社会人のボランティアに対する意識と参加状況

一般的に社会人は仕事による時間の拘束があり、ボランティアに割いている時間が少ないのではないかと思われる方も多いかもしれません。
ただ、実際にボランティアに積極的に参加している社会人もいます。どのような理由でどのようなボランティアに参加しているのでしょうか。
実は成人の2割がボランティアに参加した経験がある
2022年に行われた内閣府の「市民の社会貢献に関する実態調査」によると、2021年にボランティアに参加したことのある満20歳以上(学生を含む)の割合は、17.4%でした。
およそ2割の成人は、1年間で何かしらのボランティアに関わったということのようです。
参加率の高いボランティアは「まちづくり・まちおこし」
では、参加率の高いボランティアはなんでしょうか。調査によると、分野別に見た時に最も高いのは「まちづくり・まちおこし」で、次に「子ども・青少年育成」、「地域安全」と続きます。
一般的に「まちづくり・まちおこしボランティア」とは、遊歩道などの花壇の管理・地域イベントの運営・空き家問題への取り組みといったボランティアが含まれます。
「子ども・青少年育成」ボランティアには、子育て相談、子ども会の運営サポート、読み聞かせ、子ども食堂、学習支援、登下校時の交通安全指導などが入ります。
「地域安全」ボランティアは、交通安全活動、地域の環境浄化活動、防災活動、防犯活動などを指します。
▼ボランティアの種類と活動例についての基礎知識はこちら
ボランティアの8つの種類と活動例。社会人や学生におすすめの活動とは| ぼ活!
ボランティアに参加した理由は、妨げになる要因は
ボランティアへの参加理由は、「社会の役に立ちたいと思ったから」が最も多く、他にも「自己啓発や自らの成長につながると考えるため」という社会貢献意識や自己成長といった理由が見受けられました。「自分や家族が関係している活動への支援」、「職場の取組の一環として」といったコミュニティーに関わる活動に参加するケースもありました。
では、逆に参加を妨げている要因はなんでしょうか。
最多だったのは、やはり「参加する時間がない」で約半分を占めます。
「ボランティア活動に関する十分な情報がない」と「参加する際の経費(交通費等)の負担」も挙げられており、時間や金銭面のハードルの高さや情報の不足といった問題が背景にありました。
社会人ボランティアとプロボノの違い

社会人が携われるボランティアの活動の種類は、仕事に関わるか関わらないかで大きく二分することができます。仕事のスキルを活かす活動を「プロボノ」と呼びます。
仕事を活かすボランティア「プロボノ」
仕事を活かすボランティアは「プロボノ」と呼ばれます。
「プロボノ」とは、「Pro Bono Publico」というラテン語で「公共善のために」という意味があります。
職業上のスキルや経験を活かし、社会的・公共的な目的のために無償で貢献するボランティアを指す言葉です。
仕事とは関係なく貢献するボランティア
職務とは関係のないボランティアをすることももちろんできます。
NPOや社会福祉協議会などを通して、やりたいボランティアを選択することができます。
職業を活かす「プロボノ」のメリットとは

プロボノの内容は、マーケティングや業務改善、デザインなど様々。自身のスキルを活かして活動することができます。
プロボノとしてボランティアに参加することは、社会だけでなく自分自身や所属する企業にもメリットが期待できます。ここではどんなメリットが期待できるのかを紹介します。
プロボノに参加する社会人のメリット
スキルアップ
特定の企業の中で培ってきたキャリアは、その会社でしか活きないということも考えられます。プロボノはスキルそのものが問われることが想定され、自社以外でも通用するか試される機会になり得ます。
普段とは異なる環境でスキルを活かすことは自らの力になることが期待できます。
人脈の広がり
会社などの所属先に関係なく人とのつながりができるので、人脈の広がりも期待できます。会社と自宅の往復の中では生まれない人との出会いがあるかもしれません。
モチベーションの向上
ボランティアは、支援先などから喜んでもらえる成功体験になります。
そのプロセスに自らが職務を通じて培った経験や知見が入っていると、喜びはひとしおになることでしょう。
プロボノの参加を認める企業のメリット
社会に貢献しているというイメージの向上
企業に所属している社会人がボランティアにプロボノとして参加すると、会社の肩書を持って社会に貢献することになります。
ボランティアの支援先からの目線に立つと、企業イメージは良いものになることが期待できます。
組織を俯瞰してみられる人材が育つ
組織に所属すると、良くも悪くも組織の人間になってしまいがちです。
プロボノに参加することで、俯瞰した目線から組織をみることができるかもしれません。
こうした人材は、組織の強みや課題を客観的な視点で考えることができるという点で、企業にとって役立つといえるでしょう。
社会・NPO法人のメリット
プロボノの参加するボランティアの種類は多岐にわたりますが、社会に貢献することは間違いありません。
また、内閣府の行った「特定非営利活動法人に関する実態調査」で、NPO法人が抱えている課題が明らかになっています。その中で最も多くの団体が課題に挙げたものが「人材の確保や教育」でした。プロボノのような専門知識を有する人材の活躍はNPOの活動に大きく貢献する可能性を秘めています。
社会人ボランティアの参加方法

プロボノの探し方
プロボノをしてみたいと思われた場合、個人でエントリーするマッチングサイトがあります。
他にもエントリー後にチーム単位でプロジェクトに参加できるサービスもあるので、ぜひ興味がある場合は調べてみてください。
また、地域活性化に貢献する団体と地域外にいる志望者を結びつけるサービスなどもあります。
プロボノ以外の社会人ボランティア
仕事と関係がない社会人ボランティアに参加する場合は、一般的なボランティアの探し方をしましょう。
NPO法人の求人や社会福祉協議会の募集を確認し、自分の興味のあるボランティアを見つけましょう。ぼ活!では数多くのボランティアの募集をしています。興味のあるボランティアがあるかぜひチェックしてみてください。
プロボノとNPOをマッチングするNPO理事の話
プロボノ参加者とNPOをマッチングするサービスを提供している認定NPO法人サービスグラントの理事を勤める岡本祥公子さんに日本財団がインタビューを行いました。その中から、プロボノが注目を集めている理由や、参加者の声などについてまとめました。
サービスグラントとは
サービスグラントでは、期間、目的、ゴールを明確にしたプロジェクト支援を実施する団体です。新たなプロジェクトが立ち上がった際に募集をかけ、参加者の興味のあるものやスキルが合致しそうなものに対し、応募してもらっています。チーム型でプロジェクトに取り組めるようにしています。
また、全国各地の社会福祉協議会や生活支援コーディネーターなどをはじめとする「中間支援組織(コーディネーター)」と連携し、新たな参加者と、NPOや地域団体等をつなぐ「GRANT」という取り組みも行っています。こちらは個人で参加ができます。
NPOや地域団体が活動地域やプログラムを「GRANT」登録。同じく登録を行った参加希望者が興味を持つ団体があった場合、マッチングが始まる仕組みです。
プロボノの登録者が増えている理由
2011年に発生した未曽有の大災害、東日本大震災で生き方を再考する人が増えたり、「人生100年時代」や「パラレルキャリア」という働き方や生き方が注目を集めたりしました。他にもコロナ禍で通勤時間が減り、社会貢献や越境学習のためにプロボノに参加する人が増えています。
プロボノ参加者の感想
プロボノでつながるチームには上下関係がなく、みんながモチベーションだけでつながっているので、その体験は新鮮で刺激的という声が多いです。
社会貢献だけでなく、自身の成長も視野にした参加者も
「プロボノ=意識高い系」と捉える方がまだ多いと聞きますが、この空気がやってみようと思う社会人たちの参加を阻んでいる気がしています。
実際、説明会に参加される社会人は、どんなに高いスキルを持っていても、「私に何かできることはあるのでしょうか?」と、謙虚で不安そうな方が多いんです。自信満々に参加するというよりも「等身大でできることをしてみようという方たちの集まり」だということを知ってもらいたいです。
日本財団ボランティアセンターとサービスグラントが募集したプロボノボランティア
日本財団ボランティアセンターとサービスグラントは2024年、鹿児島県の与論島と新潟県長岡市の越後川口でプロボノのボランティアを募集しました。
現在は終了したプロジェクトですが、活動内容が書かれた募集ページを掲載します。ぜひ、参考にご覧ください。
与論島
与論島のプロボノボランティアに関するページはこちらから(サービスグラント)
与論島のプロボノボランティアに関するページはこちらから(ぼ活!)
与論島のプロボノボランティアに関する日本財団ボランティアセンターの記事はこちらから
越後川口
越後川口のプロボノボランティアに関するページはこちらから(サービスグラント))
越後川口のプロボノボランティアに関するページはこちらから(ぼ活!)
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まとめ
社会人にとって、本業との兼ね合いの中でボランティアをする時間を探すのはなかなか難しいかもしれません。
ただ、自らが職業を通じて培ってきた知見や経験を活かすことで貢献できる社会活動は存在します。その中で得られた経験は翻って本業に良い影響を与えることがあります。参加に向けて一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考資料
・内閣府”2022年度(令和4年度)市民の社会貢献に関する実態調査報告書”https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/R4_shimin_report.pdf (参照2024-09-10)
・indeed”キャリアアップに「プロボノ」をすすめる5つの理由”https://jp.indeed.com/career-advice/career-development/importance-of-pro-bono-work-in-your-career (参照2024-09-10)
・日本財団ボランティアセンター”“社会・個人・仕事の「三方良し」”のプロボノが人生100年時代の未来を照らす【Volunteer’s Summit 2024】”https://vokatsu.jp/journal/20240613/ (参照2024-09-10)
・日本財団”仕事で培ったスキルで社会貢献ができる「プロボノ」が、社会に求められる理由”https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2024/101178/social_contributions (参照2024-09-10)
・内閣府”令和2年度特定非営利活動法人に関する実態調査報告書”https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/R2_houjin_report.pdf (参照2024-
09-10)
・特定⾮営利活動法⼈ サービスグラント”プロボノの現状と今後の展望”https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/report33_ikenkoukan_3_4.pdf(参照-09-13)