レポート&コラム

デフスポーツの裾野を広げ2025年デフリンピックへ 第24回デフバレーボールカップ川崎大会

2023年3月31日
スポーツ ダイバーシティ
デフスポーツの裾野を広げ2025年デフリンピックへ 第24回デフバレーボールカップ川崎大会

聴覚障害のある選手たちが参加する第24回ジャパンデフバレーボールカップ川崎大会が、2月25日〜26日の2日間にわたって開催されました。24日の前日設営、1日目の予選リーグと2日目の決勝トーナメントの計3日間、ぼ活!ボランティア、のべ58名が参加しました。

ろう者によるバレーボールの全国大会「デフバレーボールカップ」

デフバレーボールカップの「デフ」とは、英語の「deaf」、つまりろう者、聴覚障害があり耳が聞こえない人を意味します。デフバレーボールカップは聴覚障害者向けの全国大会のひとつです。2001年から年に1回開催されており、試合は聴覚障害がある選手のみで行われます。それ以外のルールは一般のバレーボールと一緒です。

ボランティアのみなさんの活動は、会場サポートと通訳サポートに分かれて行われました。会場サポートは設営、選手受付、コート内のベンチや椅子の消毒などを行います。通訳サポートは文字通り選手たちと審判やトレーナーの、手話によるコミュニケーションをサポートしました。

手話の魅力は、目と目を合わせるコミュニケーション

朝、事前の打ち合わせを終えると、一息つく間もなく、続々と選手たちが来館します。受付では選手たちに検温と消毒をお願いし、会場の案内を行います。会場内はそこかしこでウォーミングアップをする選手たちで溢れました。

選手たちの入館が一段落したところで、受付で活動した中尾恵理子さんにそれまでのボランティア活動の経験と、今回の応募の動機を伺いました。

「ボランティアは東京2020大会が初体験でした。その時に日本財団ボランティアサポートセンター(現 日本財団ボランティアセンター)が主催してくれた橋本一郎先生の手話セミナーに参加して、楽しかったです!」

声を弾ませて話してくれた中尾さんに具体的な楽しさをお伺いすると「最近の子どもたちはスマホばっかり。最近、目と目をしっかりと合わせた会話を楽しまなくなった気がする。それに対して、手話は目と目をしっかりと合わせて表情を伝える。それが改めてすごく新鮮に感じて、大事なことに思えました」と手話の魅力を教えてくれました。

現在は手話検定二級、今年の目標は一級取得と意気込む中尾さんでした。

一方、トレーナールームでは試合直前に慌てて飛び込んでくる選手がいたり、試合のハーフタイムに応急措置を求めてくる選手がいたりします。選手の要望と感情も様々で、手話の通訳のスキルもかなり高いものが求められています。

配置されたのは平本珠美さん。普段は地元横浜市で、プロの手話通訳士としてお仕事をされています。ボランティアは東京2020大会に応募したことがきっかけで様々な活動があることを知って、主に近場で行きやすいところに参加し始めた、ということでした。

「いつも会う人たちとは、いつもの価値観を共有することになる。でも、ボランティアで普段とは違う人と知り合いになると、それまでの自分の見方が変わるのが新鮮で、面白い。ボランティア活動は今後もなんらかの形で、できれば手話を使って関わっていければいいなと思っています」」

手話初心者も活動に参加

試合が始まると、会場サポートに配置されたボランティアのみなさんは、コートのすぐ脇にスタンバイして、ゲームが中断するタイミングを見計らってすばやく会場に設置された椅子や机を消毒します。

コロナ禍の学生生活をおくる大学生、鮎澤誠二さんにお話を伺いました。鮎澤さんは手話の経験はなく、ボランティア活動は小学校から高校まで、地域の祭に参加し続ける頃から興味をもっていたということでした。

「大学に入学してから、自分の好きなスポーツを中心にマラソン大会のボランティアから始めて、いまは月に1回か2回の頻度で参加しています」

「今回応募した直接の動機は、2年後のデフリンピックです。それに向けて手話も覚えたいと思っています」

2025年デフリンピック 東京開催に向けて

2年後の2025年には、聴覚障害者のオリンピックにあたる「デフリンピック」が日本で開催されます。前身となる国際競技大会は戦前から開催されていましたが、2001年に国際オリンピック委員会(IOC)の承認を得て、ろう者(Deaf)とオリンピック(Olympics)を合わせた名称となり現在に至ります。

会場では、日本デフバレーボール協会理事長の大川裕二さんにお話を伺うことができました。自らも聴覚障害を持つ大川さんに手話の通訳を挟んで、今大会の意義、そして将来に向けた抱負をお話しいただきました。

「(ろう者は)トイレや食事に行ったりと、基本的なことは困らないが、人間関係のネットワークを広めることが難しいし、なにより、そういう状況が周りの聞こえる方からは気付きにくい。おはよう、こんにちは、その次の話がしたい。デフリンピックを契機に、注目されるろう者のアスリートたちが発信することで、世の中に少しでも、そのような不便があるということの理解を広めていきたい」

全国大会から世界大会へ、デフバレーボールはさらに盛り上がりを見せています。特に女子日本代表は世界レベルの強豪です。

「デフリンピックの東京開催が決まりました。日本かさらに世界へ、ろう者のありのままの姿、困っていること、コミュニケーションの状態が伝わればと思っています」

今回のデフバレーボールカップでは、今大会はじめて公募したボランティアが活動し、大会をサポートしました。

躍動する選手たちとボランティアのみなさんのコミュニケーションは、デフスポーツの裾野を広げる確実な一歩になりました。

ぼ活!では、楽しみながら手話の表現や伝え方について学ぶセミナーを随時開催しています。詳細は、「ぼ活!セミナー/イベントを探す」をご覧ください。

TEXT by 益子義昭
PHOTO by 岡本 寿

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