レポート&コラム

グループワークで見つけ出す障害の在り処 「60分で視野が広がる!?『障害とは?』」セミナー

2022年11月17日
ダイバーシティ
グループワークで見つけ出す障害の在り処 「60分で視野が広がる!?『障害とは?』」セミナー

障害とは〇〇である、と自信をもって答えられますか? 普段何気なく使っているこの障害という言葉が何を意味するのか、立ち止まって考える機会は少ないかもしれません。

ボラセンでは、クイズやグループワークに参加しながら障害について学ぶオンラインセミナー「60分で視野が広がる!?『障害とは』」を開催しています。

10月20日の回では、約60名の参加者が参加し、障害とは何か、自分には何ができるのかを真剣に考えました。本記事の前半はセミナーの様子、後半ではファシリテーターを務めた飯島邦敏さんへのインタビューを紹介します。

障害とは「何」「どこ」?アンケートを通して見えてくる障害へのイメージ

このセミナーは、特定非営利活動法人 障害平等研修フォーラムが実施している「障害平等研修(DET)」をぼ活!セミナー特別版として実施し、共生社会の実現のため、障害とは何かを再考し、今日から自分にできるアクションを見つけることをテーマにしています。

毎回、障害平等研修フォーラムのファシリテーターが講師を務め、この日は群馬県の飯島邦敏さんが、明るい笑顔と快活なトークで進行してくれました。

飯島さんは、障害者団体「DET群馬」の代表として数々のイベントで活躍する一方、ご自身も車椅子利用者として生活されています。セミナー終了後のインタビューでは、当事者だからこそ語れる貴重な体験談をたくさんお聞きすることができました。

Zoomの画面上には常に手話通訳士の方が映り、飯島さんの解説や参加者の皆さんの意見をリアルタイムで通訳します。また、ワークで使用される映像には、字幕と音声ガイドもついています。多様な個性を持つ人々が垣根なく一緒に学べるよう、このセミナーにはこうした細やかな工夫がなされています。

セミナーの冒頭では、アイスブレイクとして、まずクイズに挑戦。日本に住む障害者の総数と、鈴木さん、田中さんなどのよくある名字の人数を比較し、障害者人口が意外と多いことに、参加者の皆さんは驚いた様子でした。今まで障害にあまり馴染みがなかった方も、このクイズを通して、障害者が実は身近な存在であることを発見していきます。

「鈴木さんや田中さんは友人にいるはずです。では、どうして同じ数いるはずの障害者は身近にいないのでしょうか」という飯島さんの問いかけに、はっとする人も。

セミナー本編に入る前に、今の自分が障害をどう定義しているのか、アンケートで確認しました。「障害とは〇〇である」というお題に、それぞれ自由に答えていきます。集まった回答はすぐに共有され、カラフルな画面が出来上がりました。「(障害とは)不得意なこと」「他の人より助けが必要な人」など、障害が個人にもたらす苦労に焦点を当てたコメントが多く挙げられました。

次に、日常に潜む障害を探すワークを行いました。「障害は何?」「障害はどこにある?」という問いをもとに、イラストを見て気がついたことをチャットに投稿します。

障害に「どこ」という疑問を投げかけるのは意外に思うかもしれません。しかし、障害はどんなものなのか、どこにあるのかという観点から考えることで、障害が個人の問題ではなく、身の回りに潜んでることを発見していきます。

グループワークを通して考える「障害とは何か」

続いては、映像によるワークです。参加者の皆さんは、現実とは少し異なる世界で、差別に直面する主人公の姿を見て、何かがおかしい不思議な世界へ迷い込みます。いくつかの不自然な点が隠されたビデオを視聴した後、少人数のブレイクアウトルームに分かれて感想や意見を共有します。

「思ったよりも身近なところに差別があった」など、様々な視点からのコメントが飛び交いました。

中には、「最近はヘルプマークをつけている人に、自分から声をかけるようにしている」と、ビデオから話題を広げて日々実践していることについて共有してくれた方も。

こうした参加者同士の交流タイムを設けることで、一人では思いつかないような考え方に触れたり、自分の意見をさらに深めたりすることができました。

共生社会のために私たちが今できること

セミナーのまとめとして、最初の問いに立ち返ります。「障害とは〇〇である」という問いです。

ワークを終え、参加者の皆さんの回答は大きく異なる傾向を示しました。「(障害とは)存在を無視すること」「人の特徴ではなく、社会の中にあるもの」。このように、障害は個人の苦労だけではなく、社会の中に存在してユーザーとしているものという意見が多く寄せられました。

60分のセミナーを通して、参加者の皆さんの視野が広がったことが伝わります。

「いつかなくせるもの」と、明るい未来を予感させる素敵な回答も。

最後のワークとして、共生社会の実現に向けて今日から自分にできるアクションを参加者それぞれが宣言しました。飯島さんによると、共生社会は一人ひとりの意識と行動を変えることで、みんなで作っていくもの。セミナーを通して視野を広げたら、次は行動に移す番です。

ファシリテーターの飯島さんへのインタビュー

セミナーの終了後、ファシリテーターを務めた飯島さんにインタビューを行いました。車椅子利用者として生活する飯島さんならではの思いなど、貴重なお話が伺うことができました。

Q1 飯島さんから見たバリアフリー(とは何か)とその現状

私は車椅子生活を始めて11年と日が浅い方ですが、障害者になって初めて、日常がこんなに大変なのかと驚きました。例えば車椅子だとトイレにも行けないし、段差があるお店には入れません。

一方、去年開催された東京オリンピック・パラリンピックを契機に、そうした障壁は徐々に解消されてきていると感じます。都市部でも地方でも、車椅子に乗ったまま利用できるコンビニや公園が増えてきました。こうした施設設備などの変化は実感しています。

意識の面に関しては、課題が残っています。日本には自分が差別をしていると思っていない人が多く、障害者側も差別に気がついていないことがあるのです。「車椅子を利用している人は遠慮してください」という言葉を受けるなど、まだまだ根強く差別が残っていると思います。

しかし、こうした差別意識も近年少しずつ改善されてきたという印象です。例えば以前はコンビニで飲み物を買う際、車椅子から手の届く範囲の商品しか選択肢がありませんでしたが、今では「(上の商品を)取りましょうか」と声をかけて頂ける機会がとても増えたと感じます。

Q2 共生社会への理解が進んだら、どんな未来を実現したい?

最終的に望むのは、多様性が当たり前のベースで、共生社会が自然にできている世界です。「昔は『障害者』という言い方をしていたよね、『障害者』は差別用語だよね」という考え方が浸透している日本になってほしい。それぞれが個性を活かして輝ける、みんなが自信を持って暮らしていける社会になればいいと、日々願っています。

Q3 私たちは、具体的にどんな行動から始めればいいのか?

「声をかける」これが最も重要。コミュニケーションが第一歩です。

一番残念なことは、困っている人に気がついても、どうお手伝いしていいか分からないから何もしない、何もできない、という状態です。何をしていいか想像がつかないときは「どうお手伝いすればいいですか」と声をかけるのです。

もちろんセミナーなどで学んだ対応を実践するのもいいですが、人それぞれ困っている原因は異なります。だからこそ、まずは恐れず声をかけてください。

街やお店で困っている方は、障害者だけではありません。小さなお子さんがいる方や、外国から来た方、お年寄りなどさまざまです。大切なのは「障害者だから」ではなく、「困っているから」手助けする、という心構えで行動を起こすことです。

おわりに

意識を変えれば、行動が変わります。共生社会を実現するためには、現代を生きる私たちが変わる必要があります。本記事を読んで障害について考えた方は、ぜひ自分の住む地域で困っている人に声をかけ、行動を起こしてみてください。私たち自身の意識と行動によって、多様性が当たり前である社会が作られていきます。

TEXT by スタジオノクタ

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