レポート&コラム

ボランティアを通じて得た大学生たちのプライスレスな「何か」
~出会い、体験を参加者が語る~(前編)

2024年11月1日
その他 グローバル 災害 自然・環境 スポーツ
ボランティアを通じて得た大学生たちのプライスレスな「何か」<br>~出会い、体験を参加者が語る~(前編)

大学生のボランティア経験者はどのようなモチベーションで活動に参加し、参加後にどういったメリットを感じているのでしょうか?

誰かのために役立ちたいから?就職活動に有利だから?返ってきたのは意外な答えばかりでした。

「やりたいと思っているが、決心がつかない」という人はもちろん、「自分にボランティアは関係ない」と思っている人も、ボランティア活動は学生生活とはまったく異なる世界を体験できる場所になるかもしれません。

今回は、過去に日本財団ボランティアセンターが主催した活動に参加した3人の大学生に、ボランティアに関わって得たものについてそれぞれの等身大の思いを語ってもらいました。

参加者紹介

【遠藤 彩来(エンドウ・サキ)さん】
<大学>
東京学芸大学教育学部 2年
<ボランティア活動>
・2024年2月 オランウータンの森 再生プロジェクト第1陣

【佐藤 花奈(サトウ・ハナ)さん】
<大学>
さとのば大学 2年、ネットの大学managara 2年
<ボランティア活動>
・2022年8月 旅するボランティア・与論島
・2024年3月 東京マラソン2024 ぼ活!U25チーム

【澤邑 颯(サワムラ・ソウ)さん】
<大学>
学習院大学 法学部・法学科 3年
<ボランティア活動>
・2023年6月 希望のオリーブ畑 復興プロジェクトin ふくしま 
・2023年9月 気仙沼の”いま” ~「海と生きる」を学ぶ4日間~ 
・2024年6月 第10陣 災害ボランティア 令和6年能登半島地震 ~珠洲に希望を、音楽を~

聞き手
【二宮 雅也(ニノミヤ・マサヤ)氏】

日本財団ボランティアセンター 参与
文教大学 人間科学部人間科学科 教授

それぞれの活動歴

二宮氏(以下、二宮) 皆さんはじめましてなので、これまでのボランティア活動を共有しましょうか。

遠藤さん(以下、遠藤) 私は、2024年2月にマレーシアのボルネオ島で行われた植林活動(オランウータンの森 再生プロジェクト)に参加しました。参加当時は1年生の終わり頃でした。

二宮 ぼ活!で参加した活動はこの植林活動だけかな?

遠藤 はい、そうですね。

二宮 大学以前は?

遠藤 中学3年生の時に一度だけ、小さな地域の老人ホームの夏祭りにボランティアとして参加しました。

二宮 次に、佐藤さんは「旅するボランティア」で鹿児島県の与論島に行って、その後に東京マラソンのボランティアもしたんだね。高校生の時とかはなにか活動しましたか?

佐藤さん(以下、佐藤)与論島に行った時がそもそも高校3年生でグループ中で最年少だったんです。高校生の時、母校の放課後学習のボランティアに1年通っていたんですけど、それ以外はないですね。

二宮 最後の澤邑さんはたくさん活動していますね。福島県での農作業のボランティア、宮城県の気仙沼市のビーチクリーンや、令和6年能登半島地震の災害ボランティアにも参加したんだね。

澤邑さん(以下、澤邑)そうですね。たくさんやっちゃいましたね。

身近じゃなかったボランティア。怖い?敷居が高い?

二宮 澤邑さんは高校生や中学生の時にもボランティアに参加していたのかな?

澤邑 全く。1回もないです。怖いものだと思っていたんで。

二宮 怖いもの?

澤邑 そうですね、怖いっていうか敷居が高かったです。

座談会の澤邑さん

二宮 他の2人も同じような意識はありましたか?

遠藤 周りでやっている人もいないので情報もないですし、まずどこから申し込むんだろうって感じでした。

佐藤 私も身近じゃなかったですね。住んでいる場所も災害が起きたことがなかったので、被災地のボランティア活動とかは、国語や道徳の教科書を通して知る「世の中にはそういう活動をやっている人たちがいるんだな」くらいの認識でした。

澤邑 正直、僕は自分自身がボランティアをするような人だと思っていなかったです。自分がボランティアのことを知らな過ぎたのもあるのですが、すごい人とか、聖人君子みたいな人がボランティアに参加しているイメージでした。他人を助けるほど自分がどうなのかって思っていました。

ただ、大学2年の時に受けたボランティアに関する授業で、「興味関心があるものに参加して、自分が勉強するような形でもいい」という話を聞いたんです。単純にボランティアで行く場所を知りたいっていう、それぐらいの動機でも参加していいんだなっていうのを知って、ハードルが一気に下がったと思います。

座談会の様子

参加して変化したイメージ ボランティアは「する側」が学ばされる

二宮 活動に参加する前と後で、ボランティアという言葉に対してイメージの変化はありましたか?

遠藤 ボランティアをすることはこちらが 「何かをしてあげる」 、 「助ける」といった「与える側」だと思っていたと話していましたが、マレーシアの植林活動で、ボランティアは「する・してあげる」じゃなくて、むしろこちら側がいろいろ学ばされているな、っていうことに気づきました。一方的ではないというのが、参加前後で変わった意識です。

二宮 一方的じゃなく双方向だと。それを一番感じた瞬間はどんな時でした?

遠藤 私たち学生ボランティアは、環境問題を解決する手助けをするために派遣されたはずですが、すぐに戦力になるわけではなく、現地スタッフの先住民の方に、苗木の植え方や熱帯雨林の自然のことなど、いろいろ教えてもらいながら活動しました。まっすぐに仕事に取り組む現地スタッフさんの姿を見て、こちらが逆に学ばされました。

佐藤 私の中で一番変わったのは、ボランティアっていう言葉に含まれる活動の多さに気づけた点です。

ボランティアって言われたとき、一番最初に出てくるのって、災害支援とか、海岸のゴミ拾いのような社会的意義が大きいものとか、小学校のお祭りを運営するとか、朝、校門の前に立って挨拶してくれるみたいな、地域に根ざした活動しか思い浮かびませんでした。

ですが、東京マラソンのボランティアを体験して、ボランティアに含まれる活動の幅の広さを感じました。いろいろな活動があるなって。

それまで東京マラソンがボランティアで運営されていることを知りませんでしたし、自分の好きなものとかに関わりたいみたいなボランティアもあるんだって知れたのが一番の変化かもしれないです。

座談会の澤邑さん

澤邑 一番変化したのは、参加前はただ強い人が弱い人を助けに行くみたいな「する側」と「される側」といった関係で、ボランティアは「する側」に偏った行動なのかなと思っていました。でも、する側にも得るものがあったり、何よりも本とかテレビ以外にも、自分が「知りたい」って思ったことを直接「知るツール」としてボランティアはすごくいいなって思ったことが一番の変化かもしれないですね。

二宮 今は、スマートフォンとかを使えば、すぐに検索できる時代なのにね。

澤邑 文字や写真からでは全然分からないことも多いです。能登半島地震の災害ボランティアで訪れた石川県珠洲市のことは、ニュースでは見ていたんですけど、実際に被災地を歩いてみると「こういう場所で、こんな自然があって、これくらいの人が住んでいるんだ」とか、メディアでは紹介されなかった情報を知ることができました

テレビや本では知ることができないことを、実際に自分自身が訪れて知ることができるのはいいなって思っています。今は、そんなふうにボランティアを利用していきたいという気持ちに変わりました。

知らない土地を知り、異文化を知ることもできる

二宮 大学生の皆さんは、就職などこれからの進路・キャリアを考える時期だと思います。その中でボランティアはどんなふうに皆さんの糧になっていますか?

澤邑 大学に行っていると、やっぱり大学生にしか会わないんですよね。異なる世代の人と会えるという違いがボランティアにはあります。

あと、ぼ活!の活動では、交通費を負担してくれるプログラムがあって、負担が少なく全然自分が知らない街に行って、全然知らない人と知り合うことができるのはすごくありがたいですね。僕は東京の大学に通っているので、観光以外で地方に行くことが少ないです。なので、東京との生活の違いとかを知りたいという思いはありました。社会人になって東京以外へ転勤するのは少し怖かったんですが、ボランティアで何度も地方に行ったことで、最近は地方もいいじゃんって思います。就職先も全国転勤があるところを考えられるようになりました。

二宮 交通費の話が出てきたけど、交通費なしで全額自己負担だと参加をためらうかな?

澤邑 そうですね・・・結構厳しいですかね。交通費が自己負担だと、これくらいお金を使ったら、どれくらい得られるものがあるかを考えちゃうかもしれない。逆に交通費の負担がないと、実際何も得られなくてもいいやって思いながら気軽にできます。

二宮 佐藤さんはどうですか?

佐藤 私は高校生の時に与論島に行ったので、大学になってからは東京マラソンのボランティアしか行っていないです。最初に参加した時は、ただ与論島に行ってみたかったんです。そしてそこで出会った仲間にもう一度会いたくて東京マラソンのボランティアに参加しました。メンバーみんなが入っているLINEのグループがあって、「(東京マラソンのボランティアに)行く?」という声にみんなが「行く」って言ったので、私も参加しようと思いました。今度、ボランティアに参加する機会があった時も、多分同じように「行ったことない場所に行きたい」とか「1回会った人にもう一度会いたい」みたいな動機になると思います。正直、就活に使えるとか考えたことは1回もなかったですね。

座談会の遠藤さんと佐藤さん

二宮 なるほど。遠藤さんはどうかな?

遠藤 私は留学を目指していて、海外に1年間くらい、卒業を先延ばしにしてでも行きたいと思っています。ずっと海外志向があったのですが、今回マレーシアにボランティアに行く以前は、海外に行ったことが一度もなかったんです。

この活動を知ったきっかけは、留学・国際交流をしたい人たちが集まるサークルの先輩が教えてくれたことでした。3万円で12日間の宿泊費や、往復の飛行機代などを負担してくださるという話だったので、挑戦したいという気持ちを我慢せずにはいられませんでした。

マレーシアのプログラムに一緒に参加した男の子が言っていた言葉を借りると、「大学生ってお金はないけど時間はたっぷりある」、社会人になると「お金はあるけど時間がない」って言われて、確かにそうだなと思うんです。だから「ぼ活!」は大学生がボランティアに挑戦する上でありがたい存在だと思います。

あと、今までに異文化交流をしたことはありましたが、実際に異文化体験をしたのは今回が初めてでした。マレーシアには、マレー人以外にも中国系の人、インド系の人もいます。活動の中では、先住民の方と関わる機会もありました。

宗教も、イスラム教があって、仏教があって。どうして宗教が原因で戦争が起きるのか、宗教が生活に根付く感覚が日本に住んでいるだけではわからなかったのですが、現地に行くことで少し考えたり、知るきっかけになりました。

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後編では、ボランティアで得た仲間と活動後も続く思い出や、参加する価値について話します。

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