更新日:2024/11/15
パラリンピックボランティアの活動とは
パリ2024オリンピック・パラリンピックの開催を機に、大会を陰から支えるボランティアの活動に興味を持っている方々が多くいるかもしれません。一体、ボランティアはどんなことをするのでしょうか。前回の東京2020オリンピック・パラリンピックを中心に振り返り、華やかなパリ大会の裏で活躍するボランティアの姿を想像してみてください。
東京2020大会のボランティア活動
まず、オリンピック・パラリンピックのボランティアは大きく2つに分けられます。一つは「大会ボランティア」。もう一つは「都市ボランティア」です。
大会ボランティアはその名の通り、競技運営や取材に来たマスメディアのサポートを行います。したがって、活動場所も大会の競技会場や選手村になります。
一方で都市ボランティアは、大会の観戦に来た国内外の旅行者を対象に、競技会場外で観光や交通案内などを行います。活動場所も空港や主要な駅、会場の最寄り駅など広域にわたります。
大会ボランティア
大会運営に携わる大会ボランティアの役割は、さらに9つに分かれます。ここでは9つそれぞれの活動内容や、向いている人の特徴をご紹介します。
①「移動サポート」~大切な関係者を運ぶドライバー~
大会関係者らが移動する車の運転が主な内容です。車内では車窓から見える建造物などについて聞かれることもあるかもしれません。「ドライブに自信あり」「道路事情に詳しい」「外国語を使ったコミュニケーションを楽しみたい」といった方に向いています。
②「競技」~競技の運営をサポート~
競技運営のサポートを行う役割を担います。競技会場内の備品やコートの整備をすることもあります。「競技経験のある人」「アスリートの熱気を間近で感じたい人」といった方に向いています。
③「案内」~大会の顔~
競技会場でのチケットチェックや、会場客席での観客の案内などを行います。「国籍を問わずにたくさんの人とコミュニケーションをとれる人」「困っている人への声かけが得意な人」などが向いています。
④「ヘルスケア」~健康の守り人~
会場内で具合が悪そうな人がいないか見回り、発見時は医務室への搬送サポートなどを行います。ドーピング検査の対象選手の案内といった役割も担います。「人の顔色の変化に敏感な人」「相手を元気づけることができる人」「救命講習を受講したことがある人」といった人が向いています。
⑤「運営サポート」~裏方で大会を支える~
選手村の運営サポート、ユニフォームの配布や各競技会場でのスタッフ・ボランティアの受付などを行います。受付時には混雑が予想され、正確で迅速な対応が求められます。「混雑時に人を上手にさばける人」「慌てず落ち着いて作業できる人」「ホテルのフロント業務に携わっていた人」などが向いています。
⑥「アテンド」~重役とも接するコンシェルジュ~
海外から来た大会関係者などを1対1でアテンドします。「秘書」兼「通訳」兼「コンシェルジュ」のような役割を担います。関係者が参加する会議の受付などを行うこともあります。「知らない国の人と接したい人」「ボディーランゲージに定評がある人」「文化の違いを尊重できる人」などが向いています。
⑦「式典」~大会を彩る~
選手に手渡すメダルを間近で見ることができます。向いている人は「感動の場面に立ち会いたい人」、「選手を間近で祝福したい人」などです。
⑧「メディア」~露出に貢献する広報マン~
メディアセンターなど報道機関の受付や問い合わせ対応、取材や記者会見のサポートを行います。対応する際のコミュニケーションは英語になります。「報道やPRに興味がある人」「メディアの現場を見てみたい人」「外国語でコミュニケーションを取りたい人」などが向いています。
⑨「テクノロジー」~入力と通信機器の取り扱い名人~
専門のスタッフと一緒に競技結果を入力したり、競技結果をコピーしたりします。通信機器の貸出といった役割も担うため、知識がある人におすすめです。スタッフとの連携や正確な情報共有が求められます。「数字が好きな人」「情報、状況の把握が素早くできる人」「IT企業経験者」などが向いています。
都市ボランティア
都市ボランティアとは
冒頭でも書いた通り、大会ボランティアと比べ都市ボランティアの活動は多岐にわたります。
東京2020オリンピック・パラリンピックでは、空港での選手の出迎えや見送りのほか、聖火の集火式や点火セレモニーの会場となった都庁や代々木公園で、打ち水や熱中症対策グッズの配布などを行いました。ほかにもファンゾーンなど多くの場所で観戦客や観光客に接する都市ボランティアは、いわば「開催都市の顔」と言えます。
開催都市の観光案内ができる人や外国語が堪能な人。手話ができる人など幅広い人材が求められます。
ファンゾーンのボランティア~ラグビーW杯フランス大会から~
都市ボランティアは、オリンピック・パラリンピック以外の大会でも活動しています。
2023年に開催されたラグビーワールドカップフランス大会では、パブリックビューイングやグッズ、飲食物の販売などが行われる「ファンゾーン」が、開催都市9会場とホストシティ1会場の計10会場に設けられ、それぞれで開催都市が採用した都市ボランティアが活動していました。
ファンゾーンには、ラグビーの体験ブースも設置され、運営をサポートする都市ボランティアも、来場者とラグビーボールでパスを交換をするなど、スポーツイベントを支えながら、ボランティア自身もさまざまな形で楽しむ姿が見られました。
▼レポート記事はこちら
ファンゾーンで活動する都市ボランティア【フランスラグビーW杯&2024年パリオリンピック・パラリンピックの現場から②】
オリンピック・パラリンピックボランティアの募集人数は?活動期間は?
東京2020オリンピック・パラリンピックでは、ボランティアの募集人数や活動期間、応募方法が「大会ボランティア」と「都市ボランティア」で異なりました。以下では、それぞれについて紹介します。
大会ボランティアの募集人数と活動期間
東京2020オリンピック・パラリンピックの大会ボランティアでは、募集枠約8万人に対して約20万4千人の応募が集まり、約2.6倍の倍率になりました。今年開催されているパリ2024オリンピック・パラリンピックでも、4万5,000人の募集に対して、30万人以上(倍率約6.7倍)と多数のの応募がありました。
過去の2016年のリオデジャネイロ大会(ブラジル)では5万人に対して24万人。2012年のロンドン大会(イギリス)では7万人に対して24万人が応募しました。また、冬季大会では、2018年の平昌大会(韓国)でも2万2,400人の募集に対して約9万2千人が応募するなど、大会ボランティアの人気具合が伺える結果が出ています。
東京2020オリンピック・パラリンピックの応募は、個人単位で受け付けを実施。満18歳以上で、日本国籍又は日本に滞在する資格を持つ方が条件となっていました。 活動期間は、大会期間中やその前後10日以上、休憩や待機時間を含む1日8時間程度の活動が見込まれ、応募先は大会の組織委員会でした。
都市ボランティアの募集人数と活動期間
一方、都市ボランティアの応募先は開催地の自治体です。東京都の都市ボランティアの募集人数は3万人でした。大会ボランティアとは異なり、グループでの申し込みが可能でした。活動日数も3~5日、一日当たり5時間程度としていた自治体が多かったです。
また、札幌市や福島県など、東京都以外に競技会場のあった自治体でも都市ボランティアを募集しました。千葉県の都市ボランティアは募集人数3千人に対し、約6,500人が応募しました。
パラリンピックボランティアに参加するメリット
東京2020大会ボランティア経験者アンケート
東京2020オリンピック・パラリンピック閉幕の1年後、日本財団ボランティアセンターがボランティアに関する調査を実施しました。ここでは、調査結果をもとに、ボランティアへの参加のきっかけや、ボランティアを経験することで得られるものについて解説します。
参加動機は?
参加者はどのような思いでオリンピック・パラリンピックのボランティア参加を決断したのでしょうか。「ボランティア」というと高い志や無償で貢献したいという強い奉仕精神が必要なのかと、ハードルを感じる方もいるかもしれません。ただ、結果は必ずしもそうではないようです。
大会ボランティア、都市ボランティアともに参加した動機として多かったのは、「東京2020大会に関わりたかったから」「東京2020大会の成功の一助になりたかったから」「人の役に立ったと感じたかったから」「自分の視野を広げたかったから」「自分の日常生活に変化をもたらしたかったから」「人と交流したかったから」「やりがいのあることをしたかったから」でした。
その他には、「一流の選手に会いたかった」や「キャリアにつながる経験をしたかった」という思いを持っている方もいました。
東京2020大会ボランティア経験の満足度
また、ボランティアとして活動したことへの満足度について、大会ボランティアと都市ボランティアを比較すると、大会ボランティアの方が都市ボランティアよりも高い傾向にありました。
都市ボランティアの満足度がやや低くなった背景としては、無観客開催となった影響で、空港などでの観光客への活動が制限されたことが影響していると考えられます。
価値観に変化も!?
大会後に自分自身の価値観に変化があったという方も多くいました。最も多かったのは「多様性について意識するようになった」で、約80%の人が自身の考え方や行動の変化があったと感じていました。特に10~20代では57.9%が「非常にあてはまる」と回答しています。
「パラスポーツを身近に感じるようになった」も70%以上の人が変化を感じていました。
▼アンケート調査結果はこちら
東京2020オリンピック・パラリンピック大会のボランティアレガシー ー大会1年後アンケート調査からー
東京2020大会参加者からのアドバイス
東京2020オリンピックの閉幕後、日本財団ボランティアサポートセンターが行ったアンケートには、様々なエピソードや今後参加するボランティアへのアドバイスが寄せられました。
競技会場関連でのアドバイスでは、距離が遠い場合があり、ゆとりを持って行動できるようにした方がいいというものや、案内を求められる場合があるので、周辺に何があるのかやトイレの場所など、活動場所の知識はしっかり持っておく方がいいといったものがありました。
また、ボランティアに臨む心構えの面では、テレビやSNSで自分たちは見られているので、組織委員会の方の注意事項はしっかり聞くようにと促すものや、ハプニングが起きたりする時でも前向きに捉え、仲間と一緒に乗り越えることを忘れないようにとのアドバイスが見られました。
パラリンピックに関連するものでは「色々な障害がある方、一見分からない方も多いと思うので、それぞれの方とコミュニケーションをとり、寄り添いながら、失敗をおそれずにいろいろと試してみましょう」といったものがありました。
その他パラスポーツのボランティア活動
ここまで東京2020オリンピック・パラリンピックについてご紹介してきましたが、ここからはパラスポーツに関わるボランティア活動を紹介していきたいと思います。
第24回ジャパンデフバレーボールカップ川崎大会
デフとは英語の「deaf」を意味し、聞こえない人を意味します。デフバレーボールカップは聴覚に障害のある選手が出場するバレーボールの全国大会です。2001年から年に1回開催されており、試合は聴覚障害のある選手のみで行われます。ルールは一般のバレーボールと変わりません。
2023年2月に開催された「第24回ジャパンデフバレーボールカップ川崎大会」では、ぼ活!ボランティアのべ58人が参加し、運営をサポートしました。
ボランティアの活動は、会場サポートと手話サポートに分かれ、会場サポートは設営、選手受付などを行い、通訳サポートは選手たちと審判やトレーナーの間に入り、手話によるコミュニケーションをサポートしました。
手話サポートとして活動した参加者からは、試合のハーフタイムで選手が応急措置を求めるケースなどがあり、様々な要望や感情を前に、手話通訳のスキルもかなり高いものが求められたと語っています。一方、会場サポートでは手話未経験者の方も活躍しました。
▼活動レポートはこちら
デフスポーツの裾野を広げ2025年デフリンピックへ 第24回デフバレーボールカップ川崎大会
i enjoy! パラスポーツパーク in 東京おもちゃショー2019
2019年6月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で行われた国内最大級となる玩具業界の見本市「東京おもちゃショー2019」には、日本財団パラリンピックサポートセンターがパラスポーツのPRブースを出展しました。障害の有無にかかわらず、ボランティア同士が協力して活動を楽しみました。
担当したのは展示ブースに設置されたクイズを来場者に解いてもらうコーナーで、受付や解答用紙の配布のほか、参加の呼び込みも担いました。ボランティア同士が必要に応じてサポートを行い、視覚に障害のある方は、最初は慣れない様子でしたが、次第に立ち位置や用紙の手渡し方などをボランティア同士で話しあい、模索しながら工夫を凝らしていました。
混雑した会場の中では、耳から入る情報のみを頼ると状況判断が難しかったようで、他のボランティアからの「今は空いている」という言葉だけでも安心感があったそうです。視覚に障害のあるボランティアからは「見える人と組めば、私にもできることがあると分かった」との感想が聞かれました。障害のある方も、一定のサポートがあればボランティアとして活躍できます。
▼活動レポートはこちら
「楽しく、自信になりました」視覚障害者と健常者が一緒になったボランティア活動~i enjoy! パラスポーツパーク in 東京おもちゃショー2019~
KOBE2024世界パラ陸上
世界約104ヵ国・地域から約1,073人ものパラアスリートが参加した「KOBE2024世界パラ陸上」が2024年5月17~25日の9日間にわたって開催されました。その裏で、アスリート達の熱い戦いを1,567人のボランティアが支えました。
参加者の中には東京2020オリンピック・パラリンピックでボランティアを経験したことで楽しさを知り、今大会にボランティアとして関わった方も多かったといいます。
活動内容は、観客の誘導や案内、選手と関わるものなど多岐にわたっていました。大会のプロモーションとして、開催に先立って東京・国立競技場から全国15都市を回った「スマレゾキャンペーン」でもボランティアがラッピングカーの運転を担いました。
▼活動レポートはこちら
約1,500人のボランティアがサポート。多くの観客を迎え、世界トップパラアスリートに笑顔を届ける。【KOBE 2024 世界パラ陸上競技選手権大会】
日本中の笑顔と共鳴を神戸へ!ボランティアも活躍!KOBE2024世界パラ陸上 全国キャラバン「スマレゾキャンペーン」出発式
パラスポーツのボランティア・セミナーを探す
それでは、実際にスポーツボランティアに参加してみたい!という方に向けて、パラスポーツのボランティアの探し方や募集についてご紹介します。
日本財団ボランティアセンターでは、スポーツボランティアの楽しみ方や、活動時に活かせるスキルを紹介する「スポーツボランティア研修」などスポーツボランティアに関するセミナーを開催しています。パラスポーツのボランティアに参加したい方は、まずはスポーツボランティアについて学んでみるのもおすすめです。
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まとめ
一口にパラリンピックのボランティアと言っても、関わり方や活動内容は多種多様です。自分の強みを活かした活動をするもよし、未経験ながらも飛び込んでみるもよしです。いずれの活動も大会の運営には欠かすことはできないものですし、多くの参加者が経験後に満足感を感じているようです。若年層を中心に「多様性を感じるようになった」という回答が多く寄せられていることからも、積極的なボランティアへの参加は価値観や視野を広げることにつながるかもしれません。
▼スポーツボランティア活動について詳しく知りたい方はこちら
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参考資料
・千葉県”都市ボランティア City Cast Chiba”
https://www.pref.chiba.lg.jp/kkbunka/volunteer2020/ (参照参照2024-07-10)
・東京ボランティアレガシーネットワーク. ”東京2020大会での活動記録” https://www.tokyo-vln.jp/learn/legacy2020/citycast/activity/report (参照参照2024-08-07)
・公益財団法人日本財団ボランティアセンター”ボランティア調査報告 東京2020オリンピック・パラリンピック大会のボランティアレガシー ー大会1年後アンケートからー”https://www.volacen.jp/project/research/olympic_and_paralympic/no_16/ (参照参照2024-07-10)
・公益財団法人日本財団ボランティアセンター ”レポート&コラム オリンピックボランティア活動時の素敵なエピソードをご紹介!~みなさまから心温まる話をたくさんいただきました~” https://vokatsu.jp/journal/1638947104617×100874288153231360/(参照参照2024–07-10)
・公益財団法人日本財団ボランティアセンター ”レポート&コラム デフスポーツの裾野を広げ2025年デフリンピックへ 第24回デフバレーボールカップ川崎大会”https://vokatsu.jp/journal/20230331/ (参照参照2024-07-10)
・公益財団法人日本財団ボランティアセンター ”レポート&コラム 「楽しく、自信になりました」視覚障害者と健常者が一緒になったボランティア活動~i enjoy! パラスポーツパーク in 東京おもちゃショー2019” https://vokatsu.jp/journal/20190723/ (参照参照2024-07-10)
・公益財団法人日本財団ボランティアセンター”レポート&コラム 約1,500人のボランティアがサポート。多くの観客を迎え、世界トップパラアスリートに笑顔を届ける。【KOBE 2024 世界パラ陸上競技選手権大会】”https://vokatsu.jp/journal/20240703/ (参照参照2024-07-10)
・公益財団法人日本財団ボランティアセンター”レポート&コラム 日本中の笑顔と共鳴を神戸へ!ボランティアも活躍!KOBE2024世界パラ陸上 全国キャラバン「スマレゾキャンペーン」出発式” https://vokatsu.jp/journal/20231207/ (参照参照2024-07-10)