日本財団ボランティアサポートセンター(以下、ボラサポ)が2021年10月に立ち上げた「ぼ活!」では、ボランティア活動に役立つセミナーを開催していきます。その第1弾として、「フローラン・ダバディとフランスを学ぶ ~EN ROUTE VERS PARIS 2024~」のDay1を10月28日(木)にオンラインで開催し、700人以上にご参加いただきました。
※記事の内容は2021年10月28日時点のものです。
1974年にパリで生まれたダバディさん。旅にあこがれ、旅先で現地の人と話したいという思いから、さまざまな言語を学ぶなかで日本語にたどりついたのだとか。来日してスポーツに関するテレビの仕事につき、世界中を取材。訪れた国は40か国にのぼります。サッカー日本代表のフィリップ・トルシエ監督の通訳兼アシスタントも務めました。
ボンジュール、サバに宿るフランス人の気質
司会進行をつとめるボラサポの田中裕太郎さんが呼び込み、ダバディさんがにこやかに登場。手話通訳士も加わり、セミナー開始です。
上段 手話通訳士、下段左 フローラン・ダバディさん、下段右 ボラサポの田中裕太郎さん
「COMMENT CA VA?」はちょっと丁寧な「お元気ですか」という意味。
ダバディさんはフランス語のあいさつ「BONJOUR(ボンジュール)」と「CA VA?(サバ)」を取り上げました。ボンジュールには「良い1日を」「いい天気ですね」という意味が込められています。フランスの人々がお互いに気持ちよく過ごすための、大切なあいさつの言葉だといいます。
ボンジュールに続けてよく使われるのがサバです。英語の「How are you?」にあたる言葉ですが、サバと声をかけるとフランス人は「本当に疲れていて、今日はもう無理です」などと正直な状況を答えます。「外国の方にしてみれば詳しく尋ねたつもりはなく、びっくりするかもしれませんが、特に親しい間柄でなくても、フランスの人はすぐに心を開くのです」とダバディさん。
ほかにも「ジェスチャーだけで答えることが結構ある」「朝一番でカフェに寄り、討論してから仕事に行く」「仕事だけで一日を終わらせず、遊びや勉強にも力を注ぐ」といったフランスの人々の特徴を教えてくれました。
東京2020大会の振り返りとパリ2024大会の展望
ここでダバディさんは東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下東京2020大会)の話題に触れました。「みなさんの東京2020大会はいかがでしたか? どんな発見をしましたか?」と呼びかけます。
チャットには「ボランティア楽しかった」「無事に終わってよかった」「気づきがあった」などたくさんのコメントが寄せられました。
ダバディさんは、ジャーナリストとして取材にあたりましたが、大会直前まで開催が不安視されていたなか、選手たちが競技場に立った瞬間に見せた解放感、ほっとした表情が印象に残ったそう。
閉会式でのパリへのバトンタッチの映像について、「日本のプロモーションは謙虚で、あまり言いすぎないですが、フランスはマクロン大統領をエッフェル塔のてっぺんに上らせ、ボルダリングやスケートボードの選手が世界遺産の屋根の上をガンガン走り、大会のイメージを打ち出しました。自分にプレッシャーをかけ、あとはやるしかない、というのはフランス人の国民性なので、いい意味で笑えました」と話します。
また、パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会(以下パリ2024大会)ではじめて採用されるブレイクダンスにも触れ、「スポーツとアートの間にある競技。これはうまくいけば、どんどん変わっていくのではないかなと思います。自分を表現するスポーツがもっと増えてよいのではないでしょうか」と考えを述べました。
パリ2024大会のロゴマークに添えられたフランス語は「一緒に行きましょう」という意味です。最近のパリでは、最も有名な大通りのシャンゼリゼをみんなでランニングするイベントやコンコルド広場でスケートボードなどの新しいスポーツを体験するイベントなどが行われているそうです。
さらに驚くべきプランも教えてくれました。「開会式はスタジアムの中ではなく、セーヌ川で開催する方向で検討されています。パリの街のアイデンティティはスタジアムではないんですね。フランスの人々に大事な水を与えてくれた聖なるセーヌ川へのお礼から始めないといけない、という考えです」とのこと。選手たちはペニッシュというフランスの舟で登場するのか、はたまたエッフェル塔のふもとから現れるのか。スペクタクルだけがセーヌ川の上になるのか。「詳しいことはまだわかりませんが、見たことのないパフォーマンスにすると開催側が約束したので、ワクワク、ドキドキしています」とダバディさん。
ダバディさんはパリ2024大会のキーワードのひとつに「地域再生」をあげました。たとえばパリ郊外の街、サンドニには治安に不安を感じる人もいますが、パリ周辺では最も多民族的で人口の平均年齢が若い地域で、必然的に新しいフランスがそこにあるともいえます。こういった場所にも選手村などの拠点をつくり、フランス社会が抱えている階級社会や地域の対立などの問題解決の糸口にしようと取り組むそうです。
さらにダバディさんのお気に入りの場所を教えてくれました。Palais de Tokyo(パレ・ド・トーキョー)という現代美術館です。ここはストリートスポーツの拠点にもなっているのだとか。ダバディさんは「彫刻の上にスケートボードで乗り上げていいのかと思われるかもしれませんが、パリ市が入念に企画し、管理を考えて決めたことです。パリ郊外に新しい施設を作るのではなく、歴史的建造物などの中に若者の文化を取り込んでみようということで、今すごくうまくいっている」と話します。
また、今年で没後ちょうど200年となるナポレオンの言葉「勇気は愛のようなものである。育てるには希望が必要だ」を例に、これからがんばろうというとき、Come On!とテンションを上げて自分を鼓舞するのではなく、やる意義があると意味付けをしてはじめて勇気を出すというフランス人の考え方を伝えました。
ダバディさんは事前に寄せらせた参加者からの質問にも答えてくれました。その一部をご紹介します。
Q ダバディさんといえばトルシエさんの通訳。当時の思い出は?
A 一生忘れられないのは2002FIFAワールドカップ初戦、さいたまスタジアムでのベルギー戦かもしれません。待ちに待った国際的スポーツイベントが始まる瞬間の感動には、スポーツしかもたらさないものがありました。
Q フランス語の勉強をしているのですが、伸び悩んでいます。語学上達の秘訣は?
A 千里の道は一歩から。一つひとつ好きな言葉を選んで勉強して、言葉の持っている意味、言葉を通じて見えるその国の文化を学びます。人生のひとときだけに使う言葉へのアプローチと考えれば、その瞬間を楽しむことがコツだと思います。
Q パリで英語はどのくらい通じるものでしょうか。
A おそらく6割以上のフランス人は英語ができるので、パリでは街の人、店、警察、消防の人と英語で会話できると思います。。ではフランス語を使う意味は?というとフランス語を使ってフランス人を喜ばせるため、あとは自分のためですね。自分の心をその国に開くためのツールとして、フランスに行くならフランス語を聞く耳を持たないのはもったいないなとは思いますね。
多くの感動を生んだ東京2020大会の熱も冷めやらぬところですが、ぼ活!そしてボランティアのみなさんは、その経験を生かすべく、パリ2024大会に向けてスタートを切りました。くしくもこの日はちょうど1000日前。そんなタイミングを共有できたことで、パリ2024大会への期待がさらにふくらむイベントとなりました。
現在「フローラン・ダバディとフランスを学ぶ ~EN ROUTE VERS PARIS 2024~」のDay2,Day3についても申込受付中です!Day1に参加していなくても、学べる、楽しめる内容になっています!ご参加お待ちしております。
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