レポート&コラム

パラスポーツを知って、好きになって、そして楽しんで!「増田明美の細かすぎるトークショー ~パラスポーツの未来を支えるのは、あなた~」

2021年12月27日
スポーツ ダイバーシティ
パラスポーツを知って、好きになって、そして楽しんで!「増田明美の細かすぎるトークショー ~パラスポーツの未来を支えるのは、あなた~」

「細かすぎる解説」でおなじみの増田明美さんによるパラスポーツトークショーが2021年12月14日にオンラインで開催され、500人近くが参加しました。

この夏、東京で開催されたパラリンピックをテレビやオンラインで観戦し、パラスポーツのおもしろさを知った方も多いのではないでしょうか。このトークショーではパラリンピックを振り返るとともに、パラスポーツの今後についても考えました。

イベント当日の12月14日は忠臣蔵の討ち入りの日と言われており、「討ち入りでござる!」と元気いっぱいに登場するはずが、なんと音声がオフのままと、さっそく参加者を和ませてくれた増田明美さん。陸上の長距離選手として活躍し、ロサンゼルス1984オリンピック競技大会に出場しました。現在はスポーツジャーナリストのほか、日本パラ陸上競技連盟の会長などをされています。

「討ち入りの今日は、東京パラリンピックの閉幕から100日目にあたるそうです」と笑顔でつないだのはフリーライターの星野恭子さん。パラスポーツの取材を多く手掛けていて、パラリンピックの取材は東京2020パラリンピック競技大会で7回を数えます。

過去最多の選手が参加、ボランティアの多様性も注目を集めた大会

東京2020パラリンピック競技大会は2021年8月24日~9月5日の日程で開催され、162の国と地域、難民選手団から、過去最多の4403選手が参加しました。

日本チームは全22競技に合計254選手(過去最多)が出場し、金13、銀15、銅23のメダルを獲得しています。

増田さんと星野さんは、ボランティア活動のうち特に多様性について触れました。「車いすのボランティアに会いました。ロンドン大会を思い出してうれしかったです。オンラインでボランティアをした人もいます」と増田さんが話し、星野さんも「視覚障害の友人がボランティアに参加して、やりがいがあったと話していました」と紹介。「ボランティアの多様性を東京大会のレガシーとして引き継いでいきたいですね」とも。

パラリンピックの興奮と舞台裏を細かく振り返り

大会で日本選手第1号のメダルは最年少14歳の山田美幸さんでした。「競泳女子100メートル背泳ぎの運動機能障害のクラスで銀メダルを獲得して、勢いをつけてくれましたよね」と増田さんが話せば「ちなみに最年長は66歳の西島美保子さんです。最終日の陸上マラソン視覚障害女子の部に出場し、金メダルの道下美里さんの後、見事にゴールして8位に入賞しました」と星野さんが続けます。

さらに増田さんは「最年長の金メダリストは、50歳の杉浦佳子さんですね。自転車の女子個人ロードタイムトライアルとロードレースの運動機能障害のクラスで2冠を達成しました」と情報の数珠つなぎが止まりません。

杉浦佳子さんは薬剤師だったのですが、自転車大会での転倒事故で、記憶力などが低下する高次機能障害になり、右半身にまひも残りました。小学生の計算ドリルや漢字ドリルを使ったリハビリのほか、薬剤師仲間が、薬の名前を使ったクイズを出してリハビリに協力してくれたというエピソードも紹介されました。

また、表彰式のプレゼンターを務めた増田さんは、日本ならではの「おもてなし」として着物で登場。その際に、一緒に担当したアラブの王族(写真左)と意気投合し、「アケミ、僕の7番目の妻にならないか」とプロポーズされたという驚きの体験も。「今なら『私の8番目の旦那さんですね』なんてジョークで返すけど、その時はいきなりだったから返答に困っちゃった」と笑顔で明かしてくれました。

パラリンピックの戦い方として「オールジャパン」の体制ができてきたことを感じたという増田さん。たとえば車いす陸上競技400mと1500mで金メダルに輝いた佐藤友祈さんは、ライバルのレイモンド・マーティンさん(米国)に勝つために、スタッフの平松竜司さん(日本パラ陸上競技連盟強化副委員長)とともにデータを集め、分析して、戦略を練りました。

星野さんもゴールボールを例に、データ分析班が対戦相手の特徴を試合前に得ておくこと、試合中に話ができる短いタイミングでベンチからの指示を選手に伝える連携ができていたことなどチームスタッフの活躍を披露しました。

パラリンピアンのすばらしいパフォーマンスの数々を話しているうちに、当日の興奮がよみがえってきた増田さんと星野さん。チャットのコメントも盛り上がり、みなさんでパラリンピックの余韻を共有しました。

ここで参加者から寄せられた質問にお二人が答えます。

Q パラリンピックの用具の優劣による競技力の違いについてどう思われますか?

A 用具についての一定のルールがあるので、その範囲で工夫しているのが現状です。なかなかすべての選手が同じようにとはいきませんが、国際パラリンピック委員会では、発展途上の国に用具を寄付したり、コーチを派遣したりして、パラスポーツを広げる取り組みをしています。(星野さん)

Q パラリンピアンとオリンピアンの違いって何でしょうか?

A 努力して目標に向かっていく競技への姿勢はいっしょだと思います。陸上100mの山縣亮太さんはパラアスリートで100mや走り幅跳びの高桑早生さん、100mハードルの寺田明日香さんと同じ高野大樹コーチに教わっています。山縣さんは高桑さんの体の動かし方が勉強になると言っていますし、ちょっと落ち込んだときに、寺田さんの明るさのおかげで元気を取り戻したことがあるそうです。(増田さん)

見て、参加して、支える! これからもパラスポーツに注目を

「見る」

パラリンピックが母国で開催されるということで「にわかファン」が増えたことを増田さんは喜び、競技力が向上することにも期待を寄せました。

星野さんはもうすぐ開催される北京冬季大会について触れ、「リモートで観戦するという新しい楽しみ方もあります。まずは見て知ってほしいですね」と話しました。

「する」

ゴールボールやボッチャは障害のあるなしに関わらず参加できる大会が増え、普及につなげようという動きがあります。「ぜひ参加してください」と星野さん。

「ささえる」

パラスポーツの大会やイベントを支えるボランティアのほか、審判や伴走者など、より選手の近くで支える楽しみがあります。星野さんは「ぼ活!ではボランティアの募集が順次始まっていますので、パラスポーツにいろんなかたちで関わって、これからも応援してほしいです」と期待を寄せました。

増田さんは大切にしている言葉「知好楽(ちこうらく)」を紹介してくれました。「何かに打ち込んでいるとき、知っていることはすばらしい。知っているよりも好きでやっている人が勝っている。好きな人も楽しんでいる人にはかなわない。パラリンピックのような大きな大会でも、国内の小さな大会やイベントでも、ボランティアで関わるときには、そういう気持ちで楽しめたらいいと思います」と結びました。

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