenkoiryo/sodan/seshinhoken/heartport/saigaimentalu/documents/saigai-gl3-3.pdf (参照参照_09_06)

・内閣府”避難生活支援を担う地域人材の育成について 令和5年度講師養成研修受講者⼀覧 令和5年度研修テキスト”https://www.bousai.go.jp/kyoiku/bousai-vol/pdf/231005_kenshu04.pdf (参照参照_09_06)

・株式会社ベネッセi-キャリア”コミュニケーションの秘訣は「傾聴力」にあり!うまく取り入れるコツや注意すべきポイント”https://campus.doda.jp/career/job/000039.html (参照参照_09_06)

・被災地NGO協働センター”足湯ボランティア”http://ngo-kyodo.org/ashiyuvolunteer/ (参照参照_09_06)

・日本財団ボランティアセンター”【能登半島地震】 災害ボランティア活動を開始” https://vokatsu.jp/journal/20240129/ (参照参照_09_06)