昨年の2023年10月に日本財団ボランティアセンター(日本財団ボラセン)は、長野県の軽井沢町と「ボランティア活動推進に関する連携協定」を締結しました。(詳しくはこちら)そして、今年2024年3月26日(火)~29日(金)に行われた「第19回風越カップ全日本少年アイスホッケー大会(小学生の部)」に、初めてぼ活!で募集した県外のボランティアが参加。これまでは町内の限られた人手で大会を運営していましたが、今大会はボランティア20名が2泊3日で軽井沢町に滞在し、運営をお手伝いしました。ボランティアたちからは「貴重な経験ができた」、地元の方からは「ありがたかった」と、双方からプラスの声が聞かれる大会となりました。
軽井沢で20年近く続く「風越カップ全日本少年アイスホッケー大会」
軽井沢町の風越公園で毎年3月に開催される「風越カップ全日本少年アイスホッケー大会」。2006年の初回以降、東日本大震災や新型コロナウイルス感染症流行により中止した年もありましたが、今年19回目を迎えた歴史のある大会です。
小学生の部は、北海道から九州・沖縄までの選抜チームが16チームが集まり、まず4チームのリーグ戦を行い、各リーグ上位の4チームがトーナメント戦で1~4位を争います。
小学生とはいえ、選抜選手たちのスピードは目を見張るほど。スティックやパック、そして選手たちがぶつかり合ったときの音や振動は、観客たちの体にも響くような迫力があります。
ボランティアたちは、重要な役割も楽しみながら対応
ぼ活!で集まった20名のボランティアは、3月27日に東京で集合しバスで現地入り。28日からリーグ戦の終盤と、29日のトーナメント戦をサポートしました。
具体的には、試合の時間管理や、得点及びペナルティの電光掲示板への入力、手書きスコアの記入、ペナルティを犯した選手のベンチ出入り補助、ゴールジャッジを担当。最終日のトーナメント戦ではさらに、会場アナウンスも加わりました。
今回、試合の重要な役割を担ったボランティアたちですが、実は参加者の多くがアイスホッケーの試合を実際に観るのは初めて。当日に向け、事前に配布された資料を読み込み、現地入りした27日に試合を見学し、実際の機器の操作方法を教えてもらいました。28日には朝早くから集合してルールや機械の操作を確認し、いざ本番の試合へ。最初は緊張していたようですが、同じく大会運営をサポートしていた軽井沢高校のアイスホッケー部のみなさんにも教えてもらいながら、次第に慣れていった様子。最終日の29日にはゲームを楽しみながら活動に当たっていました。
〜ボランティアたちの感想〜
「軽井沢まで来たからこその経験ができた」
午前と午後の2交代制で行われた今回のボランティア。大会最終日、午前に参加した3名にお話を伺いました。
宿泊して信頼を深めた仲間と協力できた
1人目は、災害現場でも活躍できるような看護師を目指す高校生の佐俣香帆さん。ぼ活!のボランティアには初参加でしたが、普段から東北をはじめとした災害ボランティアにも出向いており、宮城県のボランティア団体の広報のサポートも行っています。
「長い時間活動できるほうが、知り合った人の人間性も知ることができるから」と宿泊のボランティアを選ぶことが多いという佐俣さん。今回もその効果を感じられたと言います。
「私もみんなもアイスホッケーのルールをよく知らない状態でのスタートだったので、最初はすごく不安でした。でも、たくさん質問させてもらって、ボランティア同士でも『こうだよね』『ああじゃない?』と意見を言い合いながら取り組むうちに、習得できていました。3日過ごしたことでみんなとの信頼も深まって、最終日には2人1組でひとつを担当してミスをなくそうとか、工夫もできてよかったと思います」
また、合間には軽井沢散策も楽しめたそうです。
「自由時間にはみんなとアウトレットや軽井沢銀座などを巡りました。でも観光地を少し離れれば、いろいろなスポーツができるこんな公園もある。軽井沢は幅広い体験ができる場所だなと感じました」
サポートする側の世界を知ることができた
2人目は、自身も水泳・トライアスロンの競技者である大学院生の田中凛太郎さん。「サポートする側はどんな想いなのだろう?」と興味を抱き、東京パラリンピックで初めてボランティアに参加。その楽しさに夢中になり、ぼ活!の活動で卓球のTリーグやトライアスロン大会のサポートを行ってきました。
今回は「なかなか関わることがないウインタースポーツを知りたい」と思い参加したそうです。
「初めてアイスホッケーを間近で観たら、ちょっと怖いぐらいの迫力。『氷上の格闘技』と呼ばれるのも納得でした。正直、試合のサポートは心配でしたが、軽井沢の高校生にもフォローしてもらって、途中からなんの不安もなくなり、ルールもわかるようになって観戦がおもしろくなりました」
ボランティアでは、普段関わらない人と知り合い協力しあえることも魅力だと言います。
「フィールドは全然違っても、ボランティアで役立ちたいという志をもった人たちと活動して、うまく行けばみんなでわーっと喜べる。競技をやっているだけでは知ることがなかった広い世界の輪に入れて、すごく楽しいです。今回は軽井沢旅行みたいな感覚もあって、他愛もない話ができるようになったみんなと、自由時間には自然を眺めてのんびりして。いい時間を過ごせました」
地元の方々の温かさにも触れられた
3人目は、大学の教育学部に通う稲葉音緒さん。小学生の頃にボランティアに目覚め、コロナ禍の際は中断したものの、自粛期間が明けてから再開。ぼ活!の災害支援の募金活動や、旅するボランティアの活動にも参加してきました。
今回は「子どもが好き」「アイスホッケーに興味がある」「雪が降る場所に行ってみたい」という自身にぴったりのボランティア活動だったと語ります。
「私は小学校の先生になりたいので、学校の外でこんなに激しいスポーツに励む小学生たちを見て、感激しちゃいました。アイスホッケーも、1日ではわからないことだらけだったと思いますが、ルールもわかってきた今では自分でもやってみたい!というぐらい好きになっています」
人と話すことが大好きだという稲葉さん。今回は軽井沢の方たちとの交流があったことも印象深かったそうです。
「軽井沢の高校生や地元の方たちが『大丈夫?』と声をかけてくれたり、試合中にも『こうするんだよ』って教えてくれたり。本当に温かい人ばかりでした。今回軽井沢銀座などに出かけられたこともうれしかったんですが、ボランティア活動をすることでメンバーとも地元の方とも深い関わりがもてて、幸せな気持ちでいっぱいです」
〜地元の方たちからの声〜
「ボランティアたちの積極的な姿勢に感謝」
今後の大会の継続にもぜひ協力を
今回、この長野県アイスホッケー連盟 風越カップ委員会委員長の堀川恵誉さんから、ぼ活!のボランティアに対しての感想を伺うことができました。
「この風越カップは、スポーツを通して軽井沢を活性化したいとの想いで始まり、町をあげて取り組んできたものです。軽井沢のスポーツ協会のアイスホッケー部を中心に、町民の父兄や高校生などの力を借りて運営してきました。ただ、そもそも協会の人手も足りないうえに、平日4日間の開催ではボランティアを集めるのも大変な状況でした」
そんな中で、軽井沢町が「ボランティア活動推進に関する連携協定」を結んだぼ活!のボランティアに依頼することになった今回、ボランティアたちの熱心さや積極的な姿に驚いたそうです。
「正直、わざわざ軽井沢まで来てもらい、それほど一般的ではないアイスホッケーの大会の手伝いをお願いしてもよいのだろうか?と心配していました。でも、みなさんが積極的に作業を覚え、とても順調に進めてくださったと感じます。会場アナウンスなど、当初予定になかったものも『やりたいです!』と言ってくれる方が多くて。非常に感謝しています」
逆にボランティアたちが貴重な経験ができたと話していたことを伝えると、ホッとした様子でこう話してくださいました。
「そのように言っていただけるならうれしいです。風越カップは末永く続けていきたいので、お願いできるのであれば、今後もぜひという思いがあります」
連携協定による効果を実感
軽井沢町 総合政策課 まちづくり推進室の渡邉睦貴さんは、日本財団ボラセンと締結した「ボランティア活動推進に関する連携協定」についての想いも含めてコメントを寄せてくださいました。
すでにボランティア活動自体は積極的に行われているという軽井沢町ですが、この協定の締結によってボラセンがもつ豊富な経験や知識も活かしながら、町の自然環境や文化、観光資源を活用したイベントやプログラムを実施できればと考えているそうです。
「今回のようなボランティア活動は、行政では手が届かないところへ大きな効果を発揮していると思います。このチャンスを活かし、地域社会への貢献や人材・ノウハウの活用、地域の魅力向上、そして持続可能な地域発展の促進につながることを今後も期待しております」
渡邉さんは、協定の締結後に開催された今回の風越カップや、軽井沢高校で実施されたボ学(ボランティア経験者が講師を務める出前授業)で、その効果を感じ始めていると教えてくださいました。
「今回の大会でボランティアのみなさんに活躍していただいたことで、全国各地から訪れた選手や関係者の方々に、軽井沢町は関係者だけではなく多くの人が町の魅力を向上するために貢献しているという印象を持っていただけたのではないでしょうか。『軽井沢町×ボランティア』のようなイメージアップにつながったと思いますし、軽井沢町の関係人口(※)の増加にも貢献していると感じました。
また、ボ学で年齢が近い大学生たちにボランティアの魅力を教えてもらった高校生たちは、ボランティアに関心を抱き、参加したいとも思ってくれたであろうと感じます。こうした取り組みをこれからも継続し、地域の発展や住民のボランティア活動の活性化にも繋がればと期待しております」
※関係人口:移住した「定住人口」や観光で訪れた「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々のこと
地域行事を共有することで生まれるシナジー
今回、遠方から来て宿泊したボランティアたちと、地域の方々のお話を伺って見えてきたのは、地域行事を共有することのシナジー(相乗効果)です。地元で親しまれている文化や行事に、ほかの地域の人が関わり共に盛り上げ、時間を共有したことはお互いにとって貴重な体験になっただろうと感じます。これまでにない気づきや発見がたくさんあったのではないでしょうか。今後も日本財団ボラセンでは様々な地域で、地元の方々とボランティアたちが協力し、地域の魅力を再発見できるような活動を増やしていけたらと考えています。