聴覚障害者支援ボランティアとは?

聴覚障害者支援ボランティアは、聴覚障害のある方の日常生活や社会参加をサポートする活動です。聴覚障害者の支援と聞くと、「手話ができないと難しそう…」と感じる方もいるかもしれません。手話を用いることで聴覚障害のある方とコミュニケーションしやすくなりますが、ボランティアの内容は多岐に渡るので、必ずしも手話スキルを必要としない活動も数多くあります。大切なのは、スキルに関わらず、相手と真摯に向き合い、互いに理解を深めようとする姿勢です。こちらの記事では、聴覚障害者支援ボランティアの主な活動内容を紹介します。また、2025年11月に開催されるデフリンピックのボランティアについて触れながら、初心者でも安心して挑戦できるポイントを解説しますので、ぜひ読み進めてみてください。
聴覚障害者支援ボランティアの活動内容は?
聴覚障害者支援ボランティアの活動の種類
先にお伝えした通り、聴覚障害者支援ボランティアはさまざまですが、大きくは、手話スキルを必要とする活動とそうでない活動の2つに分けることができます。
手話スキルを活かすボランティア活動

手話スキルを活かすボランティア活動の例として、福祉施設での行事や、小中学校での手話体験学習などの場面で、手話を使ってコミュニケーションのサポートが挙げられます。また、施設利用者の日常生活の手伝いや、作業の付き添いを行うこともあります。専門的な通訳では手話通訳士などの公的資格を持っていることが望ましいですが、コミュニケーションのサポートとしては、資格の有無に関わらず手話スキルがあれば大丈夫です。
手話スキルがなくても参加できるボランティア活動

手話スキルに関わらず参加できる活動には、イベントの運営サポートがあります。聴覚障害者向けのデフスポーツ大会や講座などのイベントで運営補助を行います。誘導や受付、会場案内など、イベントがスムーズに執り行われるようサポートしたり、デフリンピックやデフスポーツの大会では、選手のサポートや競技補助を行ったりします。これらは、コミュニケーション方法を工夫し、周囲の人と協力して進めることで、手話ができなくても聴覚障害のある方を支援できる活動です。
スキルに不安があるなら、まずは初心者向けのセミナーから

「興味はあるけど、知識やスキルに自信がない…」という人でも、障害者支援に関心を持ち、積極的にサポートしたいという気持ちさえあれば、挑戦できる活動はたくさんありますが、その一歩を踏み出すのに不安を感じる人が多いかもしれません。少しでもその不安を和らげるために、「ぼ活!」で開催している手話セミナーに参加してみるのはいかがでしょうか。「ぼ活!」では、手話ができる人向けのものから、気軽に参加できる初心者向けのもの、さらには障害者支援そのものについて学べるセミナーも開催されています。また、こうしたセミナーは、同じように関心を持つ仲間と出会うきっかけにもなります。新しく出会った仲間たちと、知識やスキルを身につけるだけでなく、ボランティアに対する素直な想いを話し合うことで、活動への後押しとなるはず。聴覚障害者支援ボランティアへの最初の一歩として、まずは気軽な気持ちで、セミナーに参加してみてください。
▼「ぼ活!」で行われている手話や障害に関するセミナーはこちら
ボランティアに役立つ多様なテーマのセミナーを開催 ぼ活!セミナー ラインナップ紹介
聴覚障害者支援ボランティアで得られるもの
誰かの役に立つだけでなく、自身の成長にもつながるボランティア活動。聴覚障害者支援ボランティアに参加することで、以下のような学びや経験を得ることができます。
音声言語とは異なる手話 新しい言語や文化に触れる
言語には、「音声言語」と「手話言語」の2種類が存在します。日本語や英語など耳で聞き取ることでコミュニケーションを図る「音声言語」に対して、「手話言語」は手や指の形、位置、動きに加えて、表情や強弱を交えながら、視覚を通して意思や気持ちを伝える言語です。受け取る側は、相手の表現を目で見て理解します。聴覚障害者支援ボランティアに参加することで、手話という音声とは異なる新しい言語に触れる機会が自然と多くなります。さらには、手話言語を通して、聴覚障害のある方の日常生活への理解を深めることもできるのです。
様々な相手に対するコミュニケーション力が磨かれる
聴覚障害のある方にとって、手話に限らず、表情やジェスチャー、筆談なども重要なコミュニケーションツールといえます。ボランティア活動を通じて、相手の小さな変化を読み取ろうとする力や、自分の意図をうまく伝える力が磨かれるでしょう。この能力は、ボランティアの場だけでなく、仕事や海外の人との交流など、さまざまな状況で役立ちます。
多様性の理解や、教育・福祉系分野への興味関心が高まる
手話スキルや、障害の有無に関わらない多様性への理解は、ボランティア現場でともに活動する際や、来場者の中に障害のある方がいた場合の対応にとても役立つでしょう。また、こうした分野の興味関心、スキルを磨いていくと、福祉施設や特別支援学校、教育機関など、直接関連する分野では特に大きな強みになるでしょう。これらの分野で就職を目指している、または興味がある人たちにとって、聴覚障害者支援ボランティアに参加した経験は、実体験に基づいた深い学びに繋がることはもちろん、説得力を持って熱意をアピールすることができるはずです。
日本初開催!東京2025デフリンピックのボランティア

初めての方でも参加しやすい聴覚障害者支援ボランティアとして、スポーツ大会の運営サポートがあります。その具体例として、2025年11月に開催されるデフリンピックが挙げられ、ボランティアの活躍が期待されています。
デフリンピックとは?

デフリンピックとは、聴覚障害のある方のための国際的なスポーツ大会です。ルールはオリンピックとほぼ同じですが、聴覚障害のある方も公正に競技ができるよう、さまざまな工夫がされています。その記念すべき100周年大会が、2025年11月に東京で行われ、日本では初の開催となります。東京2025デフリンピックでは、大会ビジョンとして、障害の有無に関わらずコミュニケーションを取り合い、互いを認め、尊重し合う社会を目指して「誰もが個性を活かし力を発揮できる共生社会の実現」を掲げています。このビジョンを支えるボランティアたちも、手話スキルや経験を問わず、幅広く募集されました。(現在は募集を終了しています。)
▼東京2025デフリンピックボランティアについての記事はこちら
100周年の歴史をつなぐ!東京2025デフリンピックボランティア募集中 | ぼ活!
▼前回のブラジル大会開催後に行った振り返りセミナーのレポート記事はこちら
聴こえない人の世界大会とは?!ボラセンスタッフが見た「デフリンピック」 | ぼ活!
デフリンピックでのボランティア活動内容
このデフリンピックのような国際大会では、世界中から集まる選手や観客が最初に出会うボランティアは、大会の雰囲気を創り上げる重要な存在であり、本大会でも活躍が期待されています。ボランティア活動の主な内容は下記の通りです。
・選手・観客・関係者の案内・誘導
・会場における運営サポート(入場者管理、清掃など)
・ドーピング検査補助、表彰式の運営補助
・広報・メディアサポート
・手話言語を活かした各種業務のサポート
デフリンピックのボランティア応募者18,903人の中から選ばれた3,500人のうち、半数以上が手話スキルを持っていない人たちです。このことからも、手話ができなくても、貢献できる活動が多数あることがわかります。
手話に触れる事前研修
今回のデフリンピックボランティアの参加者たちは、大会前に事前研修を受講します。この研修では、実際のサポートに向けて、ボランティア活動の基本や詳細な内容だけでなく、手話言語研修やろう者の文化理解について学ぶことができます。世界各国から選手が集まる大会に向けて日本手話だけでなく簡単な国際手話の表現を習得できるのは、国際大会ならでは。事前に学んだ知識を、ボランティア当日に活かすことができたり、伝えたいことが相手に伝わったときには大きなやりがいや喜びを感じることができるはずです。
「ぼ活!」で行われた聴覚障害者支援ボランティアの体験談


「ぼ活!」では、これまでもさまざまなデフスポーツ大会でボランティア派遣を行ってきました。以下の記事ではその活動レポートを紹介しているので、ぜひご覧ください。
▼過去に行われたデフスポーツ大会の活動レポートはこちら
ボランティアと手話を通じて広がる世界「デフバレーボール世界選手権2024 沖縄豊見城大会」ボランティアレポート | ぼ活!
2025年東京開催のデフリンピックをご存じですか?~デフ陸上国際大会運営ボランティアレポート~ | ぼ活!
デフスポーツの裾野を広げ2025年デフリンピックへ 第24回デフバレーボールカップ川崎大会 | ぼ活!
「ぼ活!」で行ったボランティアは、手話スキルがなくても参加できる活動が中心ですが、ボランティアを通して手話に触れたことでその魅力に気づき、新たな世界が広がったという人もいます。また、年齢問わず普段は知り合えない人たちと出会い、交流を深めることができるのもボランティアの醍醐味です。当日困ったことに遭遇しても、新しく出会った仲間たちと協力し助け合うことで乗り越えることができます。さらに、デフスポーツの選手たちは、ボランティアが笑顔で懸命に伝えようとしている姿に勇気づけられるといいます。聞こえる、聞こえない、手話ができる、できないにかかわらず、積極的にボランティアに取り組むことで、その気持ちは必ず伝わります。
聴覚障害者支援ボランティアに気軽に参加してみよう
聴覚障害者支援ボランティアには、手話スキルを活かせるものから、特別な知識や経験がなくても参加できるものまで、さまざまな種類があります。ぜひ、「やってみたい」という気持ちを大切に一歩を踏み出してみてください。その一歩が、誰もが共生できる社会の実現に繋がります。
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参考資料
・”一般財団法人全日本ろうあ連盟” デフリンピックについて(参照2025-8-20)
https://www.jfd.or.jp/sc/deaflympics/about/
・”公益財団法人 東京都スポーツ文化事業団 デフリンピック準備運営本部” 東京2025デフリンピック大会概要(参照2025-8-20)
https://deaflympics2025-games.jp/main-info/about/#gsc.tab=0
・”TOKYOパラスポーツナビ”橋本 一郎さん(手話通訳士)インタビュー記事
https://www.tokyo-parasports-navi.metro.tokyo.lg.jp/interviews/ichiro-hashimoto(参照2025-8-20)
・”PRTIMES”デフリンピック開幕まで、約100日!ボランティア40人が国際手話を学ぶ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000098085.html (参照2025-8-20)
・”熊野町ボランティアセンター”
http://park11.wakwak.com/~kumano-shakyo/volunteer/vol02/index.html(参照2025-8-20)
・”名古屋市身体障害者福祉連合会”
https://meishinren.or.jp/modules/info/index.php?action=PageView&page_id=76(参照2025-8-20)
・”日本財団法人全日本ろうあ連盟”手話言語法の制定へ!
https://www.jfd.or.jp/info/misc/sgh/20200124-sgh-shuwadego3.pdf (参照2025-8-27)
・”朝日新聞”記事「手話は言語」広めたい 条例を制定した自治体は今」
https://www.asahi.com/articles/ASQ256S4RQ1ZULUC013.html (参照2025-8-27)