レポート&コラム

オリンピック・パラリンピックのボランティアを語り合う「東京2020と北京2022をつなぐ ~中国青年公益事業交流団オンライン交流~」

2022年2月16日
スポーツ グローバル
オリンピック・パラリンピックのボランティアを語り合う「東京2020と北京2022をつなぐ ~中国青年公益事業交流団オンライン交流~」

外務省の対日理解促進交流プログラム「JENESYS2020」の一環として、日本と中国をつなぐオンラインイベントが1月18日(火)に開催されました。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)のボランティア経験者と北京2022冬季オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、北京2022大会)にボランティアで参加予定の大学生、傍聴者などを含め約80人が参加し、北京2022大会の開催を前に、オリンピック・パラリンピックのボランティアについて学び、グループでの話し合いを通じて交流を深めました。

ボラサポも開催に協力しました本イベントの様子をご紹介します。

日本と中国を結ぶ日中友好会館と中国宋慶齢基金会

イベントは、日本側の主催者である「公益財団法人日中友好会館」事務局長、荻原芽さんと、中国側の主催者である「中国宋慶齢基金会」副主席の于群さんのあいさつから始まりました。

公益財団法人日中友好会館 事務局長 荻原芽さん

日中友好会館は、日中両国の友好協力関係の一層の発展をめざし、市民レベルでの活動拠点として、青少年交流や文化交流などさまざまな分野で積極的に交流事業を実施しています。

まもなく北京2022大会が開催されます。本日みなさまにはスポーツボランティア、特に東京と北京、両大会のボランティアについての理解を深め、お互いの経験や期待などを共有していただければと思います。

2022年は日中国交正常化50周年の節目の年です。このオンライン交流をきっかけとして日中間の交流がますますさかんになることをお祈りしております。

中国宋慶齢基金会 副主席 于群さんあいさつ(ビデオメッセージ)

2021年と2022年は、「日中文化スポーツ交流の年」であり、東京オリンピックの成功、北京冬季オリンピックの開催と重なります。

中国宋慶齢基金会は中国で唯一の国家指導者の名前を冠した基金会で、「平和、統一、未来」の3つの目的のために設立されました。今後、日中両国の地理的な近接性と文化的な結びつきを生かし、よりいきいきとした、心温まる交流イベントを共同でおこない、両国関係の明るい未来を切り開いていくことを期待しています。

本日の会議に出席した中国の若者の多くは、北京2022大会の最前線にまもなく参加します。この交流の機会を大切にして中国と日本のボランティア専門家の講演をじっくりと聞き、東京2020大会に参加した日本のボランティアに学び、意見交換を行ってほしいと思います。

いよいよ開幕! 北京2022大会にむけたボランティアの歩み

続いて、北京2022大会のボランティアについて、北京冬季オリンピック組織委員会ボランティア部募集管理処の処長、任煒さんが説明しました。

任煒さんは「北京は世界ではじめて夏季(2008年第29回五輪)と冬季(2022年第24回五輪)のオリンピックを開催する都市で、われわれはダブルオリンピックの街と言っています」と始め、ボランティアの募集にいたるまでの経緯の説明をしました。

北京2022大会は、開幕まであと1000日のタイミングでボランティアの活動行動計画を公表し、2020年5月には北京冬季オリンピック組織委員会がボランティア部を正式に設立して、6つの部署が作られました。

「募集管理部」は、ボランティアの募集と活動の管理、新型コロナウイルス対策を担当します。「宣伝と訓練部」では、ボランティア全員に対して研修等を行います。

任煒さんは、ボランティアへの保障とサポート体制にもふれました。東京2020大会との大きな違いは、宿泊の提供。北京2022大会の一部は山間部での競技のため、ボランティアが良いコンディションで、時間どおりに活動に参加するために宿泊を提供するのだそうです。

また、「さまざまなインセンティブ(報酬)をもうけました。東京2020大会と同様に金銀銅のピンバッジがあります。ボランティア活動を楽しむことができ、大会が終わっても楽しい思い出となるようなパッケージを用意しています」とも話しました。

ボランティアの募集人数は、オリンピックが2.7万人、パラリンピックが1.2万人でしたが、募集の締め切りまでに100万人以上が申し込みました。「参加への情熱が非常に高いことがうかがえました」と任煒さん。

応募者の内訳についても紹介され、3万人の障害者が参加を申し込んだことがわかりました。年齢別では35歳以下が98万人(98%)を占めています。特に学生は最も比率が高く、85万人(85%)でした。男女の比率は4対6(東京2020大会と同様)となっています。中国国外からも165の国と地域からの応募がありました。

2021年2月~12月には会場の運営、設備、コンディション、業務の構築、緊急対策などの確認をするテスト大会も随時実施されました。ボランティアも実際に活動してみることでレベルアップをはかることができました。

最後に任煒さんは「現在、ボランティアの研修等はほぼ完了しており、大会本番に向かう状態です。いかにボランティアが気持ちよく、楽しく、よいコンディションでハイレベルな活動を提供できるかが、これから直面する課題です」と話しました。

共生社会を体現した東京2020大会のボランティア

次にボラサポのスタッフ、山本和樹が東京2020大会におけるボランティアについて紹介しました。

まず、ボラサポが東京2020大会の大会組織委員会と協力して、ボランティア運営のサポートを行うことをミッションとして設立された団体であること、大会準備期間中には研修を企画、作成し、約10万人を超えるボランティアが研修を受講したことなどを紹介。

東京2020大会のボランティアが歩んだ道のり「ボランティアジャーニー」もわかりやすく説明しました。

そして最後に「東京2020大会のボランティアは、研修を通して社会課題を学び、実際のボランティア活動で共生社会を体現しました。大会を経験したボランティアがこれからの社会をどのように変えていくのか、私はとても楽しみにしています」と話しました。

東京での体験が北京に生きる! 熱のこもったグループトーク

ここからはグループにわかれて、日中双方から大会ボランティアの経験や活動内容、参加にあたっての心境などを話し合いました。

グループ1では、リーダーで中国の大学生武さんの進行で自己紹介が行われていました。

同じく大学生の陳さんと周さんはフィギュアスケートが行われる首都体育館で言語サービス(通訳)のボランティアをする予定だと言います。陳さんは「羽生結弦選手の人気がすごい」と話し、周さんは「テスト大会で鍵山優真選手や坂本花織選手を見て、うれしかった」とすっと日本の選手の名前をあげ、なごやかな雰囲気を作ってくれました。

東京2020大会で「テクノロジー」という競技に関わる機器操作のボランティアをした垂見さんと工藤さんは、活動を通じて「試合を間近で見ることができました」と経験を話しました。

新型コロナウイルスの影響で活動内容が直前に変更となった横須賀さんは「短い活動期間でしたが、参加することができてよかったです。北京2022大会の成功を祈って、テレビで応援していますので楽しんで、がんばってください」とエールを送りました。

中国の大学生張さんがリーダーをつとめるグループ2は、1人が発表するたびにメンバーが「おおっ」と大きくリアクションして、盛り上がりました。

「東京2020大会のボランティアを通して、スポーツとは無縁だった私が世界規模の大会の運営の一員として活動できたことの達成感や喜びをお伝えしたいです」と切り出した川田さんは、有明アーバンスポーツパークの事務所内で活動をしました。想像していた内容とは違う活動だったものの、ボランティアのメンバーでアイデアを出し合い、自発的に行動したことで、充実した活動となったそうです。

川田さんは競技ごとに販売されたピンバッジについてふれました。「これをつけて歩いているとたくさん声をかけられ、ボランティア同士はもちろん、多くの人とのコミュニケーションのきっかけとなりました。北京2022大会でも販売があれば、会話のきっかけづくりになると思います」とアドバイスをしました。

張さんは「北京でも販売されると思います。私もコミュニケーションのきっかけにしたいと思います」と答えました。

グループ6では、リーダーで中国の大学生唐さんがこんな質問をしています。「たとえばお弁当を配る、選手村で車の送り迎えをする、単純でくり返しの活動ですよね。東京のみなさんはいかにして活動を楽しんで前向きな気持ちを保ったのでしょうか。」

実は唐さんはすでに入国者のチェックのボランティア活動を1か月ほど続けていました。最初はとても楽しんでやっていましたが、はじめのころの興奮や楽しみが減ってきているような気がするといいます。

これに対し、東京2020大会のオリンピックスタジアムで活動した稲葉さんは「私の最初の活動はお弁当の配布とボランティアのチェックイン(受付)の2つだけでした。楽しめるかなと思っていたのですが、決められた活動だけではなく、さらに何ができるかを考えてやってみました。モチベーションを上げるために何かできると思うので、ぜひ探してみてください」とアドバイスしました。

また、東京2020大会でのボランティア経験があり、北京2022大会にも参加する劉さんは

「実は私も唐さんと同じ思いがありました。東京2020は大きな大会で、ボランティア活動は意義のあることだと考え、活動前は非常に期待が高かったのです。実際にやってみると巡回などの小さな仕事ばかりでした。

ただ、まわりを見るとボランティアの仲間が小さな仕事でも努力して丁寧にやっていました。それが大会を成功に導いたのだと気づき、やりがいを見出せました。思い返すと、最初の自分はなぜ小さな仕事だと落胆していたのだろうと、今は不思議に思います」

と自身の経験を話しました。

グループでの交流の後は、各グループがどんな話をしたかを発表しました。

中国のみなさんからは、東京2020大会のボランティアの経験を知ることができてよかった、北京2022大会での活動に生かしたいというコメントがありました。

日本のみなさんからは体験を話すことができ、北京2022大会にボランティアで参加する人たちを応援することができてよかったという声がありました。

ボラサポとしても、この交流で参加者の方が得られたことが、北京2022大会そして今後のボランティア活動につながればと願っています。

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