ぼ活!で募集した初のボランティア活動「【復興×農業】幻のフルーツを収穫! in ふくしま」が、11月5~7日に行われました。関東近郊を中心に集まった14人の多様なメンバーが2泊3日で福島県いわき市を訪れ、笑顔と学びあふれるボランティアを行いました。今回は、活動1日目の11月6日の様子をレポートします。
幻のフルーツ、フェイジョアを収穫
前日の夜、東京からバスでいわき市に移動したボランティアのみなさんとボラサポ、そしてプログラムに協力いただいた「Gakuvo」(日本財団学生ボランティアセンター)スタッフは、朝9時に丸山雄三さんご夫妻が営む「ゆうゆうファーム」に到着しました。最初の活動はフェイジョアの収穫です。
フェイジョアは南米ウルグアイ原産の果物。キウイフルーツ大、80~90gくらいの緑色の実で、大きなものは100gを超えます。丸山さんはニュージーランドでフェイジョアに出会い、花の美しさと実の芳香のとりこに。フェイジョア農家になるためにいわきへ移住し、無農薬での栽培に長年取り組んできました。日本では珍しい果物ですが、最近では、将棋の竜王戦がいわきで行われた際に藤井聡太さんと豊島将之さんがおやつにそろってフェイジョアのお菓子を食べたことで話題になっています。
フェイジョアの収穫方法は2通り。熟れた実の下部を軽くトントンとたたく「タッチピック」で実を外すか、風などの刺激でネットに落ちた実を拾います。ボランティアのみなさんは4グループにわかれ、さっそく収穫を始めました。
果樹園のあちこちから「あった!」「おもしろいね」と声がします。多かったのは「どんな味がするんだろう?」という声。参加者の一人、松澤有人さんは「出会ったときのおたのしみにしようと、フェイジョアについてあえて調べないで来ました」と話します。
タッチピックは実の下に手を広げているにもかかわらず、突然落ちる実をつかみ損ねることがあり、最初はうまくいかない人もいましたが、次第に慣れ、すばやく収穫できるように。低木のため、中腰の姿勢での収穫作業に、腰がつらいという声もちらほら。「丸山さん、大変だろうな。近くに住んでいたら、お手伝いに通えるのにな」と有本弥生さんは思いやりました。
■タノト・キャサリンさん
台湾出身のタノトさん。インドネシア、シンガポール、アメリカで過ごし、2014年から日本で働いています。ユーモアを大切にし、小さなことは気にない台湾人の気質を持っていると笑います。活動中もムードメーカーとなり、場を明るくしてくれました。
「オリンピックのボランティアではバレーボール会場のメディア担当でした。チームワークを感じることができたオリンピックのボランティアがとても楽しかった。それで、もっとやりたいと思い、今回参加しました」とタノトさん。
フェイジョアの収穫については「とても楽しいです。でも農作業ってこんなに楽しんでいいんだっけ? もっと汗かいたほうがいいんじゃないの?」と余裕です。「この後もがんばりたいです」と意気込みました。
■横尾幹(もとき)さん
「どんな味がするの? 甘い? すっぱい?」とフェイジョアの味にひとかたならぬ興味を寄せていた横尾さん。『スケット・ダンス』というマンガに魅了され、高校1年生からボランティア活動を始めました。
「今まで、ボランティアを楽しいって言っている人にあまり出会ったことがなかったけど、ここではみなさん心から楽しんでやっています。そういう人たちを見ると、ワクワクしますね」と横尾さんは話します。
ランチタイムに丸山さんがフェイジョアをふるまってくれました。いよいよ実食です。
「皮の近くはパイナップルの感じがします。パイナップルってすっぱい。でもこれは甘みが深いですね。中は……ぶどうですね。マスカットに近いかも。食べてみないとわからない、初めての味です。」渾身の食レポで、みんなをなごませてくれました。
害獣対策とナンバリングで農園を整備
午後は収穫した実の記録と、農園の整備に関する作業を行います。午前に収穫したフェイジョアの実をひとつずつ量って記録する「記帳」をする担当は別の場所に移動し、その他のメンバーはふたたび農園に集合です。
農園周辺にはハクビシン、イノシシ、タヌキがいて、フェイジョアにとっては害獣となります。そこで、フェイジョアのビニールハウスの周囲にトタン板をめぐらし、鉄パイプとワイヤーで固定する作業を行いました。
トタン板を運ぶ人、鉄パイプを運ぶ人にさっとわかれ、すばやく動きます。設置場所が決まると、地面に立てた鉄パイプをハンマーで打ちつけるカンカンという音が響き渡りました。すばらしい集中力とチームワークで、時間内に作業を終えることができ、みなさん満足の表情でした。
もうひとつの作業はナンバリングです。ゆうゆうファームでは食品の移動を把握できるようにする「トレーサビリティ」に取り組んでいるため、収穫した実がどの木になっていたものかを明らかにする必要があり、木には個別の番号がつけられています。
丸山さんご夫妻は木の番号がすぐにわかりますが、収穫の手伝いをする人たちにとっては判別が難しいもの。そこで今後の作業がスムーズにいくよう、木に番号札を取りつけます。
ボランティアのみなさんは木の配置図を見て確認しながら、1本1本丁寧に札をつけていきました。午前に続く中腰での作業に「腰が痛い」「意外と疲れる」とため息が出ます。木の番号確認に手間取っていたところ、丸山さんがやってきて指示を出してくれました。すると作業が一気にスピードアップ。こちらも時間内に完了しました。
オリンピックのボランティアでヘルスケア部門を担当したという藤山瑞恵さんは活動を振り返り、「緊張感をもって活動することと、楽しむことの両方を教えてもらい、よい体験ができました」と話します。また、「今日はとても楽しいです。ずっと外出を自粛していたので、野外で活動ができて、スッキリしました。オリンピックのボランティアで知ったことですが、一人でやったらつらい作業も、みんなでやるとがんばれる。今日もまさにそうでしたね」とも。
■ハナワテイ・ヨゲシュさん
インド出身のハナワテイさん。オリンピックのボランティアでは、当初2週間の活動予定が、延期にともない1日だけとなってしまいました。参加できて良かったけれど、残念な気持ちもあるといいます。
現在、都心に住んでいるハナワテイさんは「郊外には友人に会うために2、3日滞在したことはありましたが、畑に入って、このような活動をするのは初めてです。自然が豊かで、とても静かな環境。良い体験ができました」と話しました。
合間や活動後には参加者同士や丸山さんを交えての記念撮影もあり、初対面のメンバーばかりとは思えないような和やかな雰囲気となっていました。
東日本大震災体験者との交流から学ぶ
夕方はいわき市内にある浄土宗のお寺、菩提院を訪れ、副住職の霜村真康さんのお話を聞きました。霜村さんは東日本大震災後に創設された、だれでも参加できる対話の場「未来会議」と、そこから派生した多岐にわたる活動を支えるボランティアとして活動を続けています。
栃木県栃木市出身の霜村さんがいわきでお寺の副住職になるまでの経緯、東日本大震災での福島の被災状況と復興の歩み、そのなかで霜村さんたち有志が立ち上げた「未来会議」の活動、そして一昨年いわきを台風が通過した東日本台風災害のことなど、ときにはユーモアを交えながらの霜村さんのお話に、みなさん引き込まれていました。
霜村さんのお話の後は、未来会議でも大切にしている「対話」を体験してみようということで、グループトークの時間が設けられました。3、4人のグループで話をします。
震災時に祖父母が福島第二原子力発電所の近くに住んでいた猪狩いつかさんは「福島の中にもいろいろな価値観がある」という霜村さんのお話を受け「震災後の福島と、コロナの現在の日本の状況には類似している点があると思いました」と話します。
2年半前にゆうゆうファームでフェイジョアの受粉のボランティアをしたことがあるという中田諒さんは「福島の人たちの中には震災後に引っ越しを余儀なくされた人がいます。そのときに受けた差別的な扱いを自分たちはしないという気持ちで、コロナの今、首都圏から来るわれわれを、万全な対策をとった上で受け入れてくれました」と感謝しました。
グループトークの後には、霜村さんが参加者からの質問に答え、たくさんの学びがある、充実したひとときとなりました。
この日の全活動の終了後、今回の参加者のうち最年少の高校生に感想を聞きました。
■吉田唯葉さん(写真左)&相原雪乃さん(同右)
お母さんがぼ活!に登録していて今回の活動を知ったという吉田さん。友人の相原さんを誘って参加しました。
「活動内容を見て、おもしろそうだなって思ったのが参加した一番の理由です。長野に住む知り合いのおばあちゃんの手伝いで、農作業の経験があり、そのときの楽しかった記憶もありました」と吉田さん。
そして、その吉田さんに誘われた相原さん。ボランティアに興味を持った原点を尋ねると「通っていた小学校かな。赤い羽根共同募金の活動がさかんで、名札の裏に赤や緑の羽根をはるのが、かっこいいと流行っていたのが懐かしいです。大学もボランティアのプログラムがたくさんある学校を選びました」と教えてくれました。
「今回の活動はとても楽しかった」と口をそろえ、今後もボランティア活動を続けたいという2人。吉田さんは「今まで、ボランティア活動は誰かのためって思っていたんですけど、それ以上に、いろんな人と出会って話すことができて、お寺でのグループトークでもみんながいろんな考えで活動に参加していることが身に染みて実感できて、自分もいろんなことに挑戦したいなと思うようになりました」と、学校とはまた違った形での学びの機会になった様子でした。
そんな2人にパリ2024大会にボランティアとして参加しては、とすすめると「やりたい!」「楽しそう!」と笑顔。海外での貴重な経験にぜひチャレンジしてもらいたいですね。