「マラソン大会のボランティア活動をしてみたい」「マラソンボランティアに興味はあるが参加を迷っている」という人たちの“知りたい”に、経験豊富なベテランボランティアが答えるオンラインの交流イベント「ベテランさんに聞いてみよう!はじめてのマラソンボランティア」を2021年12月23日(木)に開催し、122人が参加しました。
前半はマラソンボランティアを何度も経験している日本財団ボランティアサポートセンター(以下、ボラサポ)のスタッフが語り、後半は少人数のグループに分かれて経験者と初心者が交流しました。大いに盛り上がった当日の様子をレポートします。
マラソンを走って感じたボランティアの力
前半は、ボラサポスタッフの多胡早織が講師を務めました。東京や大阪の大きなマラソン大会から地方の小さなマラソン大会まで、これまでに約10回のボランティア経験がありますが、どんなきっかけでマラソンボランティアを始めたのでしょうか。
「かねてから一生に一度はフルマラソンを走ってみたいと思っていたところ、2012年に運よく当選して走ることができました。そのとき、ボランティアの方たちの応援が本当に力になって。次に申し込んだマラソン大会は落選してしまいましたが、何かのかたちで大会に関わりたいと考えました。それでボランティアをやろうと思い、2015年から活動を始めました」
彼女のように、ランナーだった人がボランティアをするケースもありますし、ボランティアをしていて自分も走りたくなり、ランナーになる人も多いのだとか。
それでは、マラソンボランティアは大会でどんな活動をするのでしょうか。
スタート地点――ランナーにゼッケンを渡す、荷物を預かる
観客の誘導――観客を案内する、立ち入り禁止場所に入らないように注意する
給水――ランナーがとる水を用意する、給水ポイントの案内をする
フィニッシュ(ゴール)地点――ランナーにタオルをかける、メダルをかける
「私は、特に給水を多く担当してきました。活動時の工夫としては、ランナーが勢いよく水を取ったときに、ほかのコップを倒してしまわないよう、コップを置く間隔を広めにとったり、注ぐ水の量をコップの半分以下にしたりしています」と多胡さん。ほかにもランナーの多い時間帯と少ない時間帯で出すコップの数を調整するなど、状況に応じて考えながら活動していることが分かりました。
最近は新型コロナウイルスの影響で、給水がコップに注いだ水からペットボトルにかわるなど、これまでとは異なる対応もあるようです。
教えて! 多胡さん 一問一答
参加者から寄せられた質問にも回答していきました。
Q 会場への交通費は?
A 主催団体にもよりますが、自費のパターンが多いです。。だから観光も兼ねて楽しんでいます。
Q もうベテランなので緊張することはない?
A 毎回すごく緊張します。でも必ず経験者がいて、フォローしてくれるので安心して活動することができます。
Q ほかのボランティアの方とのコミュニケーションで心がけていることは?
A 自分から話しかけること。私は人と話すことで緊張がほぐれます。
Q マラソンボランティアの必須アイテムは?
A 冬の大会なら、私は暖かい素材の肌着を2枚着ます。カイロは背中に2、3枚貼り、それとは別に貼らないカイロも2枚用意しています。
Q 荷物は少なめにしたほうがいいですか?
A はい。荷物置き場がないことも多いので、なるべく少ない荷物で行くようにしています。
Q どのようにマラソンイベントを探していますか?
A 有名な大会はインターネットで検索するとホームページがあります。地方の大会の情報はボランティア活動で知り合った方から聞いたりしています。
最後に「これから春にかけていろいろなマラソン大会のボランティア募集がありますので、ぜひ探して参加してください!」と呼びかけました。
後半は参加者同士が交流しながらマラソンボランティアを知る
ここからは、17人のマラソンボランティア経験者がリーダーとなり、少人数のグループにわかれて交流します。まずは15分間で「自己紹介と前半のパートで印象に残ったこと」を話し合いました。
マラソンボランティア経験者のまっさぴょーんさんのグループを訪問したところ、東京マラソンのボランティアに申し込んで、結果待ちというKorinさんが自己紹介をしているところでした。マラソンボランティアは未経験というKorinさんは「もし東京マラソンのボランティアに決まったら、リーダーの方の指示のもと、がんばれたらいいなと思います」と緊張気味にコメントしました。まっさぴょーんさんは「リーダー以外にも、いろんな人が助けてくれますから、大丈夫ですよ」と励ましました。
ダウン症の息子さんとともに東京2020パラリンピック競技大会のセレモニーキャストをしたという石井佳子さんは、障害のある人がもっとボランティアに参加できたらと考えていました。まっさぴょーんさんは「人数は多くないけれど、マラソンボランティアのリーダーの中には足の不自由な方もいますよ。石井さん親子が積極的にボランティアに参加するのはいいことだと思います」と話しました。
続いての20分間は、マラソンボランティアについての具体的な質問が飛び交いました。
mitsuharu watanabeさんのグループは、靴の話題です。雨天時の足元について、「足が冷えると活動の負担になる」と指摘し、「僕は長ぐつでの移動は足が疲れるので、防水効果の高いシューズを履いています」と話しました。また、コースに立ってランナーの通過を見守るような移動の少ない活動内容の場合には、「シャワーキャップを靴にかぶせる」という裏技も披露。「靴が濡れにくいですし、シャワーキャップは小さく丸めることができ、荷物の軽減にもなります」と聞いた参加者は「なるほど」とうなずきました。
キトウアキコさんのグループでは、キトウさんが「小さくたためるダウンベスト」や「日焼け止め」など、実際にご自身がマラソンボランティアのときに使ったグッズを示しながら詳しく解説していました。
休憩のことが気になるというマサカズさんのコメントを受けて「休憩時間は必ずありますのでご安心ください。休憩時間外でもトイレは声をかけて行くことができますので、我慢しないで行ってください」とキトウさんがアドバイス。
また、HY@tokyoさんが「スタートの担当になると活動時間が短いんですよね」と話すと、キトウさんは「スタート担当は朝の集合時間が早いですが、ランナーがスタートしたら活動終了なので、4時間くらいかな。フィニッシュ担当は朝から晩まで楽しめますので、活動を満喫したいならぜひフィニッシュへ!」とおすすめしていました。
手話通訳を交えてのトークが展開されていた、かおりんさんのグループでは、DAIさんが「一人で参加した場合、すでに友だち同士のグループができていて、入りづらいのではないか」と心配していました。
かおりんさんは「少なくともリーダーは一人で来ていると思うので、リーダーと仲良くするとか、いかがでしょうか。集合時には顔見知りに会った人たちが“久しぶり!”などと盛り上がる場面もあるかもしれませんが、活動に入ってしまえば、そんなこと言っていられなくなるので、大丈夫です。ぜひ楽しみにしてください。そこで仲間を作りましょう」と力強く語りました。DAIさんも「そんなに心配しなくていいんですね。不安がちょっと解消できました」とほっとした様子。「この(グループのトークに参加している)5人も、活動で会ったら“あのときはどうもー”ってなります。楽しみですね」と、かおりんさん。
グループでの交流を終了し、ふたたび全員が集まると、数人にどんな話をしたか発表してもらいました。そのうちの一人、Kouichi tanakaさんは「キーワードになったのは“自分たちがどれだけ楽しめるか”。コロナ禍で選手に声かけできるか分からないですけど、ボランティアの応援に選手がこたえてくれると自分たちも元気が出るので、そんなこともできたらいいなと話しました」と報告してくれました。
参加者のみなさんはベテランさんたちの話を聞くことで、マラソンボランティアの楽しさを知り、活動を具体的にイメージすることができたのではないでしょうか。これをきっかけに、はじめてのマラソンボランティアに参加したり、今後のよりよい活動につなげていただけたらと願っています。もちろん、ボラサポでもそうした皆さんのチャレンジをサポートしていきます!