2024年5月17日から5月25日の9日間にわたって「神戸 2024 世界パラ陸上競技選手権大会(KOBE2024世界パラ陸上)」が開催されます。会場は神戸市の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場、およそ100の国と地域から1300人以上のパラアスリートが訪れる世界最高峰のパラ陸上競技大会です。
来年5月の本大会開催まで200日を切っており、大会を盛り上げる様々なプロモーション活動が実施されています。本記事では、2023年10月31日に国立競技場で行われたスマレゾカーによる全国キャラバン「スマレゾキャンペーン」の出発式をレポートします。
1万人分の声援を神戸へ!スマレゾキャンペーン
「スマレゾ」とは「スマイル」と「レゾナンス(共鳴)」という言葉を掛け合わせた言葉です。相手の感情や考えに共感して、より深い理解を生み出す現象としてのレゾナンス(共鳴)と、文字通りのスマイル(笑顔)。「スマレゾ」はキャンペーンの理念を総称する言葉として使われています。
スマレゾキャンペーンは、「スマレゾカー」と命名されたラッピングカーが東京・国立競技場を皮切りに、共生社会の実現に向けた取り組みを推進する全国15ヶ所の都市を回りながら、最終目的地の神戸を目指します。
スマレゾカーのドライバーは、東京2020オリンピック・パラリンピックの時にフリートと呼ばれるドライバーを務めたボランティアが、本キャンペーンでもボランティアとして運転します。各都市では視覚障害のあるカメラマンが撮影を担当して、合計で1万人分の声援フォトを集めます。
東京から神戸へつなげる パラリンピック・ムーブメントの継承
「KOBE2024世界パラ陸上」の大会基本理念の一つに、「東京2020パラリンピックにおける感動や興奮を継承し、パラスポーツへの関心を高める」ことが掲げられています。今回の出発式が、国立競技場で行われたことも、そのような想いが込められています。
出発式では「KOBE2024世界パラ陸上」の組織委員会会長を務める増田明美さんの挨拶から始まり、大規模なパラ国際大会が日本で開催されることは「多様性を尊重し合う共生社会の実現に貢献する、極めて重要な社会的な意義がある」とスポーツ庁長官の室伏広治さんからのビデオメッセージに続いて、「東京でも2025年には世界陸上とデフリンピックが開催される。大会を成功に導くことでインクルーシブな社会を作り上げていきましょう」と、小池百合子東京都知事からのメッセージも届けられました。
イベントでは、全国を回るスマレゾカーのお披露目されました。
スマレゾカーのデザインは、港町であり国際都市でもある神戸と、平和と多様性をイメージされた色鮮やかなラッピングで、運転するボランティアも気持ちが高まります。
お披露目の後には、スマレゾカーをバックに声援フォトの撮影が行われ、増田明美さん、陸上競技とアルペンスキーの2刀流パラアスリート村岡桃佳選手、今大会のPR大使を務めるインフルエンサーでランニングアドバイザーの三津家貴也さんも参加されました。
撮影された写真は大会本番の会場装飾のにも使用され、出場選手たちへのエールとして届けられます。
KOBE2024世界パラ陸上への期待
イベントの最後には、「東京2020大会レガシーとKOBE2024世界パラ陸上への期待」をテーマにしたトークショーが開催され、ボランティアを代表して、スマレゾカーのドライバーも務める菊池未樹さんと戸井田祥江さんが登壇されました。
トークショーでは大会を支え、東京2020大会レガシーの一つと言われるボランティアについても話題になりました。現役のパラアスリートで今大会でも多くのメダルが期待される村岡桃佳さんが、スポーツボランティアについて、競技者の立場から語ってくれました。
「スタッフ、ボランティアの方々の笑顔というか、競技者としてもとても近い場所からエネルギーをもらえる」
続いて日本パラリンピック委員会の河合純一委員長は「これだけ大きな規模の大会においては必要不可欠な存在。大会の成功を一番現場に近いところで後押ししてくれているのもボランティアの方々だと思っています」と運営の立場から。
「KOBE2024パラ陸上」のボランティアの募集は終了し、1200人の定員を上回る1400人以上の応募がありました。応募者の約3割が東京2020オリンピック・パラリンピックの経験者です。ボランティアにも、東京から神戸へパラリンピック・ムーブメントを継承する役割が期待されています。
MCの平井理央さんからボランティアのお二人へ、スポーツボランティアの魅力とは、と質問がされました。
戸井田さん(写真左)
「元々はマラソンに参加する方だったけど、膝を痛めて走れなくなってしまいました。それでも、なにか役に立つことはないか、競技の雰囲気を味わう方法はないかと考えてボランティアに目をつけました。応援しているうちに胸が熱くなってきて、競技に参加する方ももちろん素晴らしいけど、ボランティアとして参加することも同じくらい素晴らしいと思うようになって、ハマっています」
菊池さん(写真右)
「日頃の自分はあまり自分に自信が持てず、人前で話すのも苦手。でも、スポーツボランティアをしているときは元気にしていないといけないので、そんなときは憧れの誰かをイメージしたりして観客やアスリートのみなさんに対応しています。そうやって一日が終わるととても嬉しくなります。なりたい自分になれた、元気をもらって、自分が少し成長することができます」
トークショーの最後に、現役時代は数々のメダルを獲得した河合純一さんが今大会の魅力について語ってくれました。
「障害があるからできないとか、ネガティブなイメージをまだ持たれがちだけど、パラアスリートたちの日頃の努力と工夫で鍛え上げられたパフォーマンスを見ることで、自分の中にある可能性とか、信じられる力ってものに、また出会える機会が神戸にあると思います」
東京2020大会は新型コロナウイルス感染症による様々な規制により、多くの会場が無観客での開催となりました。今回は日本中、ひいては世界中からたくさんの方々が神戸に集まってアスリートたちの間近で声援を送ることになります。スマレゾ、そして多様性が体現される大会になるべく選手もボランティアスタッフもさらに熱を帯びていきます。
「日本中の笑顔でKOBE2024世界パラ陸上を盛り上げよう! スマレゾ キャンペーン」は、2024年2月7日(水)まで、選手たちにエールを送る笑顔の写真を募集しています。オンラインの応募も可能です。詳しい参加方法は、特設サイトをご覧ください。
https://smile-resonance-cp.com/
みなさんの笑顔を神戸に集う選手たちに届け、エールを送りましょう。
TEXT by 益子義昭
PHOTO by 岡本寿