オリンピックは誰でも知っています。
パラリンピックもずいぶん有名になりました。
では、デフリンピックはいかがでしょうか?
デフ(deaf)は英語で「聴覚障害がある、聞こえない」ことを意味する単語で、デフリンピックは聴覚障害のあるアスリートによる国際スポーツ大会です。
障害のある選手のスポーツ大会といえばパラリンピックが有名ですが、パラリンピックに出場できるのは肢体不自由者と脳性麻痺者だけで、聴覚障害のある選手は対象になっていません。
デフリンピックの歴史は長く、最初に開催されたのは1924年のパリで、来年で100周年を迎えます。夏季大会は4年に1度の開催ですが、戦争などでの延期もあり、第25回大会が2025年に開催されます。開催地はデフリンピック史上初の日本(東京)となりました。
その前哨戦となるデフ陸上競技の国際大会「2023 World Games of Deaf Athletics Teams」が2023年11月3~5日に東京で開催され、4、5日には「ぼ活!」から運営をサポートするスポーツボランティアがのべ80人参加しました。今回は5日の模様をお届けします。
デフ陸上の国際大会が東京で開催
デフスポーツのルールは普通のスポーツと同じ
デフスポーツは競技者が聴覚障害があること以外は、一般のスポーツと基本的なルールは変わりません。ただし選手に聴覚障害があるため、デフ陸上でいえばスタートの合図に音だけでなく光が使われるなど、視覚による支援があります。
今回の国際大会は、14ヵ国から選手が出場していたため 、会場には日本手話の通訳士と国際手話の通訳士が活動していました。
手話は各国で異なっており、日本には日本の手話、アメリカにはアメリカの手話があるため、海外選手と審判などのコミュニケーションには、国際手話を使える通訳士がサポートしていました。
手話の必要なボランティア活動も
デフスポーツの大会の運営ボランティアには、受付や用具運搬など手話が必要のない仕事と、ろう者の選手をスタート地点や表彰台まで誘導するなど手話の必要な活動の両方があります。
今大会では、関係者の受付、用具の運搬、選手の誘導や表彰式のサポートなど、様々な場所でボランティアが活動しましたが、ボランティアの方々の手話の習熟度は様々です。
手話を勉強して2年目になる川島留愛(るな)さんは「コロナ禍のとき、みんながマスクをつけるようになったので、ろう者の方が口の動きを読めなくて困っているというニュースを見て、手話を覚えようと思って始めました」と語り、2025年東京デフリンピックでのボランティア参加を希望しています。川島さんの他にも、2年後のデフリンピックでボランティア参加を希望する方がたくさん参加していました。
手話ができなくてもボランティアは歓迎です
一方、手話は初心者という方もボランティアに参加していました。横井真吾さんは、今大会でのボランティア参加が決定した後に、「ぼ活!」の手話セミナーに参加したという初心者です。年間に二桁以上のスポーツイベントでボランティアをし、熱が高じて陸上競技の審判員の資格まで取得している横井さんですが、デフスポーツにかかわるのは今回が初めてでした。
今回は、スタート前に預かった選手の荷物を、ゴール時点まで運ぶ担当をしました。
「日常生活では会えないような人と知り合えるのが、ボランティアの醍醐味です」と語る横井さんは「パラスポーツは、まだまだサポートが少ないので、パラスポーツのサポートを自分のライフワークにしたい」と考えています。
参加できなかったボランティアが、スタンドから熱く応援
応援交流会にはデフスポーツのアスリートたちが参加!
今大会のボランティア募集には、定員の80名を大幅に超える250名以上の応募がありました。そこで、ボランティア参加できない方にも、デフスポーツを一緒に応援してもらいたいという想いから、日本財団ボラセンでは、ボランティア同士が交流しながら大会を応援する応援・交流会を開催しました。
応援・交流会に参加してくれた約40人の皆さんは人、スタンドの一角に集まり、観戦しながら選手たちを応援します。
会には、国際大会や過去のデフリンピックでメダルを獲得したこともある、サッカー、バレーボール、競泳などのデフアスリートも参加し、「ぼ活!」の手話セミナーのメイン講師である橋本一郎さんらの手話通訳を交えながら、各競技の見どころやデフスポーツの魅力を教えてくれました。選手たちとの質疑応答や写真撮影などデフアスリートとの交流もおこなわれ、楽しいひとときとなりました。
今回かけつけてくれたアスリートの中には、今大会に出場した選手も。競技に出て疲れもある中、企画の趣旨に賛同してくれて駆けつけてくれました。棒高跳びに出場した北谷宏人選手は、2021年にブラジルで開かれたデフリンピックの金メダリスト。そして、佐藤湊さんは「ぼ活!」の手話セミナーの講師としてもおなじみです。2021年ブラジル大会での5位から、2025年の東京では飛躍を誓います。
ボランティアの抽選に外れたけど満足できた
応援・交流会に参加してくれた方にもお話を聞いてみました。堀内満江さんは、住んでいる自治体の手話通訳者養成講座で学び始めてから1年弱とのこと。2025年の東京デフリンピックにもボランティアとして参加したいそうです。
応援・交流会では、同じように手話を学ぶ仲間たちと楽しく語り合うことができ、またアスリートたちの口から直接デフスポーツについて聞くことができて満足したそうです。「デフスポーツが通常のスポーツとルールなどが同じであることを初めて知って、勉強になりました」と語ってくれました。
現地で見て、そして手話でデフアスリートを応援!
今回の応援・交流会で観戦した競技の中でも、ひときわ大きな盛り上がりとなったのが「ぼ活!」手話セミナーで講師を務める山田真樹さんの登場です。2017年のトルコ・デフリンピックで男子200m走金メダリストとなった山田さんは、前日の男子400m走に続きこの日も200m走で優勝して大会2冠を飾りました。
セミナーの受講生も多く観戦する前で、見事優勝した山田さんはレース後「スタンドでボランティアの方々が拍手をしてくれているのを見て、がんばってよかったと感じました。2025年の東京デフリンピックもみなさんと一緒に盛り上げていきたいです」と力強く語りました。
山田真樹さんの言葉にもあるように、聴覚に難があるデフアスリートは、拍手を「聞く」のではなく、目で「見る」形になります。手話の拍手は、顔の横で両手を開いてひらひらさせます。競技の最中にスタンドを見る余裕があるのかなと考える人もいますが、顔を上げたときに拍手が見えると力が湧くのだそうです。デフスポーツを観戦する方は、選手が見えるような拍手をお願いします。そして、そうした体験から、耳の聞こえない方、ろう者の方への理解が広まっていくことでしょうか。
2024年2月16日(金)~18日(日)の3日間、とどろきアリーナ(神奈川県川崎市)では、デフバレーボールの全国大会「第25回ジャパンデフバレーボールカップ川崎大会」が開催されます。入場は無料です。ぜひ、会場でデフスポーツや、デフバレーボールカップの魅力を体感してください。
大会の情報は、日本デフバレーボール協会のWEBサイトをご確認ください。
https://www.main.jdva.org/deaf_cup/2tirasi/